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資料5 カーシェアリングにおける自動車保険の設定に向けて
【あいおい損害保険株式会社】
1)保険の枠組みと自由化に関して
 保険は認可事業であり、保険料の算出にあたっては、認可基準に照らした数理的合理性や数理的根拠が求められている。
 一方、近年においては、契約者サービスの向上を図るため、市場の活性化を通じた適切な競争原理を導入すべきとの観点から、規制緩和が進められている。
 
2)共同利用自動車に対する法規制と保険手当ての現状
[1]道路運送法79条/80条
 カーシェアリングに対しては、現状では該当する法律が存在しないため、道路運送法でレンタカー事業に準ずる扱いが想定される。(自動車登録標「わ、れ」ナンバー)
  判断のポイント
79条(共同利用の許可) 事前合意の要無
80条(有償運送の禁止及び貸借の制限) 有償性の有無
 
[2]レンタカーの保険料
 自動車保険では、業として有償で貸渡しすることの許可を受けた自動車のうち、あらかじめ借受人を定めていない自動車(≒レンタカー)に対しては、一般のフリート自動車に対して、50〜60%
※の割増を徴収している。
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 ※保険統計に基づき、レンタカーとレンタカー以外の自動車の損害率の格差から算出している。
 
3)カーシェアリングにおける自動車保険の設定
 共同利用自動車は、毎日同じ状態で運転する(使用範囲が特定されている)マイカーとは異なるため、個人の自動車保険は馴染まない。しかしながら、会員制であることなど、クルマの使用実態が既存のレンタカーとは基本的に異なっていることから、割増保険料を見直し、フリート自動車と同等扱いとすることが現実的である。
 ただし、利用頻度の低い会員(観光客など)を含んだ運営形態の共同利用システムに対しては、「一時運転のリスク」が混入することによって、事故の可能性が高くなると見込まれること、及び既存のレンタカーとの区分が暖昧となることなど、その取扱いには検討が必要と考える。
 
4)保険制度からみたカーシェアリングの課題
[1]共同利用自動車の定義
 カーシェアリングについては、運用実験事業において様々な事業化形態及び車両使用形態等が想定されているが、カーシェアリング向けの自動車保険を設定・運営するにあたっては、既存のレンタカーとの区分が明確かつ客観的に行えることが必要である。⇒「共同利用事業」としての貸渡許可
 
[2]モラル維持の方策
 カーシェアリングの事業運営においては、会員のモラル維持がポイントになる。自動車保険は契約者が事故を起こして保険金を受け取ると、翌年の保険料が上がって保険会社側の収支をバランスさせる仕組みになっており、事故が多発した場合には、結果、保険料負担が高額となることから、この場合には、コスト高による事業運営への支障が懸念される。
 (検討すべき観点)
 ・料金体系の設定
 ・会員数の規模
 ・入会条件の設定
 ・免責金額、NOC(営業利益の損失填補)の活用
 ・セキュリティー対策 など
 
[3]統計データの蓄積
 前述のとおり、保険料の算出にあたっては、認可基準に照らした数理的合理性や数理的根拠が求められていることから、実証実験などの事故データが統計データとして収集・提供されることが期待される。
 
[4]環境改善への協力としての保険優遇
 環境にやさしい自動車に対しては、現在、いくつかの保険会社で、普及促進のための支援策として、自動車保険料の割引を行っているが、カーシェアリングについても、環境負荷の抑制への効果が見込まれるため、同様の取扱いが期待されている。しかしながら、このためには先ず、自動車税制のグリーン化と同様に、共同利用化という特例によって、軽課扱いとされる等の要件[≒支援導入に対する社会的気運]が必要と考える。
 
[5]多様化する自動車保険の特約を活用
 共同利用システムの保険料としては、できるだけ低額に抑えることが望ましいが、商品の多様化に伴い、修理が必要となった場合には、リサイクル部品を使用したり、保険会社が指定する修理工場へ入庫することを条件として、保険料を割り引くといった特約もあることから、こうした特約を上手く活用することで、契約者側の負担保険料を圧縮する等の工夫も考えられる。
 
道路運送法(抜粋)
道路運送法第80条 道路運送法第79条
(有償運送の禁止及び賃貸の制限) (共同使用の許可)
第80条自家用自動車は、有償で運送の用に供してはならない。ただし、災害のため緊急を要するとき、又は公共の福祉を確保するためやむを得ない場合であつて運輸大臣の許可を受けたときは、この限りでない。
2自家用自動車は、運輸大臣の許可を受けなければ、業として有償で貸し渡してはならない。
3前条第2項の規定は、前項の許可について準用する。
第79条自家用自動車を共同で使用しようとする者は、運輸大臣の許可を受けなければならない。
2運輸大臣は、自家用自動車の共同使用の態様が自動車運送事業の経営に類似していると認める場合を除くほか、前項の許可をしなければならない。
道路運送法施行規則第52条 道路運送法施行規則第49条
(貸渡しの許可申請) (共同使用の許可申請)
第52条法第八十条第二項の規定により、貸渡人を自動車の使用者として行う自家用自動車の貸渡しの許可を申請しようとする者は、次に掲げる事項を記載した自家用自動車貸渡許可申請書を提出するものとする。
一 貸渡人の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 貸渡人の事務所の名称及び所在地
三 貸渡しをしようとする自家用自動車の数及び乗車定員又は最大積載量
四 貸渡しをしようとする自家用自動車の車庫の所在地及び収容能力
五 貸渡しの実施計画
六 貸渡しを必要とする理由
2前項の申請書には、貸渡しをしようとする自家用自動車の自動車登録番号又は車両番号、貸渡料金及び貸渡約款を記載した書類を添付するものとする。
第49条法第七十九条第一項の規定により、自家用自動車の共同使用の許可を申請しようとする者は、次に掲げる事項を記載し、かつ、当事者が連署した共同使用許可申請書を提出するものとする。
一 当事者の氏名又は名称及び住所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
二 各当事者が経営する事業の概要
三 自動車の乗車定員又は最大載積量ごとの数
四 期間を定めたときは、その期間
五 共同使用の理由








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