参考資料(1)ユニバーサルデザインに係る資料
(1)ユニバーサルデザインとは
[1]バリアフリー・デザイン
アメリカでは、1960年代前半に「バリアフリー・デザイン」の動きが起こった。これは、建物やその敷地の設計の段階で、アクセシビリティを確保するために物理的な障壁(バリア)を取り除くという動きであった。利用者として、歩行困難な杖や車椅子を使用する人が対象とされた。設計寸法の基準化が進められ、空間の設計が行われたが、杖や車椅子利用者以外の移動制約者への配慮は不十分であった。
[2]すべての人のための「ユニバーサルデザイン」
敷地や施設の計画・設計においては、これまで平均的な健常な利用者を対象として計画・設計してきた。
ユニバーサルデザインは、障害をもつ米国人建築家のロン・メイス氏によって提唱され、1990年代から広く使われはじめた考え方である。
ユニバーサルデザインは、「すべての人のためのデザイン」であり、建築物や道路、公園などのまちづくり、日用品などのものづくり、さらには、情報提供やサービス提供など日常の暮らしに関わるあらゆる分野において、年齢、性別、体格など人々がもつ様々な特性を超え、「はじめからできる限りすべての人が利用しやすい、すべての人に配慮した」環境、施設、製品等のデザインをすすめることである。
このように、ユニバーサルデザインの考え方は、すべての人が使うことができる汎用性の高いデザインを創り出していくことにあるが、現実的には、一つのデザインですべての人のニーズにこたえることはとても難しいことである。
[3]ユニバーサルデザインの7つの原則
ロン・メイス氏が提唱するユニバーサルデザインの7つの原則は以下のとおりである。
a.だれにでも公平に使用できること(特別扱いすることなく、同じ手段・方法で利用できる)
b.使う上で柔軟な対応ができること(使い方を選べ、自分のペースで使える)
c.簡単で直感的に分かる使用方法となっていること(複雑さがなく、さまざまな人の理解力や言語知識に対応している)
d.必要な情報がすぐ理解できること(視覚、聴覚、触覚に対してさまざまな伝達方法で情報を伝える)
e.うっかりエラーや危険につながらないデザインであること(危険やミスを最小限にする)
f.無理な姿勢や強い力なしで使用できること(肉体的負担を小さくできる)
g.接近して使えるような寸法、空間となっていること(体格、姿勢、可動性に無関係に利用できる)
(2)ユニバーサルデザインの情報提供
兵庫県の「福祉のまちづくり条例の改正検討に伴うユニバーサルデザインの視点からの整備基準のあり方に関する調査業務」(平成12年3月)では、サインなどによる一般的な情報提供や、障害者に配慮した非常時の情報提供について、ユニバーサルデザインの視点から以下のように整理している。
[1]サインの種類
サインとは、「環境の中での理解・行動に関わる情報伝達手段」である。サインは、[1]視覚に基づくサイン、[2]聴覚に基づくサイン、[3]触覚に基づくサイン、[4]嗅覚に基づくサインに大別される。視覚に基づくサインについては、伝達機能によって、記名、誘導、案内、説明、規制の5種類に分類される。
【視覚に基づくサイン】
誘導サイン
特定の場所や施設等への道筋を、矢印の表示などによって示す。
位置サイン
ここがどこであるか、あるいはこれが何であるかを示す。建築物自体のデザインによってそれが何であるか分かる必要はない。
案内サイン
利用者が行動を選択するのに必要な情報を提供するサインである。
【聴覚に基づくサイン】
視覚に頼った情報が入手できない視覚障害者には、聴覚、触覚、嗅覚に頼った情報伝達が必要になる。一般的には放送やチャイムなど、聴覚によるサインが用いられることが多い。
【触覚に基づくサイン】
視覚障害者に危険を伝えたいときに、聴覚だけよりも触覚に基づく情報も合わせて提供することが求められる。点字ブロックは触覚に基づくサインの代表的なものである。その他に、点字の文字表示などによる情報伝達も必要になる。
【嗅覚に基づくサイン】
聴覚障害者は日常生活の中で、通行路の途中にあるパン屋の匂いとか、喫茶店のコーヒーの匂いなどを独自のサインとして認識し、位置情報の確認手段としている。
[2]情報障害の特徴と対応
障害の違いなど、移動制約者の個別性によって情報の内容は異なってくる。移動制約者を車椅子利用者、視覚障害者、聴覚障害者、音声・言語障害者、知的障害者に大別すると、それぞれの情報障害の特徴や対応の方向は以下のようになる。
表参−1 情報障害の特徴と対応
障害の別 |
情報障害の特徴 |
対応の方向 |
車いす使用者 |
■手の届く範囲が限られる ■視線の届く範囲に限界がある |
■情報装置の位置を車いすにも対応できるよう高さなど工夫する |
視覚障害者 |
■視覚に代わる他の感覚によって確認する ■杖先に注意が集中し、足元より上部の確認がしにくく、突出している標識等に頭・肩・足などをぶつけることが多い ■弱視者は、明暗・原色の色の違い程度は識別できる |
■手や指や足の感覚によって分かるような指示を行う
■音によって指示を行う
■色、明るさを工夫する
■障害物を取り除き歩行空間の安全の確保と情報装置へのアプローチを楽にする |
聴覚障害者 |
■視覚を利用して確認を行う音響的手段では意思の伝達、及び情報の収集が不可能か困難である |
■案内板により施設の配置を明示する ■配置図・案内標識等により目的地へのアクセス性を高める |
音声・言語障害
知的障害者 |
■話すことによる意思の伝達や情報の収集が困難である |
■ピクトグラム(絵文字)による表示が有効である |
出典:サイン計画とまちづくり バリアフリー
(3)みんなのための公園づくり
「みんなのための公園づくり(ユニバーサルデザイン手法による設計指針)」(建設省都市局公園緑地課監修)では、「動線計画と自然環境との調和」及び「水辺計画」について、以下のようにまとめている。
[1]動線計画と自然環境との調和
(基本的考え方)
○公園内アクセスの計画は自然環境との調和を取りながら進める
○公園内アクセスが確保できない場合は、情報と代替手段を提供する
◆公園内のアクセスに関する情報とチャレンジ機会の提供
・車いすで行けるか行けない等の情報提供
・障害の多様性に対応したチャレンジの機会も提供する
・情報を適切に景況するためにサイン計画が重要
◆動線が確保できない場合の代替手段の提供
・「行けなくても見ることができる」視覚的アクセスの提供
近づきにくい場所を眺望できる展望所により、視覚的アクセスを確保する。
・魅力を集約した施設をアクセス可能地区に設置
・公園に関する情報の提供(各施設の情報を写真・ビデオ・音声案内等)
・主要施設付近の車いす使用者専用駐車スペースの設置
◆みんなの公園づくりに必要な新たなサービス
・園内を周遊する電気自動車等のサービス
・音声案内装置等の貸出し
・みんなに必要な情報をパンフレットにして配布
・ワイドタイヤ型車いす・電動三輪車の貸出し
・公園ボランティアの配置
[2]水辺空間
(基本的考え方)
都市公園における水辺空間は、幅広い年齢層のレクリエーションの場として高齢者や障害者等をはじめ、みんなが安全で快適に利用できるように配慮する
表参−2 水辺空間における設計上の配慮事項
項目 |
設計上の配慮事項 |
1. 水辺へのアクセス |
○河川の水辺空間は、堤防への傾斜路や水際の園路の整備により、高齢者や障害者等を水際に近づきやすくする。 |
○海岸では、緩傾斜護岸や傾斜路、ボードデッキ等の設置により、高齢者や障害者等も水際に近づきやすく移動しやすい整備を行う。 |
2. その他 |
○休憩のためのベンチを適宜設け、設置可能な場所には直射日光を避けることのできる四阿や緑陰を設ける。 |
○水辺空間の利用に関する情報(位置、範囲、配慮事項等)や注意事項を主要な公園案内板に表示し、必要に応じて展示表示、押しボタン式音声案内装置を設置する。 |
(4)大阪府福祉のまちづくり設計マニュアル(改正版)
[1]出入口
大阪府福祉のまちづくり設計マニュアル(改正版)では、出入口について次のような整備基準を示している。
出入ロ |
出入ロは、障害者が通行することができるものとすること。 |
(基準の解説) |
  |
1以上の出入ロは、次に定める構造とすること。 |
  |
・段差のすりつけ |
イ、高低差がある場合には、すりつけ勾配は8%以下とすること。 |
・・・・車いす使用者が登板しやすい勾配である。 |
・表面の安全性 |
ロ、平たんとし、かつ、滑りにくい舗装とすること。 |
  |
・幅員の確保 |
ハ、有効幅員は1.2mとすること。 |
  |
・車止め棚の適正配置 |
○出入口に車止め棚を設ける場合は標準90cmの間隔で設置し、その前後に1.5m以上の平たん部分を設ける。 |
・・・・車いす使用者が通行でき、かつ車両が公園内へ進入できない構造である。 |
[2]園路
園路については、次のような整備基準を示している。
園路 |
園路は、障害者等が通行することができるものとすること。 |
(基準の解説) |
  |
障害者等が通行することのできる出入ロと接続する1以上の主要な経路となる園路は、次に定める構造とすること。 |
  |
・幅員の確保 |
イ、有効幅員は1.2m以上とすること。 |
・・・・車いす使用者と人がすれ違える幅員である。 |
○分岐点やすれ違いを必要とする場合は、1.8m以上確保する。 |
・・・・車いす使用者同士がすれ違える幅員である。 |
・表面の安全性 |
ロ、砂砂利としないこと。 |
  |
ハ、平たんとし、かつ、滑りにくいものとすること。 |
  |
・排水溝の安全確保 |
ニ、園路を横断する排水溝の、ふたは杖、車いすのキャスター等が落ちないものとすること。 |
・・・・グレーチングの目が粗いと、杖、キャスター等が落ちて危険である。 |
・縦断勾配の確保 |
ホ、縦断勾配は8%以下とすること。 |
・・・・車いす使用者が登板しやすい勾配以下とする。 |
○園路の縦断勾配は4%以下とする。 |
・・・・園路の縦断勾配は4%(1/25)以下が望ましく、かつ、勾配が長く続く場合は平たん部分を設ける。 |
○3〜4%の勾配が50m以上続く場合は、途中に1.5m以上の平たん部分を設ける。 |
・縁石の切り下げ |
へ、縁石の切り下げ部分は1.2m以上とし、縁石と園路面との段差をなくし、すりつけ勾配を8%以下とすること。 |
・・・・高さ2cm以下で面取りしたものは段差とみなさない。 |
・手すりの設置
・視覚障害者誘導用ブロックの敷設 |
○必要に応じて手すりを設ける。 |
・・・・転落防止、移動補助のためのものである。 |
○危険防止又は利用者の誘導に必要な箇所には、視覚障害者誘導用ブロックを敷設する。 |