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(2) MRT3号線
 3号線は、マニラ首都圏の主要幹線道路であるエドサ通りの中央分離帯を利用して建設され、ノース・アベニュー駅(ケソン市)からタフト駅(パサイ市)に至る延長17km(途中駅11箇所)の路線であり、1999年12月に部分開業し、2000年7月に全線開業した新しい路線である。更に、現在ノースアベニュー駅から1号線のモニュメント駅までの延伸路線の建設を計画中である。路線は、高架・地上、地下、半地下部と複雑に上下する構造で、高架駅5、地上駅6、地下・半地下2駅、複線・電化・標準軌となっている。
 3号線は、旧首都として政府省庁、大学等があるケソン市をはじめとして、比較的新しく開発されたマリキーナ、マンダルーヨン市、パッシグ市、商業都市の中心としてのマカティ市、貿易センター、国際会議場、国際空港等が立ち並ぶパサイ市が沿線地域となっており、マニラ首都圏の核となるこれら地域は今後も開発が進められる予定になっており、これら地域間の移動のための交通機関として、今後需要が伸びることが期待されている。
 全線開業して1年経過したが、当初運賃が高かったせいもあり、5万人/日程度の需要しかなかったものが、運賃を値下げした結果需要が25万人/日となったことが、我々のマニラ滞在中の新聞に掲載されていた。
 このプロジェクトはBLT方式が採用された点に大きな特徴があり、首都圏鉄道輸送会社(MRTC:民間企業体)が資金調達・建設・施設保有をし、運営は運輸通信省(DOTC)が行い、25年間のリース料をMRTCに支払った後、鉄道施設はDOTCに移管される。
 建設費の資金調達として、日本輸出入銀行から最も多く借り入れており、日本の住友商事・三菱重工業連合がコントラクターとして建設・施設保守に参画している。また、チェコの輸出入銀行からも借り入れており、コントラクターとしてチェコの会社が参入し、車両を供給している。
 我々は今回、3号線を運営しているDOTCメトロスター急行事務所を訪問したが、事務所は、留置線、検修庫、車両工場、CTC列車指令所等を含む地下車両基地内にあった。
 車両基地は地上部に13万m2のショッピングセンターの建設を前提として、すべて地下コンクリート構造となっていたが、これほど広大な地下車両基地は日本にはない。MRTCの関連会社が開発事業を行うことになっているが、今のところ地上部は建設しないとの説明を受けた。
 
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広大な地下車両基地
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建物が建設されていない車両基地地上部
 
 3号線は車両長が100m程度で、1号線と同様に輸送力から見て短いものとなっており、LRTが車両の基本コンセプトとなっているが、ワンマン運転がしやすいものとなっている。
 インフラを含めた施設は1号線と比較して近代的なものとなっており、乗り心地がよく、車両も完全冷房化がなされており、寒く感じるほど冷房がよく効いていた。また、高架駅は1号線と比べ地上からかなり高く、交通弱者対策はまだ十分とは言えないが、それでも、ノースアベニュー駅ではエレベーターが、タフト駅では、エスカレーター及びエレベーターが設置されていた。さらに、3号線は1号線とは異なり、運賃は距離制で9.5〜14.5ペソ、運賃ごとに異なる窓口となっている売場で名刺大のカード切符を購入し、改札で切符を通してホームに入場し、降りる時はフリーパスとなっている。タフト駅では切符の自動券売機が設置されていたが、まだ供用されていなかった。
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エスカレータ及びエレベータ設置状況(タフト駅)
 
 3号線を視察して、課題として気がついた点は以下のとおりである。
[1]1例として、タフト駅では1号線の乗換駅とがデッキ等で結ばれていないため、一度地上に降りて再び階段を上らないと乗換えできないが、交通結節点における利便性向上対策をさらに行う必要がある。
[2]1号線と3号線の相互乗入れ等、今後の新たな建設線を含めた鉄道ネットワークの利便性向上を図る必要がある。
[3]1号線と同様に、駅前広場、バスターミナル等の交通結節点としての施設が整備されていない。
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3号線から1号線への乗換通路(タフト駅)








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