特別セッション SS2
造船およびメガフロートの溶接
ジャパンテクノメイト 杉谷祐司
本セションの今回の主題は「造船分野の最新溶接技術」であり,Bertil Pekkari(スエーデンESAB社)と杉谷による司会によって,造船溶接の自動化,CAD/CAM,ロボットシステム,バーチャルファクトリ,メガフロートなどの諸分野に関して海外3件,国内3件の講演が行なわれた.何れの講演にも多くの質疑,討論が活発に交換され非常に盛会であった.6件の講演の概要を以下に示し講演者に敬意を表したい.
Jukka Gustafsonn氏(フィンランドKvaerner Masa−Yards社)は”Modern Applications for High Quality and Productive Welding in the Kvaerner Shipyards”と題して,Turku新造船新,ヘルシンキ新造船所(以上フィンランド),Warnow Werft造船所(ドイツ),フィラデルフィア新造船所(米国)など,同社の各造船所の自動化溶接技術を分類し,エレクションの上向き自動GMAと鉄粉散布SAWなどのローコストオートメーション技術,接触センサ・メタルコアードワイヤを用いたガントリ式のタンデムGMA自動溶接装置によるステイフナ組立溶接の自動化,ガントリ式CAD/CAM統合化ロボットシステム,および開発中の視覚センサ付ポータブル型ロボットシステムなどによる小組立溶接の自動化,ダブルハルタンカー升目構造ブロックの立向溶接ロボットシステム,今年度12mの溶接テストを行なったレーザMIGハイブリッド溶接法のドイツ研究プログラム,アルミ構造客船の5mm厚デッキパネルヘのFSWの実用化などの状況を順次紹介した.最後に造船所への若年層離れ対策,ローコストオートメーションヘの回帰の重要性,また軽量化や品質要求の高まりなどを考慮すると高価ではあるがレーザ溶接の実用化などが現下の課題であると述べた.
Klaus Decker氏(ドイツESAB Cutting Systems社)は,”Modern Cutting Machines and Technique in Shipbuilding Industy”と題して,切断システムを構成する切断トーチ(ウォータインジェクション−プラズマ切断),マーキン装置(パウダ−式,プラズマ式,インクジェット式),表面研磨装置(グラインダ,ショットブラスト),新型のWindowsベースCNCコントローラの機能を順次紹介した.切断機は一定で良好な切断面・切断角度と切断寸法精度を保持し,さらに装置の故障は直ちに修理し,生産ロスを最小化しなければならない.従って機器の高性能化と制御システムが重要な役割を持つ.新開発のCNC−コントローラは切断パラメータがプログラム化され,さらに切断システムのモニタリング機能,サービス部門からのリモートアクセス機能,部材加工部門へのメッセージの送信,など切断システムを統合的に制御し,切断品質向上に寄与していると述べた.
Art van der Pol氏(オランダKranendonk Factory Automation社)は”Robot Integrated Welding Technology”と題して,同社が欧米,日本,韓国,中国などの造船所,海洋構造物,鉄構建設,ボイラ,自動車などに納入したロボットシステム技術は200を越える.導入例として,型鋼のロボット切断システム,造船小組立ロボット溶接システム,ダブルハルのロボット溶接システムを始め多くの実績がある.これらの製品の特徴は一品生産であり,この生産方式に対するコスト効果的なシステムは全体の統合化にある.独自開発のロボット用マクロプログラミングシステムARAC(Arithmetic Robot Application Control)はユーザのCADシステムに接続されてロボットのCAD/CAMシステムを構成する.さらに,ロボットシミュレーション・ネスティング・部材搬送などの管理システム,生産システムの監視・最適化システム,溶接電源に接続したセンサ情報にもとづくプロセスの品質評価・制御を行なうシステムなど広範に亘る統合化ロボットシステムの機能を述べた.
住友重機の山下泰生氏は”Welding and Cutting for Very Large Floating Structures”と題して,先ずメガフロートプロジェクトによる浮体モデルの建造実験のあらましをPR映画により紹介したが,鮮明な映像と音質が大会場によく合い分かりやすく効果的な演出であった.講演は,先ずモデル実験上の技術的問題として,1)浮体ユニット間の相対的な変位,2)昼夜間の温度差による変形と溶接変形に対する寸法制度の管理,3)水中の溶接および切断技術の確立,を挙げ1)はタグボートによる浮体ブロックの初期位置決め,機械的締結(ジャッキ,ターンバックルほか),ストロングバックの仮付・溶接,以上の施工手順を確立し,2)は日照および溶接による歪のF EM解析を行い,実験計測値と良く符合することを確認し,3)は溶接作業のドライ空間を確保する手順と溶接施工法を確立した.溶接は片面溶接法が主体で一部は両面溶接も用いた.また浮体ブロックの修理・交換のために水中切断技術も必要となるためエアカーテン式水中ガス切断機を開発し切断長1000m以上に適用した.以上の実験によってメガフロートの建造技術が確立されたと述べた.
NKKの勘定義弘氏は”Multi−Robot Welding System for Heavy Industry−Welding Path Optimization wit h Genetic Algorithm”と題して,同社が造船小組立パネル用に開発したマルチロボット溶接システムの適用状況を映画によって紹介した.16m×8mの定盤内にネスティング配置されたパネルを10台のロボットが分担して溶接する.これらのロボットの動作と溶接条件は,多品種部材に対して自動化されたオフラインプログラミングシステムいわゆるCAD/CAMシステムによって統合的に制御され,完全に無人化されている.問題は,ロボット間同士の干渉や衝突を回避することが前提条件であり,そのために相互のロボットが近接すると一方または双方のロボットを一次停止させるインタロック機能を設けているために,ロボットシステムの稼働率(アークタイム率)を低下させている.そこで今回遺伝アルゴリズム(GA)を用いた溶接経路の最適化を検討した.最大負荷のロボット(R6)のシミュレーションの結果,初期の溶接順序の場合に動作時間6987secインタロック回数13回であったが,インタロックは第5世代で解消し,41世代でロス時間がゼロとなり,最終的には200世代で動作時間6656secとなり331sec減少した.この計算時間は1GHzパソコンで50minであった,と述べた.
三菱重工の佐々木氏は,“Research on Total Cost Evaluation System for Shipyard”と題して講演した.この報告は,バーチャルファクトリを用いた造船の全コスト評価システムを確立することにある.講演者らがIMS Pro motion CenterのIRMA、プロジェクトにおいて開発したバーチャルファクトリは,製造を始める前の設計段階で生産プロセスを仮想現実の画面上に可視化して生産コストを評価するシステムであり,造船のコスト削減に効果的である.造船の生産コストは組立と運搬によって構成されるが,コスト削減には特に組立の手順(工作法)とその改善が重要となる.そこで,組立コストの削減と工作法計画の最適化を目的として1)組立手順の評価システム, 2)ブロック組立のデジタルモックアップシステム,および3)製造段階のバーチャルファクトリ,以上3システムを検討した.1)の評価システムは,バーチャルファクトリを用いたプロセス計画システム(CAPP)により組立とブロック運搬のコスト計算を実溶接長,作業の難易度などを考慮して,数例を比較し最良の方式を選択する.2)のデジタルモックアップシステムはCADとリンクしており,例えばブロック同士の組立の過程で部材相互の干渉が生じたら直ちに設計変更に反映する.3)では平板とステイフナの溶接作業を行う人間モデルを開発し,継手への歩行,しゃがみ,溶接作業,立上り,移動など人の動きを定義しシミュレーションによって作業の解析が可能になると述べた.
セッション MJ1,MJ2,MJ3
マイクロ接合I,II,III
秋田県立大学 大貫 仁
本セッションは11/21の午後及び11/22の午前中に行われ,全体で16件の論文が発表された.
MJ1では,1)韓国のC.S.Kang教授による招待講演[フラックスレスフリップチップボンデイングへの応用を目的とした種々のUBM構造のぬれ性の予測]があり,フラックスを用いた場合よりもぬれ性を改善できるUBM構造は無いが,ぬれ速度に関しては,フラックス使用の場合と同等のUBM構造としてAu(50nm)/Cu(100nm)/Cr(70nm)を見出すことが出来たという報告があった.続いて行われた一般講演では,2)3)マイクロマシン技術の基礎となるマイクロボールの操作方法(つかみ,移動,剥離)についての理論と実験からのアプローチ,4)MEAM(Modified Embedded Atom Method)を材料の表面現象解析に応用するための第一歩として,Metal Dimerの結合距離やSi Clusterの安定構造の計算,5)BGAバンプ接合部の健全性の超音波による評価技術,6)液体レジンを用いた自己整合はんだ接合技術,7)AuめっきNi板の微少抵抗溶接についての講演があった.
MJ2では,ドイツFraunhofer研究所のAschenbrenner氏による1)[ヨーロッパにおける電子デバイス用マイクロ接合技術のトレンド]についての招待講演があり,電子デバイスの発展にはパッケージ技術の一層の発展が必要で,このためにはマイクロ接合技術がキー技術になるという指摘があった.注目に値するのは,今後の最重要技術として,高集積,高速を目的としたポリマー基板へのSiチップの埋め込み技術が挙げられ,このためのマイクロ接合技術の研究が不可欠であろう.続いて,2)マイクロはんだ接続部のフィレットの形状認識, 3)マイクロソルダにおける形状及びぬれ力の解析,4)太線高温アルミワイヤボンディング技術,5)6)Ni−P/はんだ接合部の解析,強度変化についての講演があった.
MJ3では,1)中温はんだ(Sn−3Ag−8Bi−5Zn)とAu/Niとのぬれ性についての講演,2)微少接合部に生じたマイクロボイドの赤外線イメージ法による解析,3)鉛フリーはんだのひずみ変形引っ張り試験による熱疲労特性の解析についての講演があった.出席者は各セッションとも約30名程度とそれほど多くなかったが,活発な討論が出来たと考えている.次回の国際会議では,講演が飛躍的に増加し,これに伴って出席者も増加することを期待したい.
セッション MW1,MW2
溶接部の組織と特性I,II
住友金属 小溝裕一
本セッションは,材料の組織と特性を主題とし,合計13編の論文が提出,報告された.うち国外からの論文は2編であった.論文を内容により区分すると,微細粒鋼の溶接冶金関連が2件,溶接部の組織と機械的特性関連が5件,高合金鋼の溶接冶金(割れ性,ガス吸収特性)が4件および継手の疲労強度改善ならびにレーザ溶接金属の割れ感受性評価に関する報告が各1件であった.
微細粒鋼の溶接については,MAの生成挙動と溶接方法,HAZ軟化現象との関係について活発な議論が行われた.溶接部の組織と機械的特性については,内3件が高強度鋼に関する報告であり,注目の高さが伺われた.また,レーザ溶接金属の特性に関する報告があり,討議において靭性評価手法の困難さならびに評価方法の標準化の必要性が指摘された.高合金鋼の溶接性については,インバー合金の再熱割れとその防止に関する報告が2件なされ,割れの要因であるSの存在形態について,質疑が行われた.さらに,計算状態図を利用した高合金鋼の凝固割れ感受性予測に関する報告がなされ,質疑においては,歪,残存液相,凝固偏析の影響などについて活発に討議が行われた.加えて,レーザ溶接金属の凝固割れ感受性評価手法,低変態点温度をもつ溶接材料を使用した継手の疲労特性改善手法に関するこれまでにない新しい提案がなされたことが興味深い.
全体を通しては,本セッションでは,常に約50名の聴衆が参加し,終始活発な質疑応答方が行われた.
セッション SM1
表面改質とコーティングI
慶応大学 菅 泰雄
本セッションでは,主として溶射および溶射皮膜の特性に関する論文が7件発表された.溶射法としては,HVOF溶射法,ガストンネル型プラズマ溶射法,一般のプラズマ溶射法に加えて移行型プラズマによる肉盛法およびレーザハイブリッド溶射法などが紹介され,最近注目されている溶射法を一通り聞くことができた.溶射材料としてはジルコニア,酸化チタンなどのセラミックス,wc−12Coなどのサーメットが用いられていたが,NiTiの金属間化合物の溶射に関する報告が2件有り,目を引いた.出席者は15人と若干少なめであり,必ずしも白熱した討論が行なわれたと言う程ではなかったのが多少残念であったが,アカデミックな雰囲気のセッションであったと言える.
セッション SM2
表面改質とコーティングII
大阪大学 大森 明
このセッションは2日目午後にあり,レーザーを応用した溶射,クラッディング,表面処理,電子ビームによるクラッディングなどが報告された.
レーザーにより高温活性化された場に2種類の純金属ワイヤを導入し反応させて,TiAlとTiNiの金属間化合物を得る研究(T.Araki,Ehime Univ.),電子ビームによるCr3C2−NiCr材の成膜(クラッド)に関する研究(N.Abe, Osaka Univ.),原子炉材料であるNi合金のAlloy600にCrを富化したAlloy690をクラッドして応力腐食割れ感受性を緩和する研究(H.Onitsuka,JPEI),中性子照射を受けるステンレス鋼に対するレーザー表面改質技術(M.Ando,JPEI),インコネル718のレーザーアニールプロセスのモデル(L.Liu,Osaka Univ.)などが報告された.
セッション SM3
表面改質およびコーティングIII
大阪大学 中田一博
本セッションでは,一般講演のみ4件(1件欠講)の発表があった.その内訳は,金属の表面エネルギーに対する温度の影響に対する理論的取り扱い,A1およびFe粉末のメカニカルアロイング法による数十ナノサイズの結晶粒径を有するAlFe金属間化合物合成,無電解めっき法によるNi−Fe-P−B薄膜の結晶構造の制御とその磁気特性,NiおよびAl粉末を用いた反応合成法による球状黒鉛鋳鉄へのNiAl金属間化合物コーティングとその耐摩耗性および密着性の評価である.個々の講演は興味深く,質問も一般聴衆から出されたが,講演内容がそれぞれかけ離れていたためにセッション全体としての盛り上がりには欠けていた.
セッション FF1,FF2
摩擦圧接および摩擦撹拌接合I,II
大阪大学 池内建二
本セッションでの講演は9件で,国外からのものは招待講演1件であった.摩擦撹拌接合は,世界的に活発に研究・開発されているが,本シンポジウムでの講演数は4件に過ぎなかった.おそらく,本法に関するシンポジウムがTWIの主催で,同じ神戸で9月に開催されたことも影響しているのであろう.内容的には多様で,特別な傾向は見られなかったが,それぞれに新規性に富んだ興味深いものが多かった.
招待講演は,摩擦撹拌接合の数値シミュレーションに関するもので,この分野の先導者であるカナダのNorth氏により,アルミニウム合金の撹拌領域における流動現象の流体力学的数値解析と,その実験的検証の成果が紹介された.ここでは,(1)本法の加熱熱源として,従来いわれてきた工具肩部と接合材表面との摩擦発熱ではなく,撹拌領域での粘性流動がより重要であること,(2)advancing sideに非常に複雑な流線を伴う特異点が生じ,金属組織に反映されること,(3)合金によっては工具ピン表面に接する領域が固相線温度に達し,粒界に膜状の液相が共存する場合があることなど,示唆に富んだ見解が示された.
摩擦撹拌接合に関する一般講演としては,ECAP(Equal Channel Angular Press)処理を施された純アルミニウムに適用した場合,接合部における結晶粒の粗大化が阻止され,通常の溶融溶接法と比べて軟化が著しく抑制されることを示したもの,またマグネシウム合金AZ61に適用した場合,結晶粒径や硬さは母材部とほぼ同等であるにも関わらず,降伏応力が著しく低下することを見出し,その原因が接合過程において局所的に形成される集合組織(辷り面(0002)が引張方向に対して45°の優先方位を持つ)にあることを示唆するものが報告された.また,自動車車体のための点溶接用摩擦撹拌接合ロボットシステムを開発し,6000番系アルミニウム合金に適用して,従来の抵抗溶接と同等以上の静的強度を得た結果が報告された.
摩擦圧接については,鋼のパイプと薄板との接合に適用され,MAG溶接と比べて,低入熱,低歪み,かつ高効率で健全な継手が得られることが示された.異材接合については,アルミニウムとチタンとの金属間化合物層の成長過程を,高温顕微鏡中でその場観察し,ステップ状に成長が進行することを見出したもの,チタンおよびチタン合金と切削工具K10との凝着現象について検討するために,極く短時間の摩擦圧接を行い,界面反応との関係を考察したものの2件の発表があった.表面処理関係では,高速回転する工具をAl−Si鋳造合金AC4Cの表面に押当て,摩擦による加熱と高速加工によって生じる組織変化が調べられた結果,表面下1〜2mmの範囲で組織の微細化,鋳造欠陥の除去効果が認められた.また長期間供用された原子力発電プラントにおけるステンレス鋼の劣化部の低入熱補修法として,摩擦肉盛り法の適用の可能性が示唆された.
セッション PS1
生産システムと自動化I
埼玉大学 前川 仁
本セッションは,下記5件の発表が予定通り行われた.5件とも日本からの発表で,内訳は,大学・高専からの発表が4件,メーカーからの発表が1件である.内容は,PS1−1が腐食を考慮した大型溶接構造物のライフサイクル・シミュレーション,PS1−2が継手設計支援システムヘの提案,PS1−3が人工知能手法のデータベース検索への適用,PS1−4が人間工学的因子を考慮した溶接作業の検討,PS1−5がステンレス車両への自動スポット溶接システムの開発となっており,理論から実際の生産システム,構造物の設計から人間工学と,間口が広く,奥行きの深い内容となっていた.どの講演についても,フロアとの質疑応答が活発であった. PS1−1 Welded Joint Model with Considering of its Corrosion to Simulate Life−cycle of Large Scale Welded Structure,by Kazuhiro Aoyama
本研究では,溶接構造物のライフサイクル設計に適用することを目的として,溶接継手のバネ・モデルにより,腐食による継手の劣化を模擬する手法を提案している.板とステイフナによるモデル構造物を用いて数値シミュレーションを行い,腐食率とモデル構造物の最大変形などを計算し,その有用性を示している. PS1−2 Approach to Joint Design Supporting System,by Kunihiro Hamada
本研究では,継手設計支援のために,従来の形状モデルにとどまらずに継手情報,製品情報を包括的に扱うシステムを提案しており,溶接学会におけるアドホック研究委員会のプロジェクト報告となっている.システムの基本概念,設計支援のためのコンポーネント定義を示し,構築したプロトタイプシステムによって,継手設計の多段最適化が行えることを示した.
PS1−3 Self Propelling Artificial Intelligence Engine for Welding Database Query System,by Hideo Takechi
本研究では,キーワード・シソーラスのネットワークを検索する検索エンジンの動作解析から,これを,同様の構造をもつ有限要素法のメッシュパターンの認識・解析に適用する可能性を検討している.メッシュ認識のための推論法,AIエンジン「Excore」によるコーディングなどが示されている. PS1−4 Welding Work Planning Considering Physical Load,by Koji Nakamagoe
本研究では,従来あまり考慮に入れられなかった溶接作業者の生体学的・人間工学的側面に着目し,脊椎や腰部にかかる負荷と,それに応じた代謝エネルギーを考慮したヒューマン・モデル(人間モデル)を提案している.これを用いて,下向き溶接作業における各部の負荷と消費エネルギーの見積りを行い,作業の適否を決める因子として活用できることを示した.
PS1−5 Development of Automatic Resistance Spot Welding System with Servo Weld Guns for Stainless Steel Rail Car
本講演では,ステンレス車両製造ラインの効率化を目指して開発した,電動サーボガンによる自動スポット溶接システムについて報告している.電動サーボガンは,従来のエア・ガンに比べて,高速,高精度,コンパクト,低騒音などの利点があり,これをステンレス車両製造ラインに適用することで,車両製造における自動化を促進することができる.本研究では,そのための技術課題とその解決法,適用結果の評価などが示された.
セッション PS2
生産システムと自動化II
ジャパンテクノメイト 杉谷祐司
本セッションは,青山氏(東大),高野氏(日立建機)を座長として,最近のロボットシステム技術に関して5件の講演が行なわれたが,外国の出席者も多く会場はほぼ満席の状態で質疑,討論も自由闊達の雰囲気であり盛況であった.
今回の自動化セッションの特徴は,何れも「3次元CADにネットワーク接続されロボットプログラムを自動生成するシステム」,いわゆるCAD/CAMシステムを基軸とする多関節アーク溶接ロボットシステムの開発・適用に関するものであり,従来のレール式,台車型の自動機は影が薄れた感がある.熟練技能者不足,多品種少量生産など近年の経済・社会環境を反映して,自由度が高く効率的な多関節ロボットの活用が必然的になって来たと言うことであろう.ロボットシステムの適用対象例としては,造船のエンジン架構,ボックス構造物,鉄塔の相貫体,発電機の厚肉バケット,原子炉部品など多様で厚肉・大型・複雑・狭隘などの製品特徴を有する構造物であり溶接の難易度が高いものである.ロボットシミュレータが干渉の回避などに不可欠のツールとして用いられ,大型の移動式ガントリがロボットの外部軸として構成されているなども共通の特徴と言える.また光センサがロボットシステムの中で効果的に用いられている点も特筆されるものである.鉄塔相貫体のシステムでは円周多層隅肉溶接のウィービングや溶接条件の決定は,レーザスポットセンサによって各層毎に検出した開先断面形状の情報が基になっている.また,原子炉部品の遠隔補修溶接には2種類のCCD視覚センサシステムが用いられ,一つは開先と余盛ビードの形状を二方向から撮像し複視差方式の画像処理によって立体画像化して計測し,他の方式は,近赤外CCDを用い開先裏面の溶融状態を裏面からコニカルミラーを介して撮像し,溶融断面積が目標値に一致するように溶接電流のファジィ制御を行って裏ビード幅を最適化している.
セッション AW
先進溶接プロセス,寿命予測
安川電機 西川清吾
3日目午前中にあり,テーマが特定分野であったため,セッション参加人数は少なかったが,発表は興味のあるものであり,活発な論議があった.
AW−1:A Study on Welding of A Stud to Magnesium Alloy Sheet,by Hiraisi,Watanabe,Takano,Niigata Univ.
マグネシウムはビデオカメラ等の電気製品に最近よく使われる新材料であるが,アルミと比べても接合が困難な材料である.本発表は,マグネシウムのスタッド溶接に関するものであり,スタッド溶接におけるアーク時間が1.6ms以上と長い場合に溶接部の強度が低下して割れが発生することを検証し,このアーク時間がスタッドをぶっつけるGAPの大きさと,印加する電圧の大きさで制御されることを立証した.スタッド溶接そのもののマグネシウムに関する優位性と,割れ発生メカニズムとこの制御に関して,論議が深まった.
AW−2:Impulses Magnetic Pressure Seam Welding of Aluminum and Copper Sheet,by Aizawa,Yoshizawa,Tokyo Metoropolitan College of Technology
アルミも銅も溶接が難しい材料であり,通常のシーム溶接方式では接合することができない.本論文では,特殊なコイルを用いて,強し磁束を発生させ,アルミと銅を接合することを成功させた.合金層も数ミクロンと小さいため,強度の低下も小さい.本方式を用いた接合の合金組織と強度に関して,論議が深まった.
AW−3:Newly Undertaken Inspections and Repairs for Aged Nuclear power Generators,by Yamashita,Hitachi
原子力発電所を安全に長く使用するためには,検査が重要である.本論文では,レーザホログラフィで原子力発電所内の表面のキズを検出し,次に,レーザUTを用いて,キズの深さを検出する方式を紹介した.本方式は,現在,テストプラントでテスト中であり,数年後に実ラインへの適用を検討している.対象は,ノズルやパイプも含まれている.海外より原子力関係者が何名かセッションに参加しており,本方式の現状の進捗状況,今後の目標・計画について,活発な質問が出ていた.
4論文目はインドからのものであったが,発表者が不参加であり,キャンセルとなった.
セッション FE1
溶接継手の疲労・破壊強度評価I
大阪大学 南 二三吉
FE−1〜FE−3のセッションでは,溶接継手および溶接構造物の静的強度と破壊ならびに疲労特性評価に関する論文の発表が行われた.セッションFE−1は,1件の招待講演と6件の一般講演からなり,一般論文は特別セッション1(地震と溶接構造)に関連した内容のものが集められていた.
まず,J.G.Blauel(IWM,Fraunhofer Institute)による招待講演があり,アルミニウム(Al)のレーザ溶接継手の狭領域に存在する強度的ミスマッチが継手全体の強度特性にいかに影響するかについて,薄板試験片による溶接部各部の応力−歪挙動把握と,それに基づくき裂をもつ平板継手の強度特性の評価が紹介された.Alレーザ溶接継手の強度は,継手内の降伏強度の最も低下した領域の特性に支配されるという主旨の内容であり,これについて軟質部の相対寸法や継手幅の影響,薄板試験片と平板継手の荷重方向の違いなどについて質疑がなされた.
一般講演では,地震による繰返しおよび動的荷重が構造部材の強度とき裂発生に及ぼす影響,継手ディテールと構造性能の関係,溶接熱サイクルの強度・靭性への影響に関する発表が行われた.強度については,繰返し予歪と動的荷重の重畳効果を考えた建築構造用鋼の強度評価式が提案され,地震時の繰返し予歪と動的荷重は材料の降伏応力・引張強度を大きく上昇させるが,それらの重畳効果は各効果の単純和ほども大きくないことが示された.
地震時の応力集中部からの延性き裂の発生特性に関して,応力多軸度と塑性歪の2パラメータを用いた評価法の検討がなされ,繰返し荷重下の解析には複合硬化則が有効であること,内部からのき裂発生は主に応力多軸度支配型,部材表面からのき裂発生は塑性歪支配型であることが報告された.また,動的負荷時にも2パラメータ法の適用が有効で,延性き裂発生限界曲線は負荷速度や継手の強度的ミスマッチの影響を受けないことが紹介された.これらについて,延性き裂発生の材料組織感受性,形状的不連続による塑性拘束と強度的ミスマッチによる塑性拘束の相違などの討議がなされた.
継手ディテールと構造性能については,柱・梁接合部の変形性能に及ぼす各種梁端ディテールの影響に関する実験,柱部材の組立への部分溶け込み溶接の適用について発表がなされた.後者の発表について,部分溶け込み深さの影響や,部分溶け込み溶接部の破壊靭性評価の仕方について質疑が行われた.
また,柱・梁溶接部の強度と破壊靭性に及ぼす溶接熱サイクルの影響について,汎用解析ソフトSYSWELDを用いた解析列が紹介され,実溶接施工における推奨溶接条件決定への適用可能性などについて質疑がなされた.
セッション FE2
溶接継手の疲労・破壊強度評価II
大阪大学 南 二三吉
本セッションでは1件の招待講演と4件の一般講演があった(一般講演FE2−4は発表キャンセル).
まず,M.Kocak(Institute of Materials Research,GKSS)より招待講演がなされ,薄板試験片(厚さ0.5mm)を用いた構造用鋼レーザ溶接継手の変形・破壊評価,および,欠陥評価に対する欧州統一基準SINTAPの溶接継手への適用を中心にGKSSでの研究内容が紹介された.前者の薄板試験片は,レーザ溶接特有の狭領域での変質硬化領域の力学的特性を把握することを目的としたもので,後者の欠陥評価もこのような溶接継手で避けがたい母材と溶接金属の強度的ミスマッチの影響を含んだ内容となっている.ミスマッチを考慮した評価を行うことで,従来から指摘されている溶接継手の過度の安全側評価を排除できること,および,溶接金属を強度的オーバーマッチとすることで溶接金属内のき裂変形を抑制できることが発表の主たる骨子であった.これに対し, SINTAP手順におけるき裂成長の材料組織感受性の取り扱い,および,強度的ミスマッチが生む板厚方向の変形拘束の影響などについて質疑がなされた.
一般講演でもレーザ溶接継手の破壊特性が紹介されるともに,上記の質疑に関連した延性き裂成長の材料組織依存性,および,ワイブル応力を用いた破壊評価に関する研究が発表された.レーザ溶接継手の破壊評価は,シャルピ試験やCTOD試験を溶接部の各領域について行ったもので,レーザ継手のような強度的ミスマッチが著しい場合のシャルピ衝撃特性とCTOD特性の関連が議論された.
延性き裂成長の検討では,ボイド生成の核となるMnSの含有量を大きく変化させた2鋼種(フェライト・パーライト鋼)を用いた実験がなされ,ダメージメカニックスを駆使した解析により,き裂成長の限界ボイド率は,高MnS鋼では応力多軸度の増加によって減少するが,低MnS鋼では応力多軸度とほぼ無縁であることが述べられた.これに対し,本実験のような介在物体積率の少なし鋼に対する初期ボイド率の決定の仕方,2相組織鋼への歪支配型のボイド生成モデルの適用性などについて討議がなされた.
ワイブル応力を用いた破壊評価は,不安定破壊発生時のワイブル応力を材料固有の値とするもので,この破壊クライテリオンを適用してシャルピ衝撃特性からき裂材の破壊限界CTODを予測する研究と,超高強度鋼の水素脆性評価へのワイブル応力の適用に関する研究が紹介された.これらの発表に対し,シャルピ衝撃試験での脆性き裂発生の捉え方,水素脆化き裂の発生形態とワイブル応力クライテリオンの関連性などについて質疑がなされた.
セッション FE3
溶接継手の疲労・破壊強度評価III
大阪大学 村川英一
本セッションでの講演は8件であり,溶接法の影響について3件,低サイクル疲労に関する講演が2件あった.まず,自動溶接と手溶接の比較に関しては,手溶接の疲労寿命が長く,その原因として,溶接止端部の幾何学的形状の差が指摘された.すなわち手溶接では,ビード形状のゆらぎのため,止端部に沿って発生した複数のき裂の進展面の間にずれが生じ,このずれがき裂の合体直前のき裂進展速度を抑制することが長寿命の原因となる.同様に,レーザ溶接とアーク溶接の比較については,板厚が13-16mmの鋼材の突合せ溶接およびT型継手を対象に,レーザ溶接の優位性が示された.その原因は,余盛幅が小さいことに起因する低応力集中であり,一方,レーザ溶接の場合は鋼種依存性が認められ,溶接金属の硬化が著しい材料では,3軸応力度が上昇し,疲労強度が低下することが指摘された.さらに,大断面I型およびH型圧延型鋼を対象として,フラッシュ溶接機を開発し,試験を実施した結果,疲労強度は,余盛有り,無しの場合で母材強度のそれぞれ50%,75%であり,後者は,アーク溶接による突合せ溶接と同等であることが示された.
また,低サイクル疲労については,ガスパイプライン用鋼管の電子ビーム溶接継手の地震に対する疲労特性を実験とき裂進展解析に基づき検討し,周溶接において許容できる欠陥サイズを,ひずみ振幅0.5%,50サイクルの荷重下で比較すると電子ビーム溶接の方がアーク溶接よりも大きいことが報告された.超低サイクルの下での疲労寿命予測に関しては,き裂の進展速度および形状を与える二つの式に基づき,単純引張りおよび4点曲げ荷重下での寿命を予測した結果,実験値との良好な対応が得られた旨が報告された.
一方,材料の観点からは,疲労強度低下の原因である残留応力を圧縮にする方法としてマルテンサイト変態が室温付近で生じる低変態点溶接材料を開発し,角回し溶接部の補修溶接および溶接構造梁の例においては,それぞれ疲労限が2倍,疲労寿命が30%上昇することが示された.
その他,Angle Joint(傾斜継手)の疲労強度を有限要素法を用いて計算し,予き裂の位置や方向が疲労寿命に与える影響が大きいことが示された.また,底炭素鋼における疲労強度の切欠感受性に対する応力比の影響については,鈍い切欠きの疲労強度は材料パラメータである△Kdに支配され,応力比の影響を受けないのに対し,鋭い切欠きはき裂の開閉口を反映した力学的パラメータ△Kthに支配され,応力比の影響を受けることが示された.