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2.2 フィジカル作業部会実施内容
はじめに
 フィジカルプラニング作業部会では上記研究計画の主旨に則り、1999年から2001年の3年間、特殊救難隊のフィジカルフィットネスに関連する業務・訓練等の作業内容、隊員の体力及び生活習慣等の基礎情報収集並びに新潜水技法に関する分析等から潜水による救助業務能力の向上における施策を検討した。
2.2.1 特殊救難隊のフィジカルフィットネスの実態及び体力管理法の改善
東京医科歯科大学 眞野 喜洋
水野 哲也
駒沢女子大学 芝山 正治
1 研究方法
(1)業務・訓練内容調査
 まず、今回の対象である特殊救難隊員が実務並びに訓練等で行っている作業内容を知る目的で、以下の3つの分析を行った。
 [1]平成8及び9年度における作業内容の分析
 現在、特殊救難隊員が年間を通してどのような実活動(業務並びに訓練)を行っているかを平成8及び9年度の業務並びに訓練実施報告書より抽出し、その活動内容を種類、時間、頻度等の視点から分析した。
 [2]訓練内容の分析
 特殊救難隊員は業務だけでなく、自主的な訓練を含むコンディショニングプログラムを勤務時間外を含む全ての時間において実施している。そこで、隊員がどのような内容のプログラムをどの程度実施しているかを知るために、訓練内容を日誌形式で記載できる記録ノートを作成し、隊員に1999年7月中旬から8月末日までのおおよそ40日間に実施した全てのプログラムを記載してもらい、その記載内容から細かい訓練内容の種類、時間、強度(RPE;主観的強度)、頻度等を分析した。
 [3]実作業時の生体負担度の分析
 業務並びに訓練の分析結果から比較的高い頻度で実施される業務内容並びに訓練について実作業の写真並びにVTR撮影を実施するとともに、その際の心拍数を継続記録しその生体負担度を分析した。
(2)体力
 特殊救難隊員の体力については、3年間継続してその行動的側面についての能力を検討する目的で、その行動体力(以下フィジカルフィットネスとよぶ)を一般にスポーツ選手並びに比較的活動強度の高い労働者等を対象として実施される実験室的なフィットネステスト(以下ラボラトリーテストとよぶ)を用いて検討した。
 [1]ラボラトリーテスト
 隊員の基礎的な体力水準並びにその特徴を知るとともにその変動を検討するために、以下に示すような実験室的なフィットネステストを実施した(実施時期は、1999年4月〜5月、2001年11月〜12月及び2001年9月、12月他であった)。
 測定項目
 イ 形態 身長、体重、皮下脂肪厚、
 ロ 基礎体力 握力、背筋力、立位体前屈、垂直跳び、全身反応時間、無酸素パワー、上・下肢伸展、屈曲力有酸素パワーI(トレッドミル走)、
 また、隊員の業務特性を考慮するとともに、実業務並びに訓練時のモニタリングにおける作業負担度を評価するための基礎実験としてスイムミルを用いたオールアウトテストを実施した(実施時期は1999年11月〜12月であった)。
 測定項目
 有酸素パワーII(スイムミル泳)
 [2]フィールドテスト
 隊員の業務特性を考慮するとともに、その能力水準を評価する目的で特殊救難隊が以前から実施している以下に示すようなフィールドテストを実施した(実施時期は、1999年5月、2001年5月及び12月であった)。
 測定項目
 イ レンジャー検定
 ロ 潜水検定
 ハ その他のテスト1500m走
 [3]蓄積的疲労度
 隊員の体力の状況を把握するために、それらを反映する疲労度、特に実際の業務執行上問題となりやすい蓄積的な疲労に着目し検討した。その評価には通常の訓練並びに業務遂行時における蓄積的疲労度を労研が開発した蓄積的疲労兆候調査表(通称CFSI)並びに日本語版POMSを用いた。なお、調査時期は1999年7月、2000年12月、2001年9、10、11、12月であった。
 また、潜水業務に関する情報として一般化する目的から、海上保安庁に属するその他の潜水業務者にも同様な調査を実施し、その傾向を分析した(調査時期は2001年12月であった)。
 [4]体力管理法に関する調査
 隊員の体力管理に関する問題点並びに改善策を検討するために、各隊隊長を対象に現在実施している業務並びに訓練等における問題点並びに広く体力管理法に関する意見等を個別面接法を用いて抽出し、分析した。
 また、その面接の結果、現在実施しているいくつかの評価法(特にフィールドテスト)には、その活用における疑問が生じているものがいくつかあり、過去に実施したいくつかの評価法によるテスト結果を分析することからその有用性を検討しようとした。
 [5]基礎体力トレーニングの導入について
 前項に述べたように2000年度に直接現役隊員を対象に広く体力管理法に関する意見等を個別面接法を用いて抽出し分析したが、その後さらに隊長他救難課に属する救難業務経験者等の会合の結果、「フィジカルトレーニングマニュアル作成に向けての作業の方向性について」と題して、2001年5月10日付けで以下のような事項が決定した。
 ・基礎体力の向上と(救助)技術向上は別個に考える
 ・体力的に全盛期を越えた者に対するプログラム(基礎体力の維持、緩やかな向上)とそれ以外の者に対するプログラム(相当の基礎体力向上)に分けてマニュアル作りを行う。
 ・長年の経験等に基づいて行われている現状のトレーニング方法を見直し、基礎体力の効率的な向上を行うための科学的トレーニング法を取り入れる。
 そこでこれらに基づき、2001年度の研究計画として当初2001年9月から12月にかけて「特殊救難隊員の基礎運動機能並びに各種フィールドテスト結果に及ぼす3ヵ月間の基礎体力づくりプログラムの効果と影響」をテーマに別添資料のような1)筋持久力系、2)柔軟性、3)アジリティ系、4)エアロビック系の4種のトレーニングからなる基礎体力トレーニングを立案し、3回/8日の実施をを基本とした3ヵ月間のトレーニング実施計画に基く研究を開始した。しかし、実施開始まもなくアメリカ合衆国で同時多発テロが発生し、特殊救難隊に緊急の特殊訓練事項が発生しため、その計画どおりの実施が困難となった。従って今回は当初の検討計画に沿わなかったが、実施可能な限りで前述したトレーニングを実施するよう指示し、その実施前後におけるラボラトリーテストとフィールドテスト及び前中後における蓄積的疲労度並びに健康習慣調査等を実施し、その変動を検討した。
(3)生活習慣調査
 [1]健康習慣調査
 体力の維持管理にはそのベースにライフスタイル全般にわたる健康度が影響する。ここでは、それらをブレスローが示した健康習慣得点を用いて分析した。
 また、これについても潜水業務に関する情報として一般化する目的から、海上保安庁に属するその他の潜水業務者にも同様な調査を実施し、その傾向を分析した。
 [2]食事内容調査
 健康状態並びに訓練の効果に少なからず影響すると思われる隊員の通常の食事についてその内容調査を全員に対して実施し、栄養バランス並びに食事傾向を分析した。調査期間:平成11年から平成13年の各12月








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