(2)慣習国際法形成における意義
第二に、長期的・巨視的な視野にたてば、国連海洋法条約との関連を明定していない地域条約群や、国連海洋法条約の非締約国の国家実践が、慣習国際法の発展にとって意義をもつことはいうまでもない。それにとどまらず、国連海洋法条約の解釈・適用に関しても、これらの実践が、意義をもたないわけではない。たしかに、国連海洋法条約締約国の国家実践や「実施協定」とは「重み」その他において相違はあるであろう。しかし、国連海洋法条約との関連を明定していない条約群や国連海洋法条約の非締約国の国家実践は、国連海洋法条約が規律していないとか、一般的・抽象的な原則しか定めていない問題や、解釈の争いが存在する問題については、将来の発展の方向性を定めるあたって、一定の意義をもつことを当然には否定できないからである。
しかも、上記でみたように、国連海洋法条約の「実施協定」を「自称」する条約ではあっても、単純には、これらの条約実践を、国連海洋法条約の解釈・適用として解することはできない。そうであるとすれば、国連海洋法条約との関連を形式的に規定されている条約群と、そのような規定をもたない他の条約群との区別を、条約実践や国家実践の評価に際して、絶対的な基準とするべきではないともいえよう。