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〈シンポジウム〉
テーマ「里親は今何を為すべきか」
司会 寺山正吉氏
 (北海道里親会連合会副会長)
シンポジスト 関戸幸男氏
 (山梨県きずな会会長)
西川公明氏
 (川崎市あゆみの会会長)
  田中貞美氏
 (札幌市里親会副会会長)
大場信一氏
 (北海道釧路児童相談所長)
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(注:本稿は紙面の都合により若干の編集をさせていただいております。)
■寺山: それではシンポジウムを始めさせていただきます。
 ご紹介ありました寺山でございます。皆さま方のご協力をよろしくお願いいたします。
 本日のシンポジウムのテーマは、「里親は今何を為すべきか」です。これからの約2時間、4人のシンポジストの方々、さらにはシンポジストと会場の方々との意見交換を交えながら、今自分たち里親にとって何が必要なのか、また何が求められているのか、何が出来るかなど、今後の里親制度のあるべき方向性について議論をし、里親自身の認識を深め、制度の一層の発展を図っていきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日のシンポジウムの進め方ですが、シンポジウム資料によって進めて参ります。
 第一部として、はじめに4人のシンポジストの方々から一人15分程度のご提言をしていただきます。内容は資料にあるレジュメ等により提言をしていただきます。その後シンポジストの方々による、意見交換を14時40分ごろまで行います。
 次に第二部として、会場の皆さま方との意見交換を行い、シンポジウムの終了予定時刻を15時25分として進めて参ります。皆さまのご協力、よろしくお願いいたします。
 それでは始めます。山梨県きずな会会長の関戸幸男さん、お願いいたします。
 関戸さんには、全国里親会の活動状況や国の動向などから、里親の現状と課題について提議していただきます。
■関戸: 山梨県きずな会会長の関戸でございます。
 私は全国里親会の現状、活動の報告ということを先に申し上げながら、話を進めて参りたいと思います。
 まず、全国里親会の現況報告についてでありますが、今年の5月17日、厚生労働省に出向き、雇用均等・児童家庭局の前の萩原家庭福祉課長に対して、里子委託促進について申し入れを行いました。
 その中で、各自治体に対しては、委託事業の促進を図るよう指導していると、心強い発言がありましたが、里親はボランティアであり、施設の職員と比較すると専門性という点で少し不安が残ると言われました。
 児童養護施設等の施設は、ほぼ満杯の状態であるが、未委託の里親が多い、未委託の里親の中には特別養子縁組希望の者が多く、親側の都合で委託がされており、そのために委託が少ないのではないかと、現状を指摘され、委託がスムースに行われていないことに対しての苦言が聞かれました。
 要望事項になっている20歳までの委託の延長については、法的に難しいという感触を受け止めました。
 里親手当は13年度は、28,000円。14年度は29,000円が財政当局にいま要求されております。
 今里親手当が月に28,000円でありますが、養護施設30人収容定員の所で、児童1人当り月に16万円の事務費・人件費が一応配分されているということに対して、里親手当の28,000円は低いのではないか。これを上げて欲しいということを申し上げました。
 また、今年度の要望事項については、児童家庭局長の岩田様に要望をいたしましたし、衆参両議院の先生方にも、今要望をしているところでありまして、広く粘り強く、幅広いPRをする必要があるというところであります。
 先ほども言われましたが、平成12年度の3月現在では、里親登録数は7,446人、委託里親数は1,687人、委託児童数が2,122人となっております。
 次に全国里親会の事業についてですが、里親促進事業については、予算が2,297万円、子ども未来財団からの助成です。これは先ほども中村課長さんがおっしゃいましたように、各都道府県に活動費として流れており、また、8ブロックに対してふれあいキャンプなどにも配分をされております。
 里親制度普及振興事業については、予算が400万円、日本財団の助成金で一般会計からも繰入れをしていますが、これは里親読本が8,000部ほと作成されるほか、地方研修費として8ブロックにも多少配分をされております。
 全国青少年里子会創設支援事業の1,030万円あり、これは社会福祉、医療事業団の子育て支援基金からの助成金です。これは国際里親養育機構第12回国際青少年里子大会がオランダで行われ委託児童さん7名が行っております。また里子会活動費として使われることにもなっております。
 里親養育電話相談事業は、予算545万円で、社会福祉、医療事業団の助成金です。現在大阪と、東京は全国里親会の事務所において、行っております。
 5番目に、専門里親モデル研究事業は、予算が1,849万円で9月からスタートを始めたところでありまして、社会福祉、医療事業団からの助成です。
 一般会計は3,174万円で収入の内訳は全国の里親会から分担金として頂戴しているのが、1,140万円。日本財団からの助成が600万円。基本財産取り崩し収入950万円で、あとはテレビ朝日福祉文化事業団、資生堂社会福祉事業団、日本社会福祉弘済会等からの寄付、それから基本財産の1億100万円に対する利子等です。
 支出は職員の給料とか需要費、この全国大会の開催費用、あるいは先程の基本財産を崩した950万。これは全国里親会で赤坂のホテルの一室を、事務室として借りていたものを購入したものです。
 従って一般会計、特別会計を合わせて、9,297万円という予算で運営をしているわけであります。
 次に今後の見通しと課題ということでありますが、私の地元の山梨県きずな会では、主に里親月間に、里親制度の普及を日的に、JR甲府駅等で啓発資料として里親制度の内容を謌った、会の名入れのティッシュ等を配布しております。
 各市町村の福祉課等の窓口に、啓発資料とか、名入れのティッシュとかをくまなく配布をしております。
 そうしたなかで、今年は特に横断幕をつくり、甲府の中央児童相談所と、都留の相談所と2か所に「すべての子どもに家庭の愛を」と、これに山梨県きずな会と書いた大きな横断幕を掲げてPRに努力をしているところであります。
 それから甲府駅の電光掲示板の大きいスクリーンにも、「すべての子どもに家庭の愛を」と、「里親を求める運動月間です、山梨県きずな会」ということで、大きく映して、里親を求める運動に努力をしているところであります。
 10月1日から赤い羽根共同募金が行われていますが、1日には山梨県きずな会のタスキをかけまして、大いにその運動に協力をいたしました。
 PRをする意味で、「会誌きずな」を発行し、行政機関、関係者、会員、賛助会員等に配布し、啓発・啓蒙に役立てているところであります。
 そして先ほどの街頭募金等の協力に対し、赤い羽根共同募金から30万円の助成もいただき毎年ふれあいキャンプを行っております。
 新規里親、未委託里親、委託中の里親に対する研修については児童相談所、行政機関等の関係者に講演等を依頼し、また、里親としての実践発表を通じて、処遇・技術の向上に取り組んでいるところであります。
 専門性を重視した専門里親については、より専門的な研究が望まれているところであります。
 里親専門の指導者の養成でありますが、養子縁組等の家庭支援、委託中の家庭に対する支援等、特に思春期を迎えた子どもたちへの対応は複雑なものがあり、専門的な立場から総合的なアドバイスが必要ですので、里親経験者からのプロパーとしての養成が必要であると思います。
 里親専門の児童福祉司の配置について、里親申請、登録、委託後の家庭の支援、養子縁組への取り組み等、的確な処遇を行う上での専門性が必要だということを強調しております。
 現在専門里親についての調査、研究やモデル事業を進めております。今年度は研究事業の中で、養育マニュアルを作成し、来年度より国のほうで予算を組み、全国的に実施していくということになると思います。
 そこで、そうした虐待児の養育等についての手当等も高いものが要求されるだろう。あるいは外国の例や、いろいろな資料に基づいて日本の風土に適したようなものを作っていきたい。そういうことで、11月2日、3日、4日と、東京で近県の里親18組、福祉の仕事に携わっていた人たちを2組、計20組をモデルとして研修会を行う予定としております。
 委託を促進するためには、一般住民へのPR、関係機関との連携が大切であり、一時的には受け止められる土壌をきちんと整備するとともに、研修等を積むことにより資質の向上を図り、複雑な生育歴の中で育ってきた多様な行動様式を持つ子どもたちを、引き受けられる里母、里父としての力をつけることが求められております。
 全国の里親委託児童数が2,122人に減少しているところですが、委託対象となる要保護児童は、被虐待児を含め増加傾向にあり、今後も続くと思われます。里親か児童養護施設かの問いかけには、家庭的な雰囲気の中で愛情を持って、個別に濃密な交わりが持てることが可能であり、財政的には安い費用で済むということで、里親に軍配が上がるだろうと思っていますが、施設の中には非常に理解を示しているところもあり施設も重要であります。
 それぞれの里親会でさまざまな取り組みが行われ、成果をあげておりますが、日々の活動を通して、地道に改革に取り組むことが必要であります。一番大切なことは、子どもたちの最善の利益を考え、みんなで手を携え、力を合わせて児童の養育にあたるとともに、目的達成に向けて一丸となる活動をすることだと思います。
■寺山: 続きまして、川崎市あゆみの会会長の西川公明さんにお願いいたします。
 西川さんには、里親登録数の推移、データなどから里親の現状と課題、里親会の活動について提起していただきます。
■西川: 紹介のありました、川崎市あゆみの会の西川でございます。
 只今、関戸さんから、全国里親会の事業および、重点的な課題等についてお話がございました。私も同感いたすところであります。
 さらに、今お話のあったように、これらについて数字的な裏付け、データをもってお話をさせていただきます。
 








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