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2 領海と外国船舶の通航権
(1)東南アジアの海賊・武装強盗の問題を考えるとき、その大半の犯罪行為は沿岸国の内水又は領海で行われている。しかし、沿岸国がこれを取締り、処罰することができない場合、結局、その犯罪行為は放置され、抑止効果を持たないことになる。この種問題に、国際法はどのような枠組みを備えていると考えるべきであろうか。この点について若干考えてみたい。
 
(2)領海に関する海洋法上のルールは、領海に対する沿岸国の主権と外国船舶の通航権との調整を図ってきた。領海においては沿岸国が領域主権を有し、そこでは沿岸国による排他的権能の行使が認められているが、他方、そこでは外国船舶は無害通航権を享受するものとされ、そのかぎりで沿岸国の権能行使は国際法上の規律に服することになる(国連海洋法条約第2条及び第17条)。そこでの主たる論点は無害と有害との区別であり、沿岸国は無害通航を妨害してはならないとされ(国連海洋法条約第24条(1))、沿岸国は自国領海内の外国船舶の通航を受忍しなければならない。無害通航権を行使する外国船舶に対して沿岸国が干渉しないことにより、通航権を保障するという枠組みであった。それは、消極的意味における通航権の保障であったということができる。
 それに対して、外国船舶の通航権を確保するために、沿岸国は積極的対応が要求されるのか、が問われなければならない。領海内における外国船舶の通航の安全を確保するために沿岸国に具体的、積極的措置をとる義務の問題である。この点に関する海洋法のルールをたどっておくことにしたい。








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