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8.おわりに
 平成13年の一連の漁業法制改革では、「最近のわが国を漁業を取り巻く情勢の変化」や、「わが国周辺水域の漁業資源水準の悪化」への対応の結果としての法制度改正であることが、当局により繰り返し強調されている。また、政府当局は、今回の漁業法制改革が、国連海洋法条約の批准や、日中・日韓の新漁業協定の発効といった事柄を、情勢変化の第1の事柄として説明している。
 しかし、水産基本法以下の一連の法制改革や、漁業資源管理法制の変革を具体的に見るならば、海洋法によって沿岸国に法的義務として課された資源管理の国内法制化や、沿岸国の排他的経済水域における主権的権利の行政法令上の具体化といった要素よりも、在来の日本の漁業法制で仕組まれてきたものを現状適用的に改善するというレベル、立法技術的議論が中心になっている。
 また、今回の一連の法制改革は、現在の日本で進行しつつある地方分権改革・規制改革の動向が反映されているのであるが、漁業資源管理という意味では、たとえば地方分権改革がマイナスの要因となっているように思われる部分もある。沿岸国として、主権的権利が及び海域での漁業資源管理のシステムを、戦略的・統合的に行えるような法的仕組みの構築は、今般の制度改革では未だに実現されず、再び将来の課題として残されたように思われる。
 もちろん、それらの中でも、TAE管理制度の創設は、特定の魚種について、農林水産大臣レベルで一元的に漁獲努力量の限度を設定するという、日本の漁業管理法制上は画期的な仕組みということができるし、TAC制度を日本の現状に適合的なものに変化させたことなど、注目される要素が見られる。これらに加えて、水産基本法の現実の機能面を含め、平成13年の漁業法制改革の実施状況について、今後の動向にも関心を惹かれるところである。








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