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資料4 三鷹/シティーコート下連雀カーシェアリング社会実験
 早稲田大学理工学部交通計画研究室
1.実験概要
1.1.実験概要
 本調査は、東京都三鷹市の公団賃貸「シティーコート下連雀」において、団地居住者を対象にカーシェアリングのモデル実験を実施した。
表1.1.実験概要
実施主体 交通エコロジー・モビリティ財団
実行組織 早稲田大学理工学部交通計画研究室
期間 平成13年10月20日〜平成14年1月19日
利用者 公団賃貸マンション(三鷹市下連雀5-8)の居住者
(モニター契約締結者に限定)
利用目的イメージ 駅までの送迎、買い物、通院など
実験規模 車両1300cc車(ダイハツYRV) 2台
モニター 28人(最終)
駐車場 1ケ所
駐車場 上記マンション内平面駐車場No.44,46の2台分
料金体系 時間・距離料金併用(200円/時,25円/m)
(状況に応じ、予約取消料金、延滞料金を徴収)
予約受付時間 電話(9:00〜17:00),インターネット(24時)
貸し渡し時間 24時間(無人貸し渡しを想定)
走行記録簿兼貸渡証 車内に搭載
貸し渡し前点検 可能な限りスタッフがエンジン始動点検等をし、異常があれば直ちに整備会社に連絡
その他 緊急連絡用携帯電話を車内に常備
利用手順 事前に所定の申し込み用紙の提出を受け、実験協力者登録を行い、ID番号を発行する
1.電話またはインターネットで予約
2.予約時間になると駐車場に行き、手持ちのスペアキーで自動車の鍵を開ける
3.利用者自身で、車両状態と走行記録簿を確認し、自動車を利用
4.利用後、車をもとの駐車場に戻し、車内の走行記録簿に走行距離などを記入し、車をロックし、スペアキーを持ち帰る
5.月に1回送られてくる使用料請求書の請求金額を確認し、振込により利用料金を徴収
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住棟数、階数 :総数3棟1号棟7階、2号棟7階、3号棟13階
住戸タイプ(例:2DK〜3LDK) :(1DK〜3LDK)
駐車場付置率または台数 :244台
現在の駐車場空き状況 :40台
駐車場料金 :平面15750円 機械式上15750円、下14175円

1.2.実験協力者の個人利用状況
個人の利用状況(利用回数、利用時間、利用距離)を(2001/10/20〜2001/11/19)、(2001/11/20〜2001/12/19)、(2001/12/20〜2002/1/19)の3つの期間に分けて整理した。
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1.2.1実験協力者数および属性
2001/10/20〜2001/11/19
実験協力者数19名(男性:11名,女性:8名)
表1.2.1実験協力者の年代別内訳
20代 30代 50代 60代 70代
0 9 2 2 0
表1.2.2実験協力者の職業別内訳
会社員 主婦 無職 学生
11 6 2 0
2001/11/20〜2001/12/19、2001/12/20〜2002/1/19
実験協力者数28名(男性:18名,女性:10名)
表1.2.3実験協力者の年代別内訳
20代 30代 50代 60代 70代
1 11 3 3 1
表1.2.4実験協力者の職業別内訳
会社員 主婦 無職 学生
17 6 4 1

1.2.2実験期間全体として利用状況
[1]個人の利用回数の増減
 期間ごとに個人の利用回数の増減に着目すると全体の傾向として、増加する実験協力者と、減少する実験協力者が見られる。つまり、カーシェアリングシステム自体の予約方法や利用方法に対する慣れという部分の影響はほとんどなく、個人の自動車の利用頻度、利用目的による影響が大きいものと考えられる。
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図1.2.1 期間ごとの個人の利用回数の増減
[2]利用回数と累計利用比率の関係
 実験利用期間中、カーシェアリングを利用しなかった実験協力者数は8名(1次募集会員数:6人、2次募集会員数:2名)であった。
 また、実験期間中5回以上利用した人を、カーシェアリングに加入する意志がある人と定義すると、その会員による利用回数は全体の約80%を占める。
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図1.2.2利用回数と累計利用比率
2.カーシェアリングの利用目的
 カーシェアリングの利用目的を見ると、買物、レジャー、送迎の割合が高い。特徴としては、平日と休日を比較すると、平日では送迎、休日では買物の割合が高くなる傾向にある。平日と休日で、レジャーの割合が変化することが予想されたが、両者にさほどの差は見られなかった。この理由としては、移動回数で集計していることが考えられ、レジャーの移動時間を考慮すると多少の変化が予想される。また、レジャーの定義の判断が難しく、所用に近いものをレジャーとして取り扱ったことも影響していると考えられる。
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図2.1実験期間全体の利用目的の内訳
3.カーシェアリング利用状況
・ 実験期間92日間を通しての総利用回数は122回、総利用時間は301.7時間、総走行距離は2657.7 kmとなった。
・ 平日の利用は0.89回/日、休日は2.19回/日、平均して1.33回/日となっている。
・ 利用時間は、1回あたり平日で約2時間、休日で約3時間と、1時間程度の差が出た。
・ 総走行距離は、平日で17.16km/回、休日で25.46km/回と、8km以上の差があった。
 
3.1時間帯別利用状況
[1]時間帯別の利用台数
 実験期間中における時間帯別の利用台数を図3.1.1に示す。
 貸し出し時間は午前10時30分頃に最初のピークを迎え、徐々に減少していくが、午後2時以降にもう1度利用者が増加している。一方返却は、午後5時頃にピークを迎えている。
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図3.1利用開始時刻と返却時刻の対比
[2]時間帯別の車両稼働率
 時間帯別の車両平均稼動率を図3.1.2に示す。
 休日は、午前10時頃から午後6時頃までの間に利用が集中している。平日の場合は、午後2時ごろから5時までの間に、主に利用がされている。平日、休日ともに夜間の利用はほとんどなかった。
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図3.2時間帯別平均車両稼働率
3.3.日別車両稼動状況
 実験開始から約1ヶ月間は、あまり平日の利用が見られなかったものの、以降、徐々に平日、休日ともに利用者が増加した。11月下旬から12月中旬にかけては、稼働率が比較的安定していたが、12月中旬以降は稼働率にばらつきが見られる。
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図3.3日別車両稼働率
3.4.走行距離と利用時間の関連
 貸し出し車両ごとの走行距離と利用時間の関係を図3.4.1に示す。図中の各点は、貸し出された車両を示す。
 約73%の車両が20km以下の走行距離であり、約74%の車両が3時間以下の走行時間である。全車両に対して走行距離が20km以下かつ、利用時間が3時間以下の車両は約66%であった。
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図3.4走行距離と利用時間の分布
4.予約関連
4.1月別予約件数
 月別の予約件数を次に示す。予約総数には実際に利用したものと、途中でキャンセルしたものも含まれるので、これを分類した表が表4.1である。実際の利用回数は実験開始直後の第1月は予約・利用が低迷していたが、会員を増員した第2月より急増し、1ヶ月あたり50回以上の予約があり、やや定着した感がある。しかし一方で、無断で利用時間を延長し、結果として他の会員に迷惑をかけているケースも見られるようになった。
表4.1予約件数
実施期間 11/19〜11/20 12/19〜12/20 1/19〜10/20 全期間合計
予約総数 21 53 54 128
実利用件数 19 53 50 122
  事前に延長・変更申請 1 3 1 5
  無断延長 1 2 8 11
  予約せずに無断利用 0 0 0 0
キャンセル件数 2 0 4 6
  不可抗力によるキャンセル 0 0 3 3
  無断キャンセル 1 0 0 1
不可抗力によるキャンセル:前の利用者の無断延長などにより不可抗力によりキャンセルせざるを得なかったもの
4.3予約手段
 予約の方法を図4.3.1に示す。パソコンと携帯端末を合わせたインターネットによる予約件数が約7割を占めた。一方で、電話しか利用していない会員も9人いた(2人は他の手段と併用)。会員数が少ないので個人差によるところが大きいが、電話利用者よりもインターネット利用者のほうが、平均的に利用回数が多い傾向がうかがえる。特に携帯端末利用者は、積極的にカーシェアリングを利用しているといえる。
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図4.3.1予約方法内訳
 
表4.3.1予約方法別、予約の動向
予約方法 パソコン 携帯端末 電話
予約件数(件) 49 39 40
利用者数(人) 9 2 11
平均回数(回) 5.4 19.5 3.6
最大回数(回) 10 32 13
最小回数(回) 1 7 1
 
4.4予約時期
 実際の利用開始時間と比較して、何日前あるいは何時間前に予約していたかを図4.4.1、図4.4.2に示す。はじめ、予約を行うべき時間の制限を「原則として利用開始30分前まで」に設定していたが、利用の30分前前後の予約が増えてきたため、第2月より「利用開始の前までに予約を行うこと」と変更した。その後、利用直前の予約は着実に増えており、「使いたいときに、予約してすぐに使う」というマイカー的な利用感覚が定着してきたといえる。また、休日では1週間前までに確実に予約を押さえておく利用者が平日に比べると多い一方、利用当日になってからでも「車が空いていれば利用する」という利用者が非常に多い。
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図4.4.1期間別予約時期
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図4.4.2利用日別予約時期
4.5予約した利用予定時間と実際の利用時間の比較
 予約した利用予定時間と、実際の利用時間の比較を図4.5.1、図4.5.2に示す。利用開始時間はほとんどの場合、予約した時間の15分後までの間にある。利用終了時間は、あらかじめ遅延する可能性を考慮して遅めに設定している人が多いことから、実際の利用終了時刻が30分以上早い場合も比較的多い。しかし、特に土曜・休日を中心に、渋滞などのため30分以上遅刻しているケースも多くみられる。中には6時間30分という無断延長もあり、利用者のマナーが問われる結果となった。
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図4.5.1実際の利用開始時刻
 
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図4.5.2実際の利用終了時刻








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