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(3)漁獲可能量管理の法的仕組み
 資源管理法7条は、基本計画・都道府県計画達成のための措置として、農林水産大臣・都道府県知事は、本法8条から12条に定められた措置のほかに、漁業法・水産資源保護法上の措置その他の必要な措置を講じなければならない、と定める。ここで、具体的に漁業法の規定を読み直すと、大臣・知事が、漁業権の免許への制限・条件の付与、漁業権の変更・取消し・停止、指定漁業に関する許可・認可の変更・取消し・停止、知事許可漁業に関する許可への制限・条件の付与といった措置を行うことになる。これは、本法の仕組みのスタンスとして、大臣管理量・知事管理量を的確に管理するために、既存の漁業法・水産資源保護法による必要な規制のための措置を用いる、ということによる。
 本法による管理の仕組みは、採捕の数量の公表(法8条)・採捕を行う者に対する助言・指導・勧告(法9条)、採捕の停止等の命令(法10条)を定める。これらは、TAC管理に関するオリンピック方式を前提とするものであるが、法11条は、農林水産大臣による指定漁業、都道府県知事による許可漁業について、個別の採捕を行う者別の割り当てを行うことを根拠づけている。なお、法12条は、漁獲可能量管理の実効性確保のため、違反行為に使用した船舶の停泊命令の仕組みを定めている。
 行政の行為形式論上は、資源管理法10条で、停止命令を農林水産省令ないし都道府県規則という命令(行政立法)の形式によることが定められており、命令の内容として当該魚種を「とることを目的とする採捕の停止」のみが例示されていることなど、特色のある内容となっている。
 他方で、停止命令に至る以前に、採捕数量の公表とそれに続く行政指導の仕組みを条文化することにより、停止命令はあくまでも最終的手段であって、実際には漁業者の自発的な行動への働きかけによるのだ、という立法者の強い意志が感じられる。しかし、行政手続法32条2項、同34条による行政指導の規定では、許認可等の権限を有する行政機関がする行政指導について、不服従の相手方を不利益に取り扱うことを厳しく禁止している。そうすると、資源管理法のように、公表→指導の先に最終的な強制措置を組み込んだ一連の仕組みと、行政手続法による行政指導の規制とが、必ずしも整合しないように思われる。資源管理法によるオリンピック方式の仕組みは、日本的な行政手法である行政指導を活用したものと見えるのであるが、行政法理論上は、いささか問題があると言わざるを得ない。資源管理法の助言・指導・勧告という法的仕組みが漁業管理に固有のものであるのであれば、行政手続法の適用除外を明文化するといった立法措置が考えられてもよいのではなかろうか。








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