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 [4]体力管理法に関する調査
 隊員の体力管理に関する問題点並びに改善策を検討するために、各隊隊長を対象に現在実施している業務並びに訓練等における問題点並びに広く体力管理法に関する意見等を個別面接法を用いて抽出し、分析した。
 面接調査の結果を表6に示した。
 表からもわかるように、特殊救難隊員には様々な体力要素を含む能力が要求される。これについては、1999年の研究でもその訓練種目の種類は200種類を越え、多岐にわたる能力開発が求められることが明らかになっており、今回の調査でも、訓練として何を優先するべきかについて隊長間の統一的な見解は見られなかった。しかし、現実的には常により良好な状態で出動待機する必要のある隊員にとって、その合理的な体力維持、向上は必須条件といえ、そのためにはまず隊員の体力管理の責任の所在を明らかにすることが重要であると考えられた。一般にこうした職場における体力・健康づくりはその主体が労働者自身であることから、その責任の所在も自己管理が原則である。特殊救難隊員の場合もその内容は特殊性に富んでいるとは言え、その原則には変わりはない。しかし、面接結果でもはっきりしたようにその内容の体系化やその指導体制のシステム化はほとんど行われておらず、その管理上のノウハウはほとんど個人的なレベルで実施されているだけである。特に今回のような全体での訓練時間確保が困難な時期には隊員各自がその基礎体力維持への意識を高め、個別に時間を作ってその維持に努めない限り、必要体力維持の保証はない。従って、今後そうした隊員の体力管理に対する基本姿勢を再確認するとともに、適切なツールを用いて各隊員個人の体力レベルを評価するとともに、その管理における基準、目安を明確にし、具体的な努力目標を設定することが急務であり、そのためには羽田特救基地並びに横浜防災基地で比較的容易にその必要体力レベルを評価しうるツールを検討することが必要と考えられた。特にこれまでその管理において実施されていたいくつかのフィールドテストは今年については実施を見合わせる隊もあり、その基準の見直しが急務であり、十分な訓練時間を確保されてなかったことによる隊員並びに隊長のイラダチも面接等から観察されている。
表6 特殊救難隊、隊長面接結果
1.特救隊員に求められる体力要素とは
[1]身軽さ、身のこなし [4]全身的なスタミナ
[2]総合的な身体能力 [5]筋の持久力(全身的な)
[3]泳力 [6]腕力
(その他に求められる要素は)
[1]ロープ扱い [4]ドルフィン力(スピード、スタミナ)
[2]器用さ  
[3]器材の取リ扱いを含め、一とおりのことはできるようになっておくこと。  
(必要最低限のこと、ただしそれが何であるかは明確にリストされているわけではない)
2.現在行っている体力づくリに関する訓練について
[1]重量物の背負い [4]綱登リ
[2]柔道的な体力(内転力、背筋力、引き寄せ、握力) [5]サーキットトレーニング
[3]ランニング  
3.どういう視点で隊員の体力レベルを評価するか?
[1]体力検定
[2]レンジヤー検定
[3]潜水検定
以上の3つをやっているが適当かどうか疑問。使えるものもあるが・・・。
(ちなみに今年はやっていない隊もある。)
[4]隊員の体調、疲労状態は訓練中の隊員との会話、補強訓練時の反応で評価、判断する。
4.現在抱えている体力管理に関する問題点
[1]訓練時間が思うように取れず、苦慮している。
[2]隊員各自が自己管理すべきであるが、それがうまくいっていないように思う。
[3]新人隊員の基礎体力が年々下がっているように感じている。特に枯り強さ、たくましさなど。
[4]いつも訓練していないと不安になる。周リとの比較の中で劣等感が強いように思う。
[5]訓練すべきことはたくさんあると思うが、実際にはあんまリ使わない内容もありその選択が難しい。
5.トレーニングに関する質問事項
[1]夏場の脱水対策 [4]隊員のケガ、減圧症罹患後のリハビリテーション法
[2]首のトレーニング法 [5]ウエイトトレーニングの正しいやリ方
[3]背筋のトレーニング法  
6.フィジカルプランニング部会等に希望すること
[1]トレーニングに関する研修会の実施 [3]トレーニングの適正量の目安を知りたい。
[2]栄養に関する指導 [4]準備運動のチェック、確認をお願いしたい。
その他
[1]常に追い込まれた状態で何が出来るかを訓練課題としている。
従って、体力的にきつい訓練を強いることになるが、それによって能力が引き出されると考えている。
[2]基本的には、隊員個人の自覚と責任に任せている。個人の自由な発想によって必要と思われる体力要素についてきつい訓練を強いることになるが、それによって能力が引き出されると考えている。
[3]これまでの訓練は経験主義的な部分が多く、実際専門家からみてどういったことが必要であるか、また、問題であるかがわからない。その点を明らかにしてほしい。
[4]訓練に限らず、最近生活全体の中で身体を動かす機会が少なくなっていると感じている。その点がむしろ問題のような気がする。最低どれくらいの頻度でどれくらいのことをしておくことが必要なのかを知りたい。
フィールドテスト作成に関して
[1]是非実現させてほしい。特に基地内でできる方法でのテストとトレーニング法を明確にしてもらいたい。
[2]いい発想だと思う。色々な検定があるがそれらには要るものもあれば要らないものもあると思う。
整理して、出来るだけ必須でかつ有効なものは何かを明らかにして実践してみたい。
[3]隊員が各自で自己評価でき、また通常のコンディショニングに活かせるものを期待する。
[4]たたき台またベースになるようなものがあるだけでもいい。
[5]陸上種目と水中種目があると思う。それぞれ半日程度で測定、実施できるものが現実的だ。








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