2 結果ならびに考察
(1)業務・訓練内容調査
[1]長期期間の分析結果
平成8、9年度の業務並びに訓練実施報告書に記載された業務並びに訓練の内容を種類、頻度等の視点から分析し、その中から業務内容のみを抽出しまとめたものが資料1「業務内容別頻度調べ」であるが、その内容をみると、吊り上げ、降下、揚収、潜水捜索がその主たるものであった。
また、訓練内容としては体力トレーニング、吊り上げ、降下、揚収、吊り上げ、リペ訓練、降下員訓練、氷下慣熟潜水訓練、機材慣熟訓練、潜水捜索、雪上行軍、要救助者搬送訓練、レンジャーサーキット、素もぐり結索、穴開作業、その他227種類の内容が記載されていた。
[2]詳細な訓練内容の分析
平成11年7月中旬から8月末日までの40日間に特救隊員が業務だけでなく自主的な訓練を含むコンディショニングプログラムとして実施した訓練内容は、調査に参加した隊員28名においてのべ1,519種目で、個人差はあるものの公休日、勤務日、待機日を含めて少なくとも一人一日1〜2種目の訓練は実施していることになる。また、その中でも高い頻度で実施されているものとして、ランニング156回、懸垂118回、腹筋102回、背筋76回、プッシュアップ75回、各種サーキットトレーニング44回、ディップ44回、ダッシュ37回、素登り37回などが挙げられ、その他にストレッチ、体操、水泳(スイム、クロール、素泳ぎ)、スクワット、立ち三段跳び、障害ドルフィン、ジョギング、300m走、登はんなど100種類以上の訓練を行っていた。
また、今回の調査の目的のひとつに業務日誌に現れてこないような各個人別のいわば通常における自主トレーニングを含めた隊員別のトレーニング状態を出来るだけ詳細に把握することが挙げられる。また、その際各隊員にどのような種類のどれくらいの強さの身体的負荷がどれくらいの頻度で架けられているかを明らかにすることが重要であることから、その主観的運動強度(以下RPEとよぶ)を記載してもらった。ここで比較的強度の高いと思われたいくつかの種目においてに、その種類別の頻度、時間、強度(主観的強度)を表1にまとめた。
表1 比較的RPEの高い訓練の頻度と時間
  |
N |
時間(分) |
RPE |
サーキットトレーニング |
44 |
20.49 |
16.41 |
  |
14.72 |
1.33 |
素登り |
37 |
14.45 |
14.65 |
  |
8.82 |
1.82 |
救出訓練 |
20 |
95 |
13.94 |
  |
57.32 |
2.13 |
縄跳び |
11 |
15.8 |
12.33 |
  |
9.26 |
2.78 |
100km行軍 |
9 |
774.44 |
18 |
  |
247.95 |
1.29 |
上段:平均値
下段:標準偏差
(RPE:主観的運動強度)
表にも示されるように、最も強度の高い訓練としては100km行軍が挙げられており、日常実施種目では各種のサーキットトレーニングが最も高く、その頻度はのべ44回、一回当たりの平均時間は約20分、その際のRPEはおおよそ16〜17とかなり追い込んだ訓練といえた。また、その他には素登り、救出訓練、縄跳びなども高いRPEを示す種目であった。
[3]実作業時の生体負担度の分析
次に業務並びに訓練の分析結果から比較的高い頻度で実施される業務内容並びに訓練について実作業の写真並びにVTR撮影を実施するとともに、その際の心拍数を継続記録しその生体負担度を分析した。その詳細については、「新潜水技法の導入に関する調査研究」のI〜IIIにまとめた。