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(2)費用負担の要請
 わが国が自ら規制し防止することは必ずしも容易ではないとすると、次に問題となるのは、費用負担による解決である。海洋投棄規制条約は、この点について配慮していないわけではない。第10条は、廃棄物の投棄が他の国の環境に損害を与える場合に、国家責任に関する国際法の諸原則に基づき、投棄についての責任の評価および紛争解決の手続を作成する旨、定めている。この規定が進展し現実化すれば、損害賠償という形などで、除去費用の負担を請求することは可能になるであろう。ただ、内水での投棄である、イ、ヘの場合は、条約の性質上、ここでも、適用範囲外であろう。
 これとは逆に、相手国の領海・排他的経済水域・大陸棚上での投棄は、領域使用の管理責任を基礎に管轄権行使の管理責任などによって、その範囲内となろう。公海・わが国の排他的経済水域での投棄も、船籍国・積出国の責任として構成される余地はある。しかしここでも、立証の問題は残される。船舶の特定と海域の特定を含めた投棄行為の特定の立証が必要であるが、極めて困難である。
 そして、現在のところ、賠償責任の問題は、当面国際協議の対象から外すこととされ、また、1996年議定書でも規定に基本的な変わりはない。
 損害賠償に関しては、バーゼル条約にも規定がある。その第12条は、廃棄物の越境移動と処分から生じる損害の賠償に関する議定書を作成する旨規定し、その点海洋投棄規制条約と類似している。しかし、こちらは1999年の賠償責任議定書として審議が結実した。そこでは、生命・身体・財産などの損害だけでなく、現状回復・未然防止措置の費用も対象とされている。したがって、越境移動の過程でなされたという特殊の場合には、適用が可能であるが、責任の主体は輸出者・処分者であることとともに、ここでの問題との関係で、現実には、やはり違反行為と行為者の特定という立証の問題が残されている。








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