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1980年 第10回全米里親会大会
      第4回国際会議
  4月30日〜5月3日 ミズーリ州カンザス
 
 ミズーリ州カンザスは、アメリカの真中にあり、「Heat of America」といわれています。と同時にこの土地の人の心も穏やかで、アメリカのHeartであり、大会の開催地にもふさわしい土地柄です。
1.開会式 4月30日 午前7時〜10時
  ラジソン・ミュールバッハホテル
 司会 全米里親会会長マリー・マッキイ氏(Mr. Harley F. Mackey)
 祝辞 カンザス市長バークレイ氏(Mayor Burkelay)
     ミズーリ州福祉局長フリーマン氏(Mr. Freeman)
 参加国 カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、サモア、日本
  日本からの参加者は、
   後藤 宗玄氏 大分県里親会長
   塩田 茂子氏 茨城県 里親
   兵頭 みや子氏 香川県 里親
  ほか8名でありました。
2.分科会 5月1日 午前9時〜11時
(1)特殊な児童 特別の課題を持った児童
(2)研修と開拓
(3)家庭単位としての里親家庭
(4)里親の主張
3.第4回国際会議―国際分科会―5月1日午後1時〜5時
 日本、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、サモア、米国の里親と関係者約50名
 日本代表渥美理事長が座長となって、「各国における里親養育」についての討論が行われたが、その中、参考として注意すべき点は次の通りであります。
 日本からの資料は、"Development of Foster Parent System of Japan"のパンフレットにより、日本の里親制度の歴史、現状、問題点について年代別データーを参考として提出されました。
(1)養育について
 里親としての成功率、日本の養育度は極めて好ましい、里親里子の解消率は3%といわれる。
 里子に対する躾けの程度、体罰は特に行われていなく尻たたき程度で、話合いが中心である。
 日本の里親の立場は尊敬されています。里子を家族のうちの一員として養育している。米国では州から一時預かっていて、その意味では責任が軽いわけであります。
 この養育方針も、充分参考にする必要があります。
(2)里子のリハビリテイションについて
 日本では18歳を過ぎて独立できない場合は、実親が面倒を見ることになります。独立しても、里親は里子を実親に帰したくないのが一般的であります。男子の場合には就職するまで、女子の里子の場合には結婚するまで面倒を見る傾向があり、この意味で結局はリハビリテイションは里親がするようになる。
 このことは、米国が民間エイジェントによるケアが行われるのと異なり、ソシアルワーカーの努力が足りないことにも一因があります。
(3)里親の新課題
 アメリカ及びその他の諸国の様子を見ても、日本の新らしい児童を廻る環境の要請を考えても、1ケ月及び1年間の短期里親制度を強化する必要があると考えられます。
 障害児のための里親を開拓するなど、また専門里親制度を創設することが必要であります。
 緊急に里親養育が必要となった場合に電話だけでも里子を受付けることがありますかの質問に対して、日本ではケースワー力が調査してからの委託が必要であり、電話だけの受付けは行われていない現状にあります。
(4)里親の研修について
 里親を専門化するための研修体制はどうしても必要があります。
(5)虐待をうけている児童について
 日本の場合、一般的にこれらの児童を里親に委託されていません。里子の状況の改善が期待できないからであります。
 虐待をうけている児童には知的障害児等の場合もあり、一般の里親が養育するのには困難な状況であります。
(6)犯罪少年の委託について
 日本においては、正常な児童として養育されています。明白な非行児は教護施設における教育が行われています。
(7)障害児養育に対する費用の支払いについて
 アメリカの場合には、州によって額は異なりますが正常児の養育の養育費に加えて相当額の加算があります。
 例えばニューヨーク州では正常の里子一人について、年齢平均月262ドルですが、知的障害児の場合には35ドル加算、さらに重度の場合には500ドル加算場合もあります。この里親は専門里親です。
 オレゴン州では年齢に応じて1人1月150ドル〜224ドルとなっていますが、障害児には加算額が350ドルであります。
 州によってまだ異なっていますので合衆国によって統一する必要がありますが、その場合の障害児加算として一般給付のほかプラス50%以上が必要とされます。アメリカでも障害児里親の確保は国際的視野で行われることが必要です。
 障害児里親の研修が必要でありカンザス市においても急いでおります。
 里親の収入に応じて委託費に差を設けるという方向はありませんが、里子の年令に応じて差をつけることはあります。
 以上問題点を質疑応答の形で記載しましたが、我が国の里親制度の上で大きな示唆がありました。
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4月30日 第10回全米里親会大会開会式場にて
カンザス・ラジソン・ミュールバッハホテルにて
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5月1日 国際会議、会場にて








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