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1979年 第9回全米里親会大会
      第3回国際会議
  4月4日〜7日 マサチューセッツ州ボストン
 
 この年は、アメリカにおけるこの2つの会議のほか、英国で、第一回国際里親養育機構(International Foster Care Organization)の会議が秋にもたれることとなっています。
 また、この年は国連提唱の国際児童年(International Year of the Child)であり、日本ではこれを記念して児童に関する各種の催しが持たれることとなっています。とくに国際児童年記念の我が国の第25回全国里親大会が沖縄県那覇市で開催されます。そしてこの大会には交友を深くしております全米里親会デイヴッド・エヴァンス会長の特別講演が予定されています。
 なお、この第9回全米里親会大会に参加する一行は、大西洋を越えてロンドンに向い英国里親会本部を訪問し、交遊をあたためることとしています。
 
1. この大会には、アメリカ各州の里親、ケースワーカー及び政府等関係者約2000名のほか、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本の里親と関係者が参加しました。参加者のリストは次のとおりです。
    笹村 貞雄 北海道 里親
    高橋  清 北海道 里親
    鈴木 一郎 宮城県 里親
    石森 正衛 北海道 里親
    都丸登喜代 群馬県 里親
    塩田 茂子 茨城県 里親
    渥美 澄子 東京都 里親
    榎本 明信 神奈川県 里親
    宮下 米子 岡山県 里親
    藤本 浄源 山口県 里親
    塚本 朝子 大分県 里親
    小川 寿江 福岡県 里親
    島袋 昭夫 沖縄県 里親
    坪倉 房子 沖縄県 里親
    中村 信壱 沖縄県 里親
    中村 秀子 沖縄県 里親
    玉城  清 東京都 里親
    佐野 昌昭 厚生省児童家庭局
    飯山十三良 全国里親会
 
2. 開会式 4月5日、午前9時〜10時 パークホテル会議室
 司会は全米里親会会長ハリード・マッキー氏が当り、海外参加者の紹介のあと、特に日本代表に対して大会参加スピーチの要請があり、指名をうけた渥美理事長は次の通りのあいさつを行った。
 「日本の全国里親会は、昭和29年以来里親制度の普及、里親の開拓、里親の研修など努力してきました。
 また、年一回全国里親大会を開催し、本年で第25回を教えます。
 日本の里親会は、今回を含め既に全米里親会大会に5回、国際会議に3回参加しています。
 この参加の成果としては、日本において、短期里親制度の発足や里親賠償責任保険制度の実現などが挙げられます。
 今年は国際児童年である機会に、各国里親会が相互に協力し相互に情報を交換するなど国際的協調は、世界の里子児童のために極めて有意義なものと考えます。
 その意味でも、今回の大会が実り多いものであることを期待します」
 
3. 会場の一部に設置された展示場には、日本里親会も特別に参加し、パンフレット、「日本の里親制度」(英文)、里親バッジを陳列しましたが、30分足らずで、陳列品が皆無となりました。
 
4. 第3回国際会議―国際分科会
 4月6日 午後3時〜5時
参加国は、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、日本の5ヶ国里親関係者約60名で行われました。会議は前全米里親会長デイヴィッド・エヴァンス氏の司会により進められましたが、主な応答は次のとおりでした。
(1)里親制度一般
(問)日本では里親にどのような財政援助をしているか(カナダ)
(答)生活費、教育費、医療費など里子の養育に必要な費用を国が80%、県が20%の割合で負担している。
(問)日本ではデーターによると、里子の約60%には片親がいるのにどうして実親が育てないのか(カナダ)
(答)経済的理由による場合が多い
(2)里子に対する体罰について
(問)一般的に里子に対する里親の虐待が増えているといわれているが各国の実情はどうか(カナダ)
(答)虐待で事件となったケースはない。「愛のムチ」というとおり愛情による体罰はあり得ることであるが、要は体罰の程度問題であろう(日本)
(答)規則では体罰は禁じられているが、おそらく里親の90%は体罰は行っていると思う(アメリカ)
(答)里親に対して、体罰をしないような教育が必要と思う(ニュージーランド)
(答)4、5歳位でいうことをきかない場合は手のひらで傷をつけない程度にたたく(アメリカ、ネブラスカ州)
(答)体罰が必要と思うときは、地区のケースワーカーに立会って貰う(同、テキサス)
(答)16年間里親をしているが、里子も自分の子と思うとつい手が出てしまう(同、ミズーリ)
(3)心身障害児里親について
(問)日本の場合は施設に収容することとなっているが(日本)
(答)里子の35%が身体障害か知的障害の子どもである(カナダ)
(問)障害児を育てる場合にどのような問題があるのか、また養育費はどの程度かかるものか(日本)
(答)具体的なケースを紹介する。叔母に虐待されたため言葉を失ったという12歳の女の子を預った。そのうちその子が興奮すると言葉が出ることが判ったので、意図的に興奮させながら言葉を云わせる訓練を繰返し正常な言葉を発するようになった。
 また4歳の蒙古症の子を預かり教育に当った。結局12歳の現在でも読み書きはできないが、主婦として家庭内の仕事は全てできるまでにさせた。
 障害児の養育は、生涯の種類程度により差はあろうが、いづれにしても普通の子に比べて大きな負担となることは確かである。ニューヨーク州では障害児加算基準額が1日5ドルで障害の程度に応じ増減される(米国)
(答)カナダでは、虐待児、身障児、知的障害児、糖尿病の子というように障害別問題別の子を専門に預る里親がいる。勿論普通の里子の場合より多い養育費をうけている(カナダ)
(4)国際児童年に際して里親養育についての特別企画は
(答)各国が別々に計画しているようであるが折角国連が音頭をとっているのに国際的に手をつなげるような計画がないのが残念である。これは国際的な里親制度がないためだと思う(アメリカ)
(答)里親制度のない国もあるので早く国際的里親協力体制が確立され普及させることが必要である(カナダ)
 
 以上を含め我が国の里親制度の充実改善に寄与する意見や将来の構想についての参考となる意見がありました。
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4月5日 第9回全米里親会大会開会式における
日本代表団 ボストン・パークホテル
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開会式、日本里親会渥美理事長挨拶
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4月6日 国際分科会―国際会議








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