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(3) MRT2号線(建設中)
 2号線は、1号線のドロテオ・ホセ駅に近いレクト駅(キアポ地区)からサントーラン駅(マリキーナ地区)を結ぶ延長14km(途中駅9箇所)の路線であり、桁式高架橋(一部地下構造)・車両基地等を現在建設中である。複線・標準軌・直結軌道で、列車は、1両が約23mの普通鉄道車両(ヘビーレール車両)で4両1編成が予定されている。
 建設工事は1997年に開始され、2003年度中の開業を予定している。本プロジェクトはBOT方式が採用され、実施機関は1号線を建設・営業しているLRTAであり、建設費として国際協力銀行(JBIC)の円借款等が充当されて、片平エンジニアリング・インターナショナル、トーニチコンサルタント、住友商事、伊藤忠商事等の日本企業がコントラクターとして参画している。
 
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レクト駅付近の建設状況
 
 1号線のホセ駅で降り、レクト駅予定地からサントーマン駅予定地を過ぎて車両基地まで車で建設状況を視察したが、桁式の高架構造物は道路交差部のロングスパンの桁を除いてほぼできあがっていたものの、駅部や車両基地はほとんど構造物が立ち上がっていなかった。
 高架橋の桁は、短いブロック桁を工場製作して現地で接合する工法を取っているようであるが、出来栄えはよく、丸みを帯びた桁は景観的には柔らかさが感じられた。
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景観にマッチした高架橋
 
 今後の課題として、1号線、3号線との交差部は高架橋でオーバークリアーすることになっているが、やはりこれらの路線との結節駅が離れていることから、結節駅の利便性向上を図る必要があると思われた。
(4) PNR(フィリピン国鉄)
 PNRは、1892年にマニラ鉄道会社として開業し、最盛期には約1,300kmの路線をもち、バス事業、ホテル事業等の総合輸送サービスを行っていたが、1965年に国有化法によりPNRとなり、モータリゼーションの進展や鉄道施設の老朽化、台風や火山噴火等の自然災害などによって、現在では路線延長約480kmまでその規模が縮小されている。
 PNRの鉄道施設は、軌間1,067mm、37kg以下のレールが使用され、非電化でディーゼル機関車による客車牽引となっており、自動信号機は設置されていない。
 長距離輸送として、マニラ(タユマン駅)〜レガスピ間(480km)が1日2往復の運転本数となっており、また、マニラ首都圏の通勤輸送としては、マニラ(タユマン駅)〜アラバン駅(27km)が1日10往復程度の運転本数となっており、マニラ市中心部と郊外を結ぶ都市鉄道としての役割を全く果していない状況にある。
 これは、PNRの車両・施設が十分な維持管理が行われてこなかったために老朽化し、また、路盤が地平となっているため、線路内にスコッターが入り込んで、建物までも建てられていることにより、適正な速度で列車を運行させられない状況にあるためである。
 我々は、マニラの始発駅ツツバン駅からPNR本社のあるカロオカン駅までを視察したが、ツツバン駅は立派な駅舎が建設されたものの使用されておらず、その車両基地内にはスコッターがバラックを建てて居住し、次のタユマン駅はホームのない老朽化した駅で乗客が列車の入線を待っていたが、カロオカン駅はスコッターの子供たちの遊び場となっており、列車はほとんど運行されていない状況であった。また、JR東日本が供与した車両、分岐器等が使用されているのが確認できた。
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使用されていないツツバン駅とスコッターのいる車両基地
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タユマン駅で列車を待つ乗客
 スコッターの存在については、鉄道用地ばかりでなく墓地までにも及び、増加傾向にあることから、マニラ首都圏における大きな社会問題となっており、PNRの再建を困難にしているとの説明を受けた。このため、North Rail、PNR South Line(MCX)等のPNRリハビリ計画では、現在のPNRの路線を高架橋にすることによりスコッターを排除することを計画しているが、今のところ具体化されていない状況にある。








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