〔注〕
(1) サイガ号事件の即時釈放に関する判決については、青木隆「サイガ号(セント・ヴィンセント対ギニア)事件船舶釈放判決及び暫定措置命令」「法学研究」第91巻9号123-155頁。また、その論評としては、山本草二「沿岸国裁判権への介入とその限界―即時釈放の事例をめぐって―」「海洋法条約体制の進展と国内措置第2号」日本海洋協会(平成10年3月)131頁以下、牧田幸人「国際海洋裁判所の争訟権限と判決」「島大法学」第42巻2号118頁以下、青木「国際海洋法裁判所の発足と最初の事件」「清和法学」第5巻1号118頁以下参照。
(2) Judgment of The "Grand Prince" Case (List of cases No.8), International Tribunal for the Law of the Sea, 20 April 2001, para.95.
(3) カモコ号事件の判決については、青木「カモコ号事件(パナマ対フランス)船舶釈放事件」「法学研究」第73巻6号、83-101頁参照。モンテ・コンフルコ号事件の概要については、拙稿「船舶等の即時釈放をめぐる諸問題―ITLOSの二つの事例の検討を通じて―」海上保安協会「海上保安国際紛争事例の研究第2号」(平成13年3月)47-48頁注3参照。
(4) Judgment of The "Grand Prince" Case, para.60.
(5) 山本、前掲論文、131頁。
(6) Judgment of The "Grand Prince" Case, para.30.
(7) 買取価額は、45万ペセタとされる。Application for prompt release of fishing vessel "Grand Prince" under article 292 of the United Nations Convention on the Law of the Sea by the State of Belize, para. 1.
(8) Judgment of The "Grand Prince" Case, para. 32.
(9) Ibid., para. 34.
(10) 県単位で設置される裁判所で、訴額が3万フランを超える民事事件の第1審を管轄する。最高裁判所判例調査会編「世界の裁判所」(「海外司法ジャーナル」別冊)、1995年、76頁。
(11) Judgment of The "Grand Prince" Case, paras.35-42.
(12) 法定刑が2ヶ月を超える5年以下の拘禁又は18歳未満の少年の刑事軽罪事件の第1審を担当する裁判所。「世界の裁判所」(「海外司法ジャーナル」別冊)76頁。
(13) Judgment of The "Grand Prince" Case, paras.48-53.
(14) Application for prompt release by the State of Belize, paras. 18 and 31.
(15) Ibid., para.23.
(16) Ibid., paras.24-25.ベリーズの代理人は、船舶の所有者も船長も当該没収決定の正式の通知を受けなかったと主張した。Ibid., para. 26.
(17) Ibid., para. 37.
(18) Ibid., para. 50.
(19) Observations of the French Government regarding the application for prompt release submitted on behalf of Belize to the International Tribunal for the Law of the Sea concerning the vessel Grand Prince, p. 1 .
(20) Ibid.,
(21) フランスの理解によれば、「本案」とは、国内裁判所に提起された事件のまさしく「本質」を指すとされ、スペイン語正文がそれを明確に示しているとする("sin prejuzgar el fondo de cualquier demanda interpuesta ante el tribunal nacional"). Ibid., p. 2.
(22) Ibid..
(23) Ibid., p. 4.
(24) Judgment of The "Grand Prince" Case, para. 31.
(25) Rainer Lagoni, "The Prompt Release of Vessels and Crews before the International Tribunal for the Law of the Sea : A Preparatory Report", The International Journal of Marine and Coastal Law, Vol . 11, No.2 (1966), pp . 161-162 .
(26) 本条の起草過程については、栗林忠男「注解国連海洋法条約下巻」有斐閣(平成6年)282-283頁参照。
(27) Judgment of The "Grand Prince" Case, para.68.
(28) Ibid., para.69.
(29) Ibid., para.70.
(30) Ibid., para.72.
(31) Ibid., para.74.
(32) Ibid., para.77.
(33) Ibid., para.81.
(34) 本事件で、レイン裁判官は、その個別意見において、条約第91条につき極めて詳細な分析を行っている。彼は、第91条は、[1]旗国による国籍の現実の供与、[2]船舶の登録、[3]旗国の旗を権利として掲げることの3要素から成り立っているが、最も不変的な要素は登録だとする。そして第94条2項は、旗国が船舶の登録を維持することを要求しているとする。Cf. Separate Opinion of Judge Laing, paras.2-5.
(35) ベリーズの文書における「依然としてみなされる」という表現が不自然な創作、擬制であるとの非難は、トレベス判事の個別意見にもみられる。彼は、そうしたものは、条約第91条の意味における「登録」とはみなされないとした。Cf. Separate Opinion of Judge Treves, para.2.
(36) Judgment of The "Grand Prince" Case, paras.84-85.
(37) Declaration of Judge Wolfrum, paras. 3-4.
(38) Judgment of The "Grand Prince" Case, para.86.
(39) Ibid., para. 87.
(40) Ibid., para. 93
(41) もっとも、トレベス裁判官は、カモコ号事件判決(第46項)及びモンテ・コンフルコ号事件判決(第58項)で、ITLOSが、旗国としての原告国の地位は「当該事件の時点及び現在(判決時点)でも」争われていないと述べたのは、単なる事実の表明であって、(船舶の国籍の)決定時点という法的問題に関する裁判所の立場の表明と読むことはできないと述べている。裁判所は、原告国の旗国の地位の確定にあたって、船舶の拿捕の時点を決定的時点としているわけではないといいたいのであろう。Separate Opinion of Judge Treves, para.1.
(42) Dissenting Opinion of Judges Caminos, Marotta Rangel, Yankov, Yamamoto, Akl, Vukas, Marsit, Eiriksson and Jesus, paras. 1-5. 反対意見の裁判官は、裁判所が規則第77条に基づき、「争点となっている問題のあらゆる側面を明らかにするために、裁判所が必要と考える証拠を提出」するよう要請する権限を行使していれば、多数意見による不必要な推定の必要はなかったと主張する。
(43) Ibid., paras. 7-8.
(44) Separate Opinion of Judge Treves, para. 1.
(45) 青木「前掲論文(「清和法学」)」116頁。
(46) Declaration of Vlce-President Nelson, pp. 1-2. なお、ウォルフルム裁判官は、ベリーズ当局に国際条約等に違反する操業を行った船舶の登録抹消を認めるベリーズの立法を、漁業資源又は海洋環境のより効果的な方法のために革新的な方法で旗国の役割を強化したものとして称賛している。Declaration of Judge Wolfrum, para. 5 .
(47) Declaration de Jean-Pierre Cot, Juge Ad Hoc, para. 14.
(48) Ibid., paras . 9-15.海洋法裁判所における弁護士の役割を論ずるジャン=ピエール・コット特任裁判官の指摘は興味深い。この点は、そこでも引用されている、国際司法裁判所のコンゴ領域における軍事活動事件で、ベルギー人弁護士が代理人の資格でコンゴを代表したことを非難した小田裁判官の批判に通じるものがある。Cf. Declaration of Judge Oda in Armed Activities on the Territory of the Congo (Democratic Republic of the Congo v. Uganda), Request for the indications of provisional measures, Order of 1 July 2000.
(49) Separate Opinion of Judge Anderson, p.1.
(50) Public sitting held on Thursday, 5 April 2001, at 1500, at the International Tribunal for the Law of the Sea, pp. 7-8.
(51) Ibid., pp.9-18.
(52) Separate Opinion of Judge Laing, para. 10.
(53) Separate Opinion of Judge Anderson, p.3.
(54) Ibid..
(55) Ibid..
(56) Public sitting held on Thursday, 5 April 2001, at 1500, at the International Tribunal for the Law of the Sea, p. 13.
(57) Ibid..
(58) Declaration de Jean-Pierre Cot, Judge Ad Hoc, paras. 4-7.
(59) 栗林「前掲書」282-283頁参照。