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(10)点検整備、環境物品等に関するヒアリング結果
1)自動車整備工場 A社
 点検・整備における法的制度との関連や効果的な整備箇所等について
【点検・整備における法的制度との関連について】
 ・新NOx法について
 ディーラーが詳細についてユーザーに説明できない状況がある。
 購入を検討している顧客に対して、あたかも国会に通ったかのような説明をする等の問題も起こっている。
 ・チェックリスト作成の方針について
 点検・整備のチェックリストを、ISOを意識したものとするなら、詳細な事項について整理していく必要があり、大変な作業となってしまう。
 ISOを意識しないなら、簡単なこと。法定点検にそって、どの程度まで取り組んでいるかを中心にまとめることが考えられる。
 ・定期点検について
 詳細な制度等については、必要に応じて「自動車整備関係法令と解説 平成13年度版」(日整連)をもとに整理すればよい。
 その時々の規制にあわせて整備事業者が対応していくしかない状況。
 昔は昭和38年、48年、58年と10年に1度規制が改訂されていたが、最近では2年に1回規制が改訂されている状況。
 定期点検も、H7.7.1から施行された車両法においては、「定期点検の時期は、検査の前後を問わない」ということになっている。これは先送りしても良いということであり、分解整備検査も無くなった。
 契約に基づいて3ヶ月点検を行うものの、料金は決められているため、法的に決められた定期点検基準に基づいた内容のみを行うことがほとんど。そのためメーカーが推奨している基準を充分には満たしていない場合もある。
 「厳しい使われ方をする」という条件が設定されているが、多くの運送事業者の使用状況が、この内容に該当してしまうのではないか。
 3ヶ月点検の実施率は全ト協の資料(約50%程度)よりも、実は低いのではないだろうか。
 自社で整備工場を持っているようなところは、整備管理者等がきちんと行っているだろうが、そうでない場合は特に経済性の点からも実施は困難。また、守らなかった場合の罰則規定も無い。
 全ト協が点検記録簿(日常、3ヶ月、12ヶ月)を出している。
 車にはメーカーが推奨する点検内容が記載された「整備手帳」が備え付けてあるが、汎用的な記録簿に従った内容で行う場合が多いのではないか。
 運送事業者としては、法的に定められた定期点検を実施するしかない。
 実施しない(出来ない)理由としては、時間ではなく金の問題。
 どのように車が高性能なものになろうとも、定期点検をきちんとやるということが大切。
 技術的には良くなっているので、後5年も経てば悪い車も無くなるだろう。後は時間の問題といえる。U−(平成元年規制適合車)は、性能があまり良くなかった。しかしながらそれらも、あとしばらくすれば規制によって無くなってしまう。
 ディーゼルエンジンは、経済性の観点から、まずなくならないだろう。
 欧州でも小型のディーゼル車はより一層効率が良いため増えている。
 ディーゼルエンジンはブローバイガスを大気解放しているが、あれでは環境に良くないのではないだろうか。
 黒煙を出すような車を使っている業者は、黒煙が見えにくいように、朝晩に仕事したりしているのではないか。
 運送事業者においても、日常の点検整備箇所を図示したポスター等を目に触れやすいところに張るだけでも有効な取組となるだろう。
 保安基準の内容には、環境のための項目が殆ど無いため、点検整備をしさえすれば良いというばかりでは不十分で、組織の体制作りや従業員の教育等が不可欠な課題。
 運行前点検も重要だが、運行後に自動車の状態についてチェックし把握することが大切。
 保安上でいうなら、日常点検において、少なくともハンドル、ブレーキ、排ガス、オイル洩れ、水漏れ等についてはやらねばならない。
【効果的な整備箇所について】
 黒煙対策に効果があるのは、エアエレメント。次にエンジンオイル。
 ディーゼルの場合、運送事業者ができるのは、エアフィルタとエンジンオイルぐらいしかない。
 ディーゼルエンジンにとっては、安いオイルでも構わないので、1万キロごとにきちんと交換することが有効である。
 ・エアエレメント
 エアエレメントは、3〜4万円(乗用車の10倍ぐらい)。
 エアエレメントは、年1回程度の頻度で交換する。
 エンジンが吸気する力が大きいため、頑丈でなければならず、高価なものとなってしまう。
 ・エンジンオイル
 1度の交換で、30〜40リットル使う。
 運送事業者が購入しているエンジンオイルはリッター150円程度(200リットルで3万円)。
 10台も持っていれば整備工場を自前で持っていなくとも、自分でオイル交換している運送事業者は多い。
 経済性から、交換せずにつぎ足してしまうユーザーが多いようだが、オイルにカーボンが混ざったままとなるため、良くない。
 エコ・オイルとは、粘度の低いエンジンオイルのことを指す。
 ・エンジンオイルエレメント
 トラック(11t車)のオイルエレメントは、5〜6千円。
 オイルエレメントは、走行1万キロごとに交換する。
 ・燃料ポンプや燃料噴射ノズル
 最近では、部品の精密化が進み、燃料ポンプや燃料噴射ノズルは簡単に整備・調整が出来なくなっている(特殊な装置(数百万円)をそろえることも容易ではない)。
 ・その他の部品・用品の類で環境に優しいもの
 環境にやさしいかどうかは、とにかく運転方法に左右されてしまうものであり、後付するような部品・用品で、効果的なものは何もないといえる。ケミカルの類によい製品は無い。もし、そういった部品・用品が有れば、すでに自動車メーカーが採用しているだろう。
 ただし、エンジンオイルに添加するタイプのある製品(エンジンオイル1リットルあたり 80ccを追加し、投入後1200km程度走行後に効果が現れ、5万キロほど効果が持続するとされている)は、高価なだけあって性能はいい。経験的には、使用した車両の大体6割ぐらいに効果(黒煙の減少等)が現れた。
 2t車のトラックぐらいまでなら使った経験がある。
 完全に効くなら大型トラックにも入れるだろうが、効かないこともありえるため、なかなか試すわけにはいかない。
以上








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