(5)輸送機関のエネルギー消費効率化向上の推進
国民生活や経済活動に悪影響を及ぼすことなく二酸化炭素排出量の削減を図るためには、新たな技術開発の推進が重要な課題です。具体的には、前途の低公害車やスーパーエコシップのほか自動車エンジンの開発、自動車の停車中にエンジンを自動的に停止し、二酸化炭素排出量の削減につながるアイドリングストップ装置等の開発・普及があります。
■二酸化炭素排出削減につながる技術
・ガソリンリーンバーンエンジン
「リーンバーン」とは希薄燃焼のことで通常の空気と燃焼の混合割合より空気を多くすることによって、ガソリン消費を節約するエンジンです。燃料と空気の理論混合比(供給した燃料を完全燃焼させるために、理論上必要な最小空気量と燃料量との重量比)は、空気とガソリンの重量比14.5〜14.8:1程度ですが、これより薄い状態(混合比22〜25:1)が希薄領域(リーンバーン)となります。
・ガソリン直噴エンジン
シリンダー(筒内)に直接燃料を噴射させる機構のエンジンです。燃費性能を良くするために混合気を成層化して燃焼させることにより、希薄燃焼方式エンジンより更に薄い混合比40〜50: 1程度までの超希薄領域で燃焼するエンジンです。
●筒内直噴射方式構造図
・可変バルブタイミング
吸気バルブと排気バルブの開閉時期とそれらのリフト量を可変にすることによって、異なった運転条件における性能のトレードオフを小さくすることを目的に開発されたシステムです。通常のガソリンエンジンでは、バルブの開閉タイミングを低速度でのトルクを出すようなセッティングにすると、高速域の性能が犠牲になったり、アイドル性能を重視すると、中速域でのトルクが低下することから、いずれかの点で非効率となることが避けられません。可変バルブタイミングは、これらの相反する性能を両立させるために、吸気バルブと排気バルブの開閉時期とそれらのリフト量を最適化するシステムであり、これにより低速域・高速域いずれでも効率性を確保することがでぎます。
・アイドリングストップ装置
アイドリングストップ装置は、マニュアルトランスミッション車については、車両の停止中にシフトノブをニュートラルの位置にすることにより、エンジンを自動的に停止し、発進時にはクラッチペダルを踏むことにより、エンジンが自動的に再起動するもので、オートマチックトランスミッションのタクシー車両や2輪車についても同様の装置が搭載されはじめています。これにより、アイドリング時の燃料消費がカットされ、燃料消費率の向上が図られます。
・自動無段変速機(CVT)
ベルトやローラーにより駆動力を少ないロスで無段階に伝達し、エンジンの最良燃費領域を有効に利用することを可能にしたオートマチック変速機です。走行状態にあわせた最適な変速比が設定され、燃料消費率の向上が図られます。
●ディスクとパワーローラーを用いたトロイダル型CVTの例
(6)エコドライブの普及、公共交通機関利用に向けた国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の推進
地球温暖化の大きな要因の一つであり、またNOx、PM等大気汚染の原因物質を含む自動車からの排出ガスを削減するためには、環境に配慮した自動車運転の国民各層への普及とその徹底を図ることが大切です。そのためには、環境にやさしい運転(エコドライブ)の周知徹底や、環境負荷の小さい事業運営(グリーン経営)の推進が必要です。また、通勤や余暇における公共交通機関の利用についても、国民各自の自発的な行動を促すことで推進していくことが必要です。
このような国民各界各層による更なる地球温暖化防止活動を推進するための対策及びこれによる二酸化炭素排出削減目標値は、「地球温暖化対策推進大網」にも盛り込まれています。
●国民各界各層の更なる地球温暖化防止活動の推進
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