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1975年 第5回全米里親会大会
  4月29日〜5月1日 ジョージア州アトランタ
 
 私が全米里親会(NATIONAL FOSTER PARENT ASSOCIATION)主催の第5回大会(NATIONAL NFPA CONFERENCE)に出席のため、ジョージア州アトランタ空港に着いたのは、1975年4月29日午後7時30分でした。サンフランシスコ発12時15分でしたので時差3時間を計算して、飛行時間は正味4時間でした。サンフランシスコから言えばジョージア州は、深南(Deep south)と言われる遥かな遠い土地で、仲々訪れられない所で、飛行機を共にしたカルフォルニア州オークランドの里親達はめずらしさと未知への期待とで胸をはずましていました。
 翌30日、大会会場であるシェラトン ビルティモアホテル(Sheraton-Biltimore Hotel)で、全米里親会会長、ディヴィッド・エヴァンス(David Evance)氏と会い、開催中の同会理事会に出席し簡単な挨拶をし、終って各理事と意見を交しました。
 
1. 開会式 (OPENING SESSION)
  4月30日(水) 午後2時30分〜4時
司会
 大会議長・ジョージア州里親会会長
 ジーン・ハウスマン氏(Jean Housman)
祈祷
 マーチン・ルッター・キング博士
 (Dr. Martin Luther King, Sr.)
 バスチスト教会 ジョージア アトランタ
 (Pastor Ebenezer Baptist Church Atlanta, Geogia)
歓迎の言葉
 アメリカ里親会会長 ディヴィッド・エヴアンス
基調演説
 ポール・アンダーソン (Paul Anderson)
 青少年の家代表(Youth Homes of Georgia and Texas)
 この開会式で、日本の里親会の代表として、私がスピーチを行いましたが、その日本文は次の通りであります。なお、祈祷は暗殺されたアーサー、キッド牧師の父親でありました。
 「私は日本国里親会理事長渥美節夫でございます。
 本日全米里親会大会が開催されるに際し関係者各位の御理解と御協力を得て、日本国里親会を代表し本大会に出席でき所感をのべることができましたことを心からうれしく思っております。
 日本における里親制度は、1948年に制定された児童福祉法によって制度化されましたが、全国里親会は本制度の一層の普及振興を図ることを目的として1954年設立された全国団体で56の各都道府県指定都市の地域里親会で組織されている連合組織であります。
 この会は児童福祉法の精神にのっとり里親制度の普及啓蒙、里親の開拓、里親制度に関する調査研究、里親・里子の相談指導などの事業を行っております。例えば、里親制度が施行された1948年の10月4日を記念し「里親デー」とし、更にこの10月を「里親月間」として里親制度が一般に周知理解されるよう全国にポスターやパンフレットを配布し広報活動を展開しております。またこの月間には全国里親大会が開催されるほか各地で里親・里子を励ますためのいろいろな行事が催されます。ことに全国里親大会は過去20回にわたり毎年開催されておりますが、この大会には以前から特に里親制度に熱意を理解を示されているわが国の皇族であられる高松宮妃殿下が欠かさず御臨席下され、里親・里子を激励していただいております。その他の事業としては、里親の資質向上を図るための指導書の発行や研修会を開催しているほか、里親の相互のための機関誌を発行しております。更に1973年には国庫補助による里親促進事業を国から委託され実施しております。
 現在、この会の構成員は約1万3千人でありますが、わが国の最近における一般社会の動きとして、人口の都市集中化、住宅事情の変化に伴う家族形態の変容などから里親の数は減少傾向にあります。また養護に欠ける児童の形態も多種多様に変化してきており、里親はこれらのニーズに応え得る高度の養育技術の専門性をも要求されている実情にあります。
 この時期にあたり、世界各国で最も里親制度が進んでいるといわれる米国の現状を調査研究し、また直接多くの里親関係者に接し御指導を得て、わが国における里親の問題点を究明して行くことができれば幸いと考えております。
 このような意味から、今後、日本と米国との里親関係者や団体の相互交流や資料交換などにより、わが国における里親制度の一層の発展が期し得るよう努力して参りたいと思います。
 今後における御協力を祈って止みません。

 このスピーチの全文を掲載いたしましたことで、今2つのことがお判りのことと思います。
 一つは、4半世紀以上を経、21世紀を迎えた現在我が国の里親の動静と問題点が全く変化せず進展もしていないということです。その意味で真に残念なことなのです。
 そして二つには、里親の数が概ね半減しているということで、我が国の里親の状態が衰退の道を辿っているといえましょう。
 
2. 分科会 (WORKSHOP, INSTITUTE)
 開会式の後2日間における分科会に参加し、またアメリカ各州の会長のほか、列席していたカナダ、オーストラリヤの代表者等と会談しました。
 この分科会や集談会の議題には、里親養育技術、里子の教育、性の問題、里親会組織の問題、里親損害賠償保険等、数十に及んでいますが、この大会においても心身障害児の養育、とくに重複障害児(Multi handicapped children)、精神遅退児(Mental retarded children)、行動障害児(Behavioral disorderd children)問題、脱施設化問題(Deinstitutionalization)等が重点になっておりました。
 また、次回の大会が、日本と近く、親近感が感じられるハワイ州で開催されることとなっていましたので、ハワイ州里親会長や幹部の方々と明年の会議の内容や進行などについて打合せを行いました。
 このように日米交流最初の出会いは、極めて温かく、またスムーズに運ばれ大きな成果を収め、今后の提携と協力に大変明るい見透しを得ることができました。
4月30日 第5回全米里親会大会開会式に於ける日本里親会理事長の挨拶
シェラトンビルティモアホテル会場にて
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同日、同会場における日米両国里親会代表
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