(4)協定制度
資源管理法では、漁獲可能量の制度の担保のために、漁業者自身が主体的に漁業資源の管理を行うための手法として、協定制度を定めている。その趣旨としては、オリンピック方式による漁業管理の弊害(限られた枠を争って奪い合うこと)を漁業者が自主的に緩和すること、日本において従前から漁業者自身の自主的な話し合いによる資源管理(いわゆる資源管理型漁業)が行われてきたこととの連続性の確保、規制措置に頼るのではなく漁業者の自覚にまつことが行政のコスト面なども含めた漁業管理上望ましいこと、といった事柄が説明されている。
協定制度とは、関係漁業者が資源管理法13条3項に定める内容の協定を締結し、農林水産大臣または都道府県知事の認定を受け、その結果、認定された協定には、大臣または知事による協定アウトサイダーの参加承諾のあっせん(同15条)や、大臣または知事が協定目的達成のために必要な措置(漁業法等に基づく措置)を行うことを求める(同16条)、といった仕組みが組み込まれている。
協定制度は、TAC管理という枠組みは守りつつ、日本独自の漁業管理システムを動かすための仕組みとして、確かに注目に値する。また、法律の規定振りから、協定制度が、日本型の漁業資源管理のあるべき姿のひとつとして相当に重視されていることが分かる。
この点、都道府県レベルでの独自のTAC管理の可能性(秋田のハタハタなどで実績があるとされる)なども含めて、資源管理法によるTAC管理の仕組みは、国連海洋法条約を受けて一応TACの枠組みを導入しつつ、日本の地域性へ配慮したシステムになっている。そのことについて、水産学上の漁業管理論プロパーの評価を下す能力はないが、法的仕組みという観点から、資源回復のためにTACの大幅削減をするとか、TACと連動して漁業産業の大幅な構造改革を行うといった政策決定に対応するのは困難なシステムと言わざるを得ないであろう。協定制度をはじめとする漁業資源法の定めるシステムは、全体として、現状の漸進的な改善というやり方に適合した法的仕組みと評価することができるが、制度の基本的方向性を転換する(たとえば生態系保全といった観点を導入するなど)ことには適合しないであろう。