日本財団 図書館


1984年 第14回全米里親会大会
      第8回国際会議
  5月2日〜5日 コロラド州デンバー
 
 アメリカ中西部の心臓部“セントラルシティ”といわれる都市、ロッキー山脈の裾野に広がるデンバーでの大会であり、夜には満天の星がふりそそぐ風情があります。
 
1. 開会式 5月2日 午前12時〜午後1時
(1)司会 全米里親会会長 カール・ブラウン氏
(2)参加国の紹介:カナダ、日本、ニュージーランド、ベルギー(国際里親養育機構代表国)
(3)行政布告 コロラド州リチャード・ラム知事 (Govemer. Richerd. D. Lamm)
 「里親を認識する週間」として1984年5月2日〜5日を指定します。里親は、我々国民の最大の資源である児童を育み養うものであり、コロラド州民は、里親の貢献に対し常に敬意を表しているものであり、全米里親会、コロラド州里親会、郡里親会は、法律の適用、教育計画及び里親専門家の努力を通じて、里子養育条件の改善に貢献しているものであります。里親養育関係者及び児童擁護関係者が、1984年5月2日から5日までの全米里親会議に、コロラド州オーロラ市に参集し、この会議の目的が、里親養育の質を向上し、児童が責任ある市民となることを保証する手助けをするものであるので、ここに、私リチャード・ラムはコロラド州知事として、5月2日から5日までを「里親を認識する週間」と宣言し布告する
(4)特別講演:アメリカ合衆国政府保健社会福祉局補佐官、ドーカス・ハーディ氏 (Mr. Dorcus. R. Hardy)
ア.アメリカの家庭生活の意味が変化してきています、つまりアメリカの家族は離別し母親の労力は増加し、そのため“Me first, Kid last”という状況が現出し児童は省みられなくなっています
イ.家庭から放り出された児童に対する養育の必要は益々増加しており里親制度の重要性は益々増加しています。従来は里親の機能は短期であったが、長期化する傾向が現れてきました
ウ.これに対応して養子縁組にも変化が生じ長期化した里子を養子とする現象が現れてきています。とくに心身に障害をもつ児童に対する養子縁組制度を制度的に考える必要があります
エ.1982年合衆国政府は、里親対策に重点を置く行政上の対策を打出し次の点に重点をおくこととしました。
i.里子の家庭復帰を促進するよう里親機能を強化する。現在での成果として里親養育後の児童中46%が実親家庭に復帰してきました。
ii.専門里親(Professional fosterparent)の教育訓練を強化する
 非行、情緒不安定、窃盗、肢体不自由、知的障害被虐待等の問題のある里子が増加するとともに長期養育が必要となってきました。政府はそのための訓練計画を各州で策定し実施するよう要請しました
iii.脱施設化が終了した現状において里親の開拓こそが基本的な問題である。合衆国政府と州政府が、それぞれのレベルで、里親会に大きな支援を行うこととする
 
2. 第8回国際会議―国際分科会― 5月3日 午前10時〜12時
日本里親会理事長が司会し、次の点について討論した。
(1)里親をめぐる諸情勢について
 里親里子の増加が継続するアメリカの今後の課題は、里親養育期間を短期化し家庭復帰を促進するとともに里親の開拓、特に知的障害里子を養育する里親の開拓を促進する必要である。
 施設廃止と里親委託の促進に関連して、グループホームの活用が実際上の問題として登場し、様々な問題点をもつものとして議論されるようになってきました。
(2)脱施設化の問題について
ア.1960年代までは施設と里親との比率や考え方は、カナダでもアメリカでも日本と特に異ってはいなかったがその後急速に脱施設化が進行した。
イ.その理由の第一は、財政問題であります。アメリカでは合衆国政府、州政府、郡政府、カナダにおいては県政府が従来のような財政負担を続行することを取り止めることとしたほか、民間の資金も低迷してきた。
ウ.養護施設とくに大規模施設での児童養育が効果をあげることは困難であることが指摘されてきました。
エ.児童に対する個別指導が必要となってきている現在、施設では対応不可能であり、里親家庭によるそれぞれの児童に対する指導に頼るほかない。
(3)心身障害児里子問題について
 日本を除く各国では、このような児童は里親養育の対象であることに既に問題はなく、その養育論について議論されています。
ア.知的障害児施設の閉鎖に伴い、これらの児童の養育が里親に転換されています。そのための里親の開拓が早急かつ重要な問題となっています。新聞、テレビを通じてのPR。教会や地域においてのPRを実施しています。
イ.知的障害児里子に対する養育費の増額 その額もカナダでは月額基本額を含み990ドルまで増額され、アメリカペンシルバニア州では日額25ドルを加算支出することとなり、積極的な取組みの姿勢が現われています。
 
3. グループ・ホーム分科会 5月5日 午前8時30分〜11時
(1)グループ・ホームの意義
 アメリカ、カナダ、欧州において、最近児童養育の形態として、グループ・ホームが登場してきました。
 それは施設の縮小廃止、里親への委託促進、委託児童数の増加、里親の開拓が時間的に間に合わないこと等最近における新らしい理由によるものであります。
(2)グループ・ホームの種類
 その成立の由来から次のような種類に分けられる。
ア.当初からグループ・ホームとして運営されているもの
 この中には、グループ・ホームが本来児童の養育形態として適切であると経営されているものも含まれます
イ.児童収容施設の定員が削減され、とくに乳幼児期の児童の施設不収容の方針で小施設から更にグループ・ホームヘと変化したもの
ウ.施設が廃止され、かつ里親の開拓が進まないため、施設関係者の一部がグループ・ホームを開設して様子を見ているいわば一時的、経過的なもの
エ.里子を養育中の里親が里子数の増加に対応してグループ・ホームの施設長となったもの等であるが次第に児童養護施設形態の一つのカテゴリとなってきました
(3)グループ・ホームの運営
 合衆国政府や州は、行政財政上の措置を講じようとしています。その際、グループ・ホームの概念規定は次のようにされています。
ア.グループ・ホームの長
 里親であっても里親でなくても良い。ただし、専門家として認められている者でなければならない
イ.グループ・ホームの規模
 州によって異るが、児童数は概ね5〜6人で18人程度のものまでも認められる。10人以上のものを大グループ・ホーム(large group home)と呼んでいる
ウ.グループ・ホームに対する財政措置
 州によって異る。これは州政府のグループ・ホームに対する指導姿勢に左右されています
 例えばコロラド州のように設置推進をしている州では次のようであります
i.施設長(Directer)は里親か、専門家であること
ii.児童に対しての生活費日額234ドルを、通常の心身の状況にある児童に対して支給する
iii.Directerは、一般の里親と異なりケースワーカーの指示を受けるものでなく独立の意思で経営できる
(4)グループ・ホーム制度の将来
 州でも国でも統一的基準が設定されてはいないが、継続的な存在となってくると考えられ、正式の態度を決定する段階となっています
 財政的にも州によって措置を講じているが、同時にグループ・ホームのDirecterに対する教育、研修、養成が民間団体において開始されています
(5)我が国における対応
 脱施設化が浸透しない我が国においてもその必要性と課題について検討する余地があります。
 なお、会議終了後この会を司会したレニ・タグリアテラ女史(Ms. Renie Tagliatela)を始め、参会者から日本に対する資料提供の要望がありました
z0110_01.jpg
5月2日 第14回全米里親会大会開会式場
コロラド・オーロラ・ラマダルネッサンスホテルにて
z0111_01.jpg
5月2日 第14回全米里親会大会会場前にて
日本里親会理事長








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION