1. 1976年(昭和51年)第6回全米里親会大会は、ハワイ州ホノルル、プリンセスカイウラニ・ホテルで開催されました。
この大会には、日本から里親95名という代表団が参加しました。全米里親会会員も、特に地元のハワイ州里親会の会員は驚嘆をもって大歓迎をして下さり、特に日本語による独立の分科会を特設して、討論、意見交換の機会を設けて下さることになりました。
私が、第5回全米里親会大会に参加しその模様を、日本の第21回全国里親大会が前橋市で開催された折に報告し、日本の里親のアメリカ大会への参加を呼びかけたことが、そのきっかけとなったものと考えられますし、また、我が国で短期里親制度が発足し、アメリカでは多くの州の制度で里親養育の期間が概ね短期間となっているので、この制度についての勉強をして見たいとの願望があったからとも言えましょう。
2. 1976年全米里親会大会の開会式は、5月19日午後2時開かれました。100名近くの日本からの参加が、ハワイ州知事アリヨシ氏から披露されますと、満場大歓迎の拍手が起こりました。参加者は、次の方々でした。
笹村 貞雄 |
北海道 |
里親 |
笹村キミ子 |
北海道 |
里親 |
望月 恒雄 |
北海道 |
里親 |
望月 キヨ |
北海道 |
里親 |
早川永一郎 |
北海道 |
里親 |
星 春夫 |
北海道 |
里親 |
星田ヨシノ |
北海道 |
里親 |
谷地 耐子 |
北海道 |
里親 |
中村 トキ |
北海道 |
里親 |
今川 セツ |
北海道 |
里親 |
近藤ナツエ |
北海道 |
里親 |
東 優紀子 |
北海道 |
里親 |
秋田 法隆 |
秋田県 |
里親 |
秋田 チヤ |
秋田県 |
里親 |
成川 尊則 |
秋川県 |
里親 |
成川アサヨ |
秋田県 |
里親 |
宮原 忠美 |
秋田県 |
里親 |
宮原 フミ |
秋田県 |
里親 |
小野寺悦男 |
宮城県 |
里親 |
渡辺 智水 |
新潟県 |
里親 |
廣川 徹夫 |
新潟県 |
里親 |
小此木貞作 |
新潟県 |
里親 |
穂刈 久作 |
新潟県 |
里親 |
新井 庄平 |
埼玉県 |
里親 |
新井 志ん |
埼玉県 |
里親 |
三崎トヨコ |
埼玉県 |
里親 |
石黒 淳英 |
埼玉県 |
里親 |
野村 進 |
埼玉県 |
里親 |
小川 潤平 |
埼玉県 |
里親 |
石井ツルエ |
埼玉県 |
里親 |
手塚 玉江 |
埼玉県 |
里親 |
石川キヨ子 |
埼玉県 |
里親 |
榎本 清蔵 |
埼玉県 |
里親 |
清水 寛 |
埼玉県 |
里親 |
岡田 芳江 |
埼玉県 |
里親 |
中村 信雄 |
埼玉県 |
里親 |
中村 とく |
埼玉県 |
里親 |
小野 重雄 |
東京都 |
里親 |
後藤 綾子 |
東京都 |
里親 |
伊藤 博 |
神奈川県 |
里親 |
松本 九一 |
神奈川県 |
里親 |
松本 愛子 |
神奈川県 |
里親 |
鍵和田日出代 |
神奈川県 |
里親 |
原 政次郎 |
千葉県 |
里親 |
三橋 一郎 |
千葉県 |
里親 |
小島 三郎 |
千葉県 |
里親 |
内藤 強 |
千葉県 |
里親 |
西沢 蔵人 |
千葉県 |
里親 |
木田 栄二 |
千葉県 |
里親 |
佐久間義徳 |
千葉県 |
里親 |
佐久間美智代 |
千葉県 |
里親 |
佐久間 豪 |
千葉県 |
里親 |
濱田幸一郎 |
大阪府 |
里親 |
高尾マツエ |
大阪府 |
里親 |
阪口奈良太 |
兵庫県 |
里親 |
阪口 サエ |
兵庫県 |
里親 |
田中 巌 |
兵庫県 |
里親 |
河崎 一 |
岡山県 |
里親 |
河崎 可祝 |
岡山県 |
里親 |
宮下 米子 |
岡山県 |
里親 |
太田 勉 |
岡山県 |
里親 |
平松 元雄 |
岡山県 |
里親 |
永宗 幸哉 |
岡山県 |
里親 |
小倉寿恵治 |
岡山県 |
里親 |
草加 義郎 |
岡山県 |
里親 |
松田 龍山 |
島根県 |
里親 |
明石 直 |
鳥取県 |
里親 |
四井正太郎 |
鳥取県 |
里親 |
端詰 進 |
鳥取県 |
里親 |
端詰美都枝 |
鳥取県 |
里親 |
後藤 宗玄 |
大分県 |
里親 |
宮本 栄治 |
大分県 |
里親 |
石井 重利 |
大分県 |
里親 |
塚本 朝子 |
大分県 |
里親 |
小川 又雄 |
熊本県 |
里親 |
平沢 東海 |
宮崎県 |
里親 |
平沢スヱ子 |
宮崎県 |
里親 |
工藤 富弘 |
宮崎県 |
里親 |
甲斐 清人 |
宮崎県 |
里親 |
高田橋エツ |
宮崎県 |
里親 |
金子 トシ |
宮崎県 |
里親 |
内田志津子 |
宮崎県 |
里親 |
井上 一市 |
鹿児島県 |
里親 |
井上 静江 |
鹿児島県 |
里親 |
島袋 昭夫 |
沖縄県 |
里親 |
渡真利源吉 |
沖縄県 |
里親 |
坪倉 房子 |
沖縄県 |
里親 |
比嘉 栄一 |
沖縄県 |
里親 |
蒲地 清弘 |
厚生省 |
|
飯山十三良 |
全国里親会事務局 |
杉山 美子 |
全国里親会事務局 |
松本 佑子 |
全国里親会事務局 |
羽物 正次 |
全国里親会事務局 |
羽物 せい |
全国里親会事務局 |
黒木 睦彦 |
全国里親会医師 |
黒木すなほ |
全国里親会 |
司会 |
ハワイ州里親会会長、ベネディクト グー
(Benedict Goo) |
会長挨拶 |
全米里親会会長、ディヴィド・エヴァンス
(David T. Evans) |
祈祷 |
アブラハム・アカカ牧師
(Abraham Akaka, Pastor) |
知事歓迎の辞 |
ジョージ.M.アリヨシ.ハワイ州知事
(George M. Ariyoshi, Governor of State of Hawaii) |
基調演説 |
アン・スコート女史(前里親)
(Mrs. Ann Scott) |
3. 分科会「日本の里親会について」
この標題によるWORKSHOPは、5月20日(木)午後1時30〜4時。「里親養育について勉強のために日本から来られた里親のために特に設けられました。そしてこの分科会は日本語によって行われます。海外の志を同じくする友人とともに、里親養育プログラムを勉強するために試みたのです」
私たちは、その意味で全米里親会とハワイ州里親会の心温まる好意に大いに感謝した次第でした。
司会は、ハワイ州ホノルルの朝比奈さん(女性)により始められました。朝比奈さんは日系三世でハワイ州生まれ、かつて州政府里親担当官、ケースワーカーを勤められた。我が国からの95名の里親の外、日本語を理解することの出来る米国人合わせて100人ほどの参加者がありました。
(1)合衆国ハワイ州における里親制度について
朝比奈女史の講義は次のようでした。
ア.里親の種類
i.緊急の里親(1ヶ月程度)
ii.一定期間(長期間でない2年程度)の里親
iii.養子先が決まるまでの里親
iv.社会人になるまでの長期間の里親
v.精神・身体に障害をもつ子供のための里親
イ.里親の役割
ウ.里親の養育料
i.食糧費、衣料費、家具費、日用品費、教育費、レベビーシッター料等。
ii.乳児〜5歳 100ドル
6歳〜12歳 121ドル
13歳〜18歳 146ドル
iii.緊急里親については、委託、未委託の関係なく月額100ドル、委託の場合、日額4.75加算。
エ.里親に対する教育
里親に対する大学の特別講座(2年課程)があります。ハワイ州社会福祉局によるミーティングと専門家による教育。
オ.里親と施設との関係
過去30年間で施設7ヶ所は1ヶ所に減少し、その収容人員も10人で、施設収容児は激減。
カ.里親と養子縁組について
里親と養子縁組を明確に分離していたが最近では希望者には里親養育中でも養子縁組を認めます。
心身に障害を持つ里子と養子縁組をすることを奨励し、その養親に対し州から補助金を支給する制度を実施しており、その数は年々増加し現在では300組に達してきました。
キ.里子及び里子にする損害賠償保険
全員加入しています。
保険料は、全米里親会によるグループ保険契約でありますので、割安であります。
ク.実親の権利
里親と実親のトラブルについては裁判所による判断によりますが、実親の一方的な主張は制限されています。
(2)分科会「里親と脱施設化 (Foster parents and Deinstitutionalization)」
5月21日、午後1時30〜4時、及び5月22日午前9時〜11時の2日間。
合衆国政府、児童局マーティンギラ専門官の座長の下で行われ里親養育に関する重要ですが私達には耳馴れない問題であり、深い感銘が与えられました。
ア.1960年代から1970年代のはじめにかけて、幾つかの州では、州立の知的障害児施設、教護院、情緒障害児施設の児童を減らしたり、施設を閉鎖したりする積極的なキャンペインを始めました。
この運動は「脱施設化(Deinstitutionalization)」と呼ばれ、児童を単に監護施設から移すという意味で使われるばかりでなく、さらに児童が地域社会で生活できるようなサービスの方法を開発して、施設収容児童を減らすということをも意味するものであります。
1930年には、施設収容児童の14万に対して里親委託児童はその1/2に当る7万人でありましたが、今日(1970年)では30万人以上の児童が里親家庭で養育され、逆に施設保護はその1/4以下の7万人にすぎない状況に転換しています。
イ.グループホーム
脱施設の分野で当初予測されなかったことの一つに、地域社会で小グループ(6人〜12人)の児童の養育に当るグループホームの着実な発展があります。グループホームは脱施設化の一方式として、主に10歳以下の要養育児童、教護児童、心身障害児、被虐待児童のために効果的に活用されています。ただしこの運営については、よい職員を確保し十分に構想されたものでなければ、また従来の施設に逆もどりしてしまう危険があります。
ウ.連邦政府児童局は、各州が脱施設の方策を確定するよう勧告し、その脱施設の効果測定方法の開発を希望しています。
4. 1976年第6回全米里親会大会の総括
我が国里親会が、各地区の代表者に指導されて、約100名という会員が大挙しての参加は、会としても各会員としても始めての国際会議の討論研修であり、これを通じて、大きな成果を挙げました。
特に分科会においての研修は里親先進国の米国里親制度の理解の下に、十分な成果を挙げたといえます。勿論分科会だけの席上のみでなく、会後のパーティ、その他個人的な接触を通じての理解のひろがりもありました。
特記すべき重要な点は次のようであります。
(1)米国(ハワイ州)の里親制度
ア.里親の種別
イ.里親の資格の取得とそのための研修
ウ.里親、里子の保険
エ.里子委託と養子縁組
などが挙げられると思います。日本における里親制度の充実に大きな示唆がありました。
(2)脱施設化
1976年時点においては、我が国ではこのような構想は殆どなかったので、参会者には初めての事態として、圧倒的な感銘をうけたことと考えられます。しかも米国では1970年代で脱施設化の進展度は80パーセントに達していたので、大きなインパクトが与えられました
(3)以上(1)、(2)を通じて、ハワイ州の制度の我国の制度への精神的な影響はあったとしても、その実現は現在(2001年)殆んどの項目で挙げられていません。とくに脱施設化は、その後欧州諸国においても着々と進展し完全実現の域に達しております。
脱施設化は、里親養育の進展と不可分の課題にありますが、世界の里親養育実態の中で、我が国のみが20年以上も取り残されており、児童養育上の重要な課題であります。里親側においても、行政の側においても早急に検討することが必要なのであります。
5. 日本里親会からの全米里親大会への参加についてのハワイタイムス(The Hawaii Times)の掲載記事がありました。