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3 まとめ
 これまで3年間、特殊救難隊員のフィジカルコンディションに対していくつかの側面から検討を加えてきた。それは図8に示したように、救助活動の成果は隊員各自のライフスタイルをベースとしたピラミッドで表現されるように、隊員の生活意識を含む日常の生活習慣の上に調整される心身のコンディションがどのようなものであるかに依存しており、それらをより良好に保つことがより高い救助能力を保証することになるというコンディショニングの一般構造に則って考えられたものである。つまり、救助隊員がより望ましい生活習慣を身に付け、日頃より良好なコンディションで訓練並びに業務に従事することによって、より質の高い救助能力が獲得されることを意味している。
図8 救助における活動状態とコンディショニング
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 そこでまず、今回の調査結果から特殊救難隊員の健康習慣得点をみると、その平均はおおよそ3.5点前後の推移であり、まだまだ改善の余地があるものと考えられた。もうすでにこうした生活習慣の健康化はメンタルプランニング作業部会の報告にもあるようなNK細胞の活性レベルを上げ、その免疫機能を報告されており、特殊救難隊員のような通常激しい訓練を実施する集団の健康管理には極めて重要な因子と考えられる。また、平素の心身のコンディションについては、今回の調査結果にも示されたように隊員は通常年間計200数十種類にも及ぶ多様なトレーニングを実施し、総合的なフィジカルフィットネスを維持、向上させるために心身を酷使しているにも関わらず、隊全体の平均的な蓄積的疲労度は比較的少なく維持されていた。しかし、これらの結果は集団としての評価であり、個人的には高い蓄積的疲労を訴える隊員もおり、その改善並びに調整を図るための手だてを講じることは隊員の健康管理上また事故防止の視点からも重要な事項であり、そのシステムづくりは急務な課題といえる。
 具体的には2000年度より試作中の体力管理用のソフト内に今回の研究で用いたCFSI並びにPOMSテストといった蓄積的疲労の評価システムを組み込み、隊員の心身のトータルなコンディションを継続的にモニタリングするとともに、定期的に分析するシステムを導入し、活用することが望まれる。
 またトレーニングプログラムの内容並びに配置については、残念ながら2001年度に計画された基礎トレーニングの効果判定研究が成立しなかったため結論的はものは見い出せなかった。しかし、本研究の中で隊長並び隊員との面接やアンケートで、その経験則の整理とともにその合理化のための方策の具体化が望まれる。従って、今後は2001年5月に出された指針に基づいて、目的別のトレーニングマニュアルを作成し、定期的なフィットネスチェックを含めた体力管理システムを立案し、運用することが望まれる。








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