日本財団 図書館


1983年 第13回全米里親会大会
      第7回国際会議
  5月4日〜7日 バージニア州ノーフォーク
 
 現在のノーフォークは、米海軍の最大の基地で、国防の拠点であります。かつては北の地に隣接したウィリアムズバーグやジェイムズタウンは、アメリカへの植民の中心地であり、アメリカ独立運動の思想的訓練場でありました。
 
1. 開会式 5月4日(水) 午後1時〜2時
司会
 ヴァージニア州里親会長 ヤコブ スプラウス氏 (Mr. Jacob R.Sprouse Jr.)
レーガン大統領メッセージ(電文)発表
 「子供は、家族・家庭中心によって生育するもので、里親家庭の重要性がそこにある。また子供も自分の里親を尊敬して已まないであろう。
 子供は金にはかえられないものであり合衆国もできるだけのことをする用意がある。里親諸氏の努力を期待する」
参加国代表の紹介
 カナダ、日本、ベルギー(欧州諸国の代表として)
祝辞
 ノーフォーク市長、マゴー トーマス氏 (Mr. Magor Thomas)
ヴァージニア州知事確認書発表
 1983年5月を「里親養育強化月間」と宣言し、この月において、全ての州民に対し、里親養育の重要性について認識を集中するものとする
挨拶
 全米里親会会長 カール・ブラウン氏 (Mr. Carl Brown)
(1)私の9ヶ年の里親生活に鎚み、自らの行って来たことを知り、これを活用して行きたい。
(2)里親相互の情報を交換し充実して行きたい。また里親自身もより問題点を解明して行うべきであります。
(3)政府、州の予算、経費の削減に対し、対応すべき点について。
 ケース・ワーカーの減員に対しては、自分達の能力を発展・充実すべきであり、より良い訓練により、ケース・ワーカーに頼ることのないようにすべきである。特に情緒不安定児等問題児の増加に対処しなければならない。
(4)法律や規則の制定、実施についての里親の役割を果すべきであります。
 下院を始め議会、委員会に対しても、必要に応じ委員会の委員・顧問となって、立案企画に参画すべきであり、政府の方針策定について参加することが必要であります。
(5)法廷においても、その証人となって参画する必要があります。
(6)社会一般に対しても、社会が行う可能性を探り、社会からの経済的援助を引き出すようにする必要があります。
(7)地域の里親会は相互に協力し合い、政府、地方公共団体や連邦政府とも協力して活動することが必要であります。
(8)「子供達は待ってくれない」、里親である私達の出方に期待しています。
 
2. 第7回国際会議―国際分科会― 5月5日午後2時〜5時
(1)日本の里親制度について
 (座長)日本全国里親理事長 渥美節夫
 (討議)
ア.知的障害、肢体不自由の状態にある里子の養育。
 日本以外ではそのような児童を里子として養育するのは常識であり、それはこれらの児童の処遇として最高なものとして考えられる。
 従って里親は十分な研修をうけて養育に当っている。
イ.里親と実親との関係
 アメリカにおいて実親の親権は法的には強く、法廷開廷前においては実親の親権の行使に里親側は苦杯を喫する場合があるが、一方法廷に持ち込まれる場合においては実親が敗れる場合が多い。
 両国の対比を比較検討し里子の福祉のための親権制度を国際的にも見直す必要があろう。
ウ.施設と里親制度の関係
 米国、カナダ、欧州諸国においては、殆ど脱施設化は完成し既に議論の対象となっていない
エ.非行児の養育
 アメリカにおける児童非行問題は、その社会経済環境、人種問題から、その数や質において他国と比して高い率を示している。従って非行児を里子として養育する里親も相当部分あることとなります。アメリカ里親会は常に非行児里子の養育技術について討論しており養育技術を学習する機会を多く持っている。脱施設化に対応する場合には、研修は特に必要であります。
オ.里子の養育期間
 数年前に比して里子養育期間に相当の変化が現れてきています。
 それまでは里子の養育期間は通例2年未満でありましたが、心身障害児、非行児を養育することとなって、その養育期間が長期化の様相が現出してきました。また当該里子を養子として縁組することも増えてきました。
 脱施設化の一現象として捉えることができます。
エ.里子の権利
 本来アメリカにおいては里子の権利を尊重する議論が多い。
 最近における現象と一つとして児童とくに被虐待児、放任児について、里子が自分から進んで里親家庭を求める傾向があるとの意見がでてきています。
(2)カナダの里親制度に対して
 座長、カナダ、トロント里親会長、ロン・クライン氏 (Mr. Ron Klein.)
 カナダの最近の里親事業は社会福祉関係予算の大幅の削減によって、急激な変更が加えられるようになりました。
 特に知的障害児里親制度の拡大がそれであります。
ア.施設の削減
 養護施設の定員縮小、削減さらに閉鎖のほか、最近では知的障害施設の縮小削減も実施されることとなりました。
 その理由は政府関係予算の削減であり財政的事情によります。
イ.里親研修、里親養育期間等について
 対象の変化に対応して研修の強化、養育期間の長期化が現出してきています。
 またアメリカと同様特に虐待をうけている児童について自ら里子を希望するものが出現しています。
ウ.グループホームの位置付け
 アメリカ、欧州においては、グループホームは、施設から里親への移行のための中間的施設として位置づけている国が多い、カナダにおいては必ずしもそうでなく、それ自体の存在を認めています。
(3)知的障害児の里子養育問題
 5月6日 午前9時〜12時及び午後2時30分〜5時
 座長、ヴァージニア特殊教育長、ツロトニック女史 (Ms. Doanhewy Zlotonik)
ア.カナダ、アメリカの場合
 いづれもその予算額は健常な里子に対して、知的障害児加算または重度知的障害加算が実施され、その額又は率は、一般基準額の50%以上になっています。
 特にカナダにおける知的障害児加算額が断然多い。これはカナダにおける知的障害児施設の削減、廃止に対処したものであります。
イ.知的障害児養育についての里親の確保と研修
 重要な課題として取り組まれ、知的障害児里子の里親となるための注意事項が、教育プログラムに詳細規定されている州があります。
ウ.専門里親の確保とそのための教育
 心身障害児、情緒障害児、問題行動児の養育のため、各国において多数の専門里親の確保と教育の必要性が生じて来ています。これに対応して委託機関において、密接な協力関係を維持するため、専門里親からの要望や問題点の提起を受入れるよう積極的に対処しております。
z0101_01.jpg
5月4日 第13回全米里親会大会 開会式
バージニア・ノーホーク・オムニ国際ホテル
z0101_02.jpg
5月5日 同上国際会議、渥美座長の司会








日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION