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■寺山: 続きまして札幌市里親会副会長の田中貞美さんに、お願いいたします。田中さんには、地元札幌市の里親会活動や里親の全道交流会などの取り組みについて、紹介していただき、今後里親会として取り組むべき問題などについてご提言いただきます。
■田中: 田中です。23年前の昭和53年9月4日、同じ場所で全国大会が開かれ、そのとき子ども3人委託しており、子育ての真っ最中でしたが、体験発表させていただきました。
 ここに書いたように、「おんぶにだっこからよちよち歩きへ」と「札幌市里親会の活動状況」、これは一つのこれからのあり方として、考えてくだされば幸いです。
 札幌市里親会の8月現在の状況はそこに書いてある数字の通りですが、札幌も平成12年には134組、80人の委託児童と、46%の委託率でした。なぜこう減るかというと、数年に一度里親の意思の確認、継続するかどうかがあると、そこのところで大きな変動があります。
 札幌市は昭和47年の政令指定都市以降、大きな変化があります。昭和47年から平成5年まで、札幌市児童相談所、それから平成5年に現在の札幌市児童福祉総合センターが開設されました。この児童福祉総合センターは子どものあらゆる問題の解決を図るため、児童相談所と発達医療センターおよび児童福祉施設を統合した施設として、約35億円で創られたものです。面談室が15あり、その一つが里親会に提供を受けたわけです。
 札幌市児童相談所時代は、児童相談所主導型。事務局が出来てからは、里親会自主型というふうにお受け止めいただきたいと思います。
 札幌市里親会の組織・運営は「おんぶにだっこ」の時代からありました。ただその時代は役員会がせいぜい年に3回でしたが、現在は理事会と称して毎月1回定例に行っています。この4部会の報告はあまり欠けることなく毎月実施されております。
 4部門ごとの会議は、随時テーマによってそれぞれの担当役員が行っています。特に事業・活動で、大きく変わったのは、会として児童相談所主導型から里親会自主型へということで、取り組みの幅が変わったということです。
 研修会、全体集会、特別集会といろいろありますが、ここで紹介しておきたいのは、グループ研修。例えば昨日全道大会でも報告がありましたが、おしゃべり会。これは初めて子どもを引き取った経験の浅い母親の集まりです。毎月1回開かれ、いろいろ子育ての問題について経験者あるいは専門家が入ってやる会です。それがさらに発展して、中高生の親の会がこの春から動きだしております。会報は「ポプラ」というのを年2回出し、賛助会員や寄付者に会の状況のPRとして配布しております。
 「事務局だより」は、月1回開くものですから、それの報告と予告ということで、毎月1回出しております。支援事業としては、私どもは奨学金を高校生に対して出している。就職・卒業の祝い金は、どこでもやっていると思います。
 6番目の里親促進事業。これは里親会と民生・児童委員との懇談会で、里親会の活動を理解していただくということで、必ずやっており、そのとき出席された民生・児童委員の方々が賛助会員になったり、寄付したりというのが実情です。あとはバサー。これは「里親が研修会のときに集まってお菓子を作ったりして人が集まるときに販売しており、テレホンカードもPRを兼ねて販売しております。
 その他として、乳児院訪問。未委託里親が年1度乳児院へ訪問して、そこで話し合いを持っています。特に5番目の、札幌市福祉総合センターの協力体制は、先ほど申しましたが、とにかく部屋を一室提供いただき暖房費も光熱費も負担してもらっています。
 連絡会議は年1、2回、児童相談所の所長さん以下、部長や担当の方等でやっております。問題としては、やはり財源確保ということで、会費、賛助会員費は個人:団体があり、それから補助金の助成は、札幌市はじめ各団体があります。
 今後の取り組むべき問題としては、よりきめ細かな活動のために、やはり財源確保が大きな課題です。例えば現在、専従的事務局員、アルバイトで週3日やっておりますが、もし出来れば5日制に。それから経験を持った里親が常駐する、いわゆるペイボランティア、そういうものが必要ではないかと考えております。それにより、さらに活動が拡大するのではないかと考えております。今後しっかりした歩みになるには、行政側の指導、支援とそれに対応できる私たち里親会の意識、それが今後の活性化に繋がる課題と受け止めております。
 これらの里親会ですが、2番目の「やあ!今年もお会いしましたね」、と書いてある交流会、懇親会誕生のいきさつは、私が当時の札幌の児童相談所の機関誌に「全道里親大会に出席して」という表題で提言しました。開会当日だけでは、各地区の活動状況が分からないし、また他地区の里親とも知り合うことがない。そこで大会前夜、大げさでなくてもよいから交流会を開催してみてはどうだろうか。ということを提言したわけです。
 これに対して、もちろん反論もありましたが、道里連の廣瀬会長、札幌市の馬場会長等のご支援で、とにかくやってみようということで、平成3年全道里親大会の函館市のときに第1回が開催され、昨年函館市で第10回目の交流会が盛大に開催されました。昨夜も沢山の来賓のもとに、約200人が出席して行われましたが、いわゆる家族単位の参加が8割から9割ということで、それぞれの地区がみんなで楽しめるように、ビンゴーゲーム、クイズ、演奏、地区対抗、地区代表によるカラオケ大会と、いろいろ趣向が組まれています。
 交流会の場で知り合うことは、里親同士の交流にも繋がることですし、里親活動の一助をなすものと考えております。
 提言としては、交流会の役割・成果を考えると、もちろん研修大会の内容もマンネリ化しない工夫が必要であるし、社会情勢に対応したテーマをいくつか決めて、テーマセッション、または分科会の導入も検討すべきと考えております。全国大会でもこういうことを出来るのではなかろうか。確かに規模は大きくなるが、やり方によっては可能ではないか。大会日程を1日ではなくて、2日間にわたって実施すれば、こういうテーマセッションも組めるし、分科会導入も可能になり、より幅広い実りある研修が可能になるのではないかと思います。
■寺山: 続きまして、北海道釧路児童相談所長、大場信一さんです。
 大場さんには、釧路児童相談所管内における里親委託児童の状況や里親活動、里親への取り組みなど、里親への支援等について提議していただきます。
■大場: 皆さんこんにちは。釧路児童相談所の大場と申します。
 私の方からは、釧路児童相談所管内の里親さんの状況ということを概略お話をさせていただき、こういうようなことをやっているというご紹介をしたいと思っています。
 私どもの児童相談所は、場所的なことを申し上げると、日本の一番東側、根室市を含めて釧路・根室管内、人口が約35万ぐらいのところを所管している児童相談所であります。釧路児童相談所管内には、児童福祉施設ということで入所型の施設が3つあります。児童養護施設が80名定員。それと知的障害児の施設、肢体不自由児の施設ということで、児童養護の施設は既に満杯の状態ということです。このことからいきますと、その受け皿としてどうしても私どもとしては、里親さんに頼らざるを得ないような現状があります。
 平成8年の委託率が50%ぐらいでしたが、現在は70%を超える時期もあります。平成8年から毎年5%ぐらいの増加ということできている状況です。
 登録里親さんが、全部で46名。委託児童数が47名で、一番多い方は1人の里親さんのお宅に5名の子どもさんが行っているということで、ほとんどの委託里親さんのところには複数の子どもさんが行っているという状況です。
 里親さんの種類では、養育里親さんと養縁里親さんがそれぞれ19名、短期の里親さんが8名、計46名ということになっています。
 里親さんの年齢は、20代の後半から70代の前半までの方です。実際に70代を超えている方もいます。20歳前半の方、70歳の方も現在委託ということで、実際に集まりがあったときに70歳の里親さんなんですが、小学校前半の子どもが行っているということで、この子が18になったとき私は90近くになる、どうなるんだろうかと半分冗談のような話も出てくるような状況であります。
 委託の状況で見ると、養育里親さん19名のうち、委託が12名です。短期里親さんが8名のうち、委託が7名ということになっています。これはあくまでも9月1日現在ということで、ほぼこういうような状況で推移をしております。
 いま委託ということで話をしましたが、現在里親さんが46名のうち委託歴、委託経験のある方ということで数字を挙げていきますと、養育里親さん19名のうち、未委託の方が2名です。この2名は、今養育里親さんの中で最近登録になったばかりで、委託になっていないということと、養子縁組里親さんで4名の方が未委託になっています。19名のうち4名ですが、この4名の方は養子縁組ということで、こういう子どもさんだけ受け入れたいという、希望の幅が狭く、なかなか子どもさんと合致するようなことがないということで、委託が進んでおりません。
 短期里親さんについては、現在も含めて全ての方が委託歴があるということで、全体でいくと委託歴がある方の割合が86.9%で、里親さんになっていただいた後、必ず希望が限定される場合は別ですが、それ以外についてはほとんど委託をお願いできる状況にあるということです。
 それから、委託児童の状況ですが、一番年齢の小さい子どもさんは、まだ生後1ヶ月になっていない子どもから、高校2年生ということで、かなり幅広い子どもたちをお願いをしております。
 実際に養縁ということで、私どもの管内の状況から養子縁組前提の里親さんではあったんですが、養育里親に近い形でお願いをしている方も沢山おられます。養縁里親さんということで申し込まれた方も、できれば1回“子育ての練習をしてみないかい”と、そんなことでお手伝いをいただいているような状況があります。
 委託児童の関係ですが、先ほど47名という話をしましたが、今回この発表にあたって、一人ひとりのケースを全部読んでまいりました。47名のうちに、読み取れないのもあるのですが、昨年の11月に児童虐待防止法ができて、その定義に合致するのではないかという子どもの数が、47名のうち41名です.もう少しその記録を読めば限りなく100%に近いのかも分かりません。
 そこで、私どもの状況から考えていくと、少子化ということで子どもの数は減っていくのでしょうけれども、支援をする子どもの数は決して減っていかないのかなと。そのときに私どもは里親さんにどう関わりをもってご協力をいただくのか。これは一緒に考えていかなければならない大きな課題ではないかと、認識をしております。
 委託里親・未委託里親訪問については1年間の年度計画を立てるときに、委託里親さん、あるいは未委託里親さんのところに、年1回は必ず訪問するような計画をするように話をしております。
 実際に私どもの地区担当の児童福祉司は3名しかいませんので、なかなか全部回りきれないということで、里親会担当の職員も含めて、未委託・委託に限らず訪問をしてもらうようにしておりまして、今年4月以降で46里親さんのうち26名に訪問という形で終わっています。あと半年で、残りの方についても原則として1回は行く。必要ある場合には複数行くということで対応をしていこうとしているところです。そして発達状況の心配な子どもについては、心理判定の担当の職員が同行します。
 次に研修の関係についてお話をしたいと思いますが、里親研修事業、里親激励のつどいというのが、地区里親会の主催で行われるわけですが、テーマや講師については、地区里親会の役員会の中で検討され相談所とタイアップをして進めているところです。今回は児童虐待をテーマにしたいという話があって、今月10月23日、北海道の虐待防止協会の運営委員をされている教育大の先生に来ていただき、お話をうかがう予定をしております。
 それから3番目に、「1日子ども相談所」が道の事業の中で行われて、所在地でない市町村に出向いて、相談活動と啓発活動をするということで、研修会あるいは報告会みたいなことを実施していますが、そのときに直接里親さんに関わるテーマのときには、地元の役場、市の方から里親さんにご案内をして欲しいという働きかけをお願いしております。
 今年度から始まった事業で、児童虐待防止セミナーというのを、これも管内4か所で行っています。これについても、市町村単位でやっているので、市町村の里親さんにご案内をしていただく形をとっております。また、全国大会・全道大会には積極的に参加をしていきましょうと、働きかけをしているところであります。
 4番目の里親制度の普及啓発についてですが、管内市町村の児童福祉主管会議をもっていまして、このときに里親という項目を一つ設けて、里親制度について説明をさせていただいています。項目を設けないとなかなか印象に残らないので、そのときに市町村広報紙に掲載していただくモデルの例を作って、それを一緒に配布しなから、説明をしているところです。
 市町村・社会福祉協議会広報誌への掲載依頼ということで、年に2回程児童福祉週間と里親月間にある程度焦点をあてながらお願いをしております。
 それから私ども釧路児童相談所の所管になっている釧根地区の里親会が来年度全道大会を開催することになっていますので、地元の会長と一緒に市町村の児童福祉主管課に行き、里親制度のことや来年の大会に向けてのお願いということで、いま半分ぐらい回ったところです。
 そのときに、市町村の広報誌に是非載せていただきたいという話をしたら、11月号に是非掲載させてもらいますと、確約をいただいていますので、文書だけではなく、そういう機会に直接お願いすると制度の普及啓発に繋がるのかなと考えております。
 民生委員協議会等の研修会において、里親ということをテーマにお話をさせていただくような働きかけもしていて、何度かお招きをいただきました。
 そのとき、ある町の民生委員協議会の民生委員さんが全て里親会の賛助会員になっていただきました。そういう意味では里親会制度や里親がどういうことをしているのかということをきちっとPRしていく必要があるのかなと思っております。
 ライオンズクラブやロータリークラブの方からもお話をして欲しいといわれたときに、私が制度の説明をし、私どもの会長が実際に養育の体験談を話し、2人で一本の里親制度について話をしたときに、自分たちは直接養育は出来ないけれども、賛助会であればご協力できるかも分からないと、そんなご協力も今すすんでいるところであります。
 それから、マスコミヘの情報提供及び取材協力ということでは、こちらのほうから積極的に資料を作り、これを記事にしてもらえないかというお話をさせていただいています。特に地元の新聞やFM局がすぐに対応して、取りあげていただいているという状況があります。
 最後に今後の課題についてですが、登録里親の増加というのは、一つには里親のいない市町村が、実は15市町村のうち4か所あります。里親さんのいない市町村を何とか減らしていこう、無くしていこうということを一つの目標にしてあなたの町の子どもは他の地区の里親さんに委託になっているんですよ、というお話をしながら、是非PRをすすめて欲しいとお願いをしています。
 それから里親への支援と研修強化という中身ですが、先ほども申し上げたとおり47名の委託児童のうち、41名が少なくとも虐待ということで考えられる子ども達ということになれば、私どもの方では、今までは虐待ということの発見に力を入れていた部分がどうしてもありましたが、里親さんということに焦点をあてて考えたときに、支援の中身をどういうふうにしていくのかということを考えていかないといけないと思っています。
 そういう中では実際に養育をされている里親さんの体験談やいろいろな課題、現状などをお聞きしながら、養育支援に対する一つのプログラム的なもののお話が出来ればいいのかなということで、そのへんも私どもの会長と相談をしながら、すすめていきたいと考えているところであります。








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