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9.考察
 最大心拍数は、Iで述べた通り20才で約200拍/分前後である1,2)。体力測定結果による最大心拍数は、OHが196拍/分、SCが198拍/分、ANが190拍/分とそれぞれ平均的か、それ以上の心拍数を示していた。また、ダイビング運動は陸上運動よりも23%の負荷が加わり3)、最大心拍数が200拍/分の人で170拍/分前後までしか上がらないとされる。
 海洋訓練は、本来2日間の日程で現地に野宿して行われる。今回の訓練は日程的に2日間の訓練が無理であったために1日だけの訓練となった。
 障害ドルフィンの負荷は、最大心拍数で150〜160拍/分まで上昇させる最大負荷状態を数分間継続させる訓練を行っていた(図4-1)。
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図4-1 障害ドルフィン中の心拍数
 
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図4-2 ロープ取付訓練中の心拍数
 
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図4-3 小回り訓練中の心拍数
 
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図4-4 ナイトダイブ中の心拍数
 ロープ取付訓練の負荷は、潜水運動やロープ作業の負荷がそれぞれ加わり、潜水作業で140拍/分前後、ロープ作業で100拍/分以下の心拍数であり、肉体的負荷を含めた技術的訓練を考慮したものである(図4-2)。
 小回り訓練は、単独潜水での正確な判断を行うための訓練であり、身体的負荷も加わるが、それ以上に精神的負荷と判断力が要求される訓練である。結果は3人が異なる心拍数を示し、159拍/分まで上昇した者や120〜130拍/分で推移していた者や100拍/分前後以下で推移していた者であった。心拍数が低いほど精神的に安心感を持ち冷静な行動をしているといえるが、159拍/分まで上昇した場合は精神的に不安定でパニック状態なのか、肉体的に負荷が加わった状態で潜水しているのかは判断できなかった(図4-3)。
 ナイトダイブは、昼間に小回り訓練を行い、同じコースを夜に行ったものである。真っ暗な海中をライトだけの限られた明かりの中で1人でダイブすることは不安感が強く現れるが、経験を積むことによってある程度練習効果が期待できる。特救隊員は日常的の訓練の中でナイトダイブを行える環境にはなく、実践を想定した訓練であれば定期的なナイトダイブを計画し、精神的に安定したダイブを目標にすべきである。結果は1人の心拍数が記録できなかったために2人の記録で考察すると、常時160拍/分前後の高い負荷で潜水していた者と100拍/分前後で潜水していた者に分かれる。これは昼間行われた小回り訓練の結果とほぼ一致し、精神的負荷が反映したことによる違いであると思われる(図4-4)。
 基礎体力訓練が障害ドルフィンとロープ取付訓練であるとするならば、 精神的訓練がナイトダイブを含めた小回り訓練であると言える。隊員によって大きな違いが現れた小回り訓練は、定期的に実施する必要性があると思われる。








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