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1982年 第12回全米里親会大会
      第6回国際会議
  5月5日〜5月8日 ノースダコタ州ビスマルク
 
 アメリカ中北部カナダと国境を接するノースダコタ州は、インディアンの有名な部族が幾多住居していたことやバッファローの集団生息地として、緑豊かな州であります。
 最近では、この州には、長距離ミサイルが多数配備されていると言われ、静かな山野に何となく世界の緊張を感じさせるものがありました。
 今回は、1981年オランダで開かれた第2回国際里親養育機構(International Foster Care Organization)の総会の翌年ということもあり、この機構に参加する欧州諸国里親会の代表者が数多く参加していたことが特徴的でありました。そして、1983年にベルギーで開催される第3回I.F.C.O.大会へのアメリカからの参加を強く希望しておりました。
 
1. 開会式 5月5日 午前9時〜10時
挨拶
 ノースダコタ州里親会 会長 アニタ ウイルヘルミ (Mr. Anita Wilhelmi)
祝辞 歓迎の辞
 州知事夫人 バーバラ オルソン女史 (Mrs. Barbara Olson)
基調講演
 ノースダコタ州政府里親指導部長 ドン シュミット
 (Don Schmid)
要点
1 里親養育のための研修、特に心身障害児に対する里親のための特別研修
2 ケースワーカーの確保と研修
3 里親里子賠償保険の拡充
 海外からの参加国代表者の紹介、代表者の挨拶
参加者 日本、英国、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、オランダ、カナダ
日本渥美代表より「会議の成果を国内制度に反映してます」
英国及びオランダの代表者は、「欧州圏を中心として里親養育のための国際会議が発足しています。先進国のアメリカ里親会の参加を強く希望します」と述べた。日本からは渥美理事長のほか里親代表として北海道 高橋一郎氏、香川 兵藤あや子さん、茨城 塩田茂子さんが参加しました。
 
2. ノースダコタ州宣言(ノースダコタ州知事提案)
 「ノースダコタ州知事であるアレン.I.オルソンは、1982年5月2日〜8日までの一週間を“ノースダコタ州里親感謝週間”と宣言する。ノースダコタ州の全州民は、里子が円満な責任感を持ち建設的な大人に成長させるよう努力している里親の脈々とした役割に対し、里親への尊厳と感謝をささげるよう呼びかけます」
 
3. 第7回国際会議―国際分科会―
(1)参加国
アメリカ、日本、英国、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデン、オランダ、カナダ
 1979年ヨーロッパを中心として国際里親養育機構(I.F.C. O.)が発足し、同機構と米国里親会との提携が望まれるので、同機構の主要メンバーが、この会議に参加したのであります。
(2)日程 5月5日〜7日
(3)議題
 各国から提案された問題は次のようであります。
ア、脱施設化
 各国とも施設中心の対策から里親対策へと重点が移ってきました。
 この原因の一つとして国や地方行政機関の財政上の問題があります。
イ、ケースワーカー
 ケースワーカーの強化は里親制度向上のためには絶対に必要であり各国ともその数を確保するとともに訓練に力を尽しています。
ウ、心身障害、問題行動、情緒障害のある里子について
 これらの児童は、ノーマリゼイションの見地からも脱施設化の立場からも里親委託に移すべきであります。この方策は今ヨーロッパでも意識的なこととなっており、現実に里親の多くはこれら障害児を養育しています。
 これにはそのための研修は当然必須のことであり、またそのための養育費の増額が行われています。
 日本のこの点についての現状は例外的なことであります。
(4)国際協力の必要性
 脱施設化や障害児里子委託の問題は、国や地方公共団体の姿勢が重要な役割を果しています。
 このことは一国だけで可能なことではなく、各国の相互協力、情報交換が必要であります。
 欧州各国の呼びかけで、米国を中心とする国際会議と欧州中心の国際会議が、さらに協力して世界の里親制度の向上に寄与すべきであるとのムードが高まってきました。
 英国、オランダ及びスウェーデンの強い要請に対して米国里親会もこれに対応する意向を示し、日本、豪州、ニュージーランド、カナダも賛意を表し将来世界の里親対策は世界一丸となった新らしい方向に向う気運になってきました。
(5)コロラド州、ミズーリ州児童福祉教育センターからの公開状の披露
 コロラド州、アイオア州、北ダコタ州、南ダコタ州、テキサス州、ヴァージニア州、ウィスコンシン州の里親に対しての感謝の意を込めた次のような公開状が提出されましたが、その中で特に1980年代は「専門里親」としての里親が必要なことであり、障害児、被虐待児里親等の特別な里親の必要性などを強調要請いたしておりました。
 「里親に対する公開状」
 本大会に御参集の里親家庭に対し、それが行っている極めて特別な役割に、心からの感謝を捧げます。
 1980年代は「専門里親」時代であります。その意味は、里子措置の過程において与えられた役割を果す際の専門的、かつ熟練した対応が必要であるということなのです。里親家庭とは、その尊敬すべきかつ困難な役割を果たしながら、措置中の児童に対し不変の養育を行うために最も適切な判断をする専門的な人達のなかで、さらに価値ある人達なのであります。
 最近、家庭に恵まれない児童に対しての養育の内容が、益々特殊なものになってきている関係で、これらの児童の特別な要請に対応しての里親の役割の変化に、不断の援助、協力が与えられなければなりません。
 今日の里親家庭は、ソーシャルワーカーや地域の社会資源と協調しながら、精力的に従事しなければなりません。そして、里子に対してその実の家庭が何より大切なゴールとなるよう帰郷させるよう努力しなければなりません。
 今日の里親家庭は、児童の実親への結びつきを理解しなければなりませんし、児童がその個性と彼の生育歴の重要さを尊重するように助長することが必要です。今日の里親家庭は、他の里親家庭の開拓、教育、選択や向上に努めなければなりません。また児童の援護者としての複雑な役割を通じて、里親家庭の養育に関して、一般の人々の関心を絶えず引きつけるよう考えなければなりません。
 里親家庭が実際にどうやっているかが、里親の開拓や、里親家庭の向上や、児童や自分の家庭へのサービスを明示することになります。
 「専門里親」は、里親家庭養育の変化してきた役割を、学術的にまた実践的に遂行する証明としてのプログラムを、大学並みまたは専門家並みに充実する義務があります。
 私達社会福祉関係者は、里親家庭に対して持つ評価、関心と尊敬を表明しながら、多くの里親家庭が本日の会合に出席されたことと、今回の会合に引き続く今後の会議に先鞭をつけることに大きな喜びを感じています。
 コロラド州、アイオア州、北ダコタ州、南ダコタ州、テキサス州、ヴァージニア州及びウィスコンシン州の里親に感謝を込めて。
  養子及び人的資源センター(コロラド州 デンバー)
  児童福祉教育センター(同上)
  児童福祉教育センター(ミズーリ州 セントルイス)
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5月5日 第12回全米里親会大会開会式にて挨拶する日本渥美理事長
ノースダコタ ビスマルク市民センターにて
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5月5日 大会開会式後
国際里親養育機構理事国の参加者とともに








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