2.事件の事実関係とフランスの国内裁判所の対応
本事件でベリーズは、冒頭紹介したように、異例にもスペインの弁護士アルベルト・ペナレス・アルバレス(A.P. Alvalez)氏を代理人に指名した。この指名は、ベリーズがいわば便宜置籍国で、名目上の船主はベリーズの会社になっているものの、受益船主(真の船主)はスペインの会社ではないかとの推測を成り立たせる。今回の事件では、一方で便宜置籍国ベリーズの対応のまずさと、他方でITLOSの即時釈放制度の下で何度も煮え湯を飲まされてきたフランスの対応の周到さが、好対照となっている。ちなみに、フランスは、代理人としてフランス外務省法規課次長フランソワ・アラブルン(F. Alabrune)氏を、保佐人としてジャン・ピエール・ケヌーデック(J-P. Queneudec)教授を、特任裁判官としてジャン・ピエール・コット(J-P. Cot)パリ第一大学名誉教授を任命した。その人選からみても、本事件に対するフランス側の並々ならぬ決意が感じられる。