(2)考察対象の限定
いうまでもなく、船舶が享受する航行の自由の内容や程度は、水域によって異なっている。本稿では、近年の漁業資源の保存と管理に関する条約実践を中心として、公海および排他的経済水域上の漁船を主たる検討対象におくことにする。領海における、(漁船であっても他の船舶と同様に享受するはずの)無害通航権と漁業活動の規制との関係も、重大かつ難しい問題を含んでいる。ただ、領海は、海域の法的地位、沿岸国の権利、船舶が享受する航行の自由などの点で、排他的経済水域や公海とは大きく相違している。したがって、若干の基本的な点の確認を除いては、本稿では、領海上の漁船を直接の検討対象とはしない。