9.考察
心拍数は加齢と共に低下すると言われている。簡単な最大心拍数の求め方は、Y=220−X(Y=最大心拍数、X=年齢)によって計算できる1)。しかし、ダイビング中の最大心拍数や酸素摂取量は、レギュレータによる呼吸抵抗やフィンキックによる下肢だけの運動などによって陸上運動よりも23%低下することが我々の研究によって分かっている2)。
本研究は、流水プールで1(低速)及び1.7ノット(中速)の速さの条件で行われたが、いずれの条件とも心拍数が最大値にまで達していた。その最大心拍数は、両条件の負荷において全く同じ値を示し、168〜184拍/分の180拍/分前後であった。Iの図1-10に示した最大心拍数と酸素摂取量は、トレッドミルで行われた最大運動時のものである。この条件での最大心拍数は180〜210拍/分を示している。今回の運動負荷で記録された心拍数は、ダイビングに伴う負荷を差し引いても両条件の負荷とも最大負荷にまで達していると言える。
換気量は、1ノットで明らかに機械的誤差と思われる13〜16リットル/分の安静状態と同じ結果が記録されていることから、換気量を測定したダイブコンピュータの信頼性が疑われた。しかし、1.7ノット条件では59〜77リットル/分とダイビングの負荷23%を差し引いたとしてもほぼ正確な記録であるとは思われるが確認はされなかった。最大の換気量である77リットル/分をIの図1-11に当てはめてみると約3リットル/分の酸素摂取量となる。陸上運動とダイビング運動との違いからこの77リットル/分の値が最大換気量である可能性もあるが、信頼性に乏しく結論できる結果は得られなかった。
日常のプールトレーニングは、短時間ではあるが最大運動まで追い込んでいることが心拍数から分かり、特救隊の日常の訓練が確認できた。