海洋教室を終えて
広島地区小型船安全協会理事
荒牧 昭洋
はじめに
広島地区小型船安全協会では「海洋教室」を平成八年度に実施し、本年度、第二回目の順番がやってきました。振り返ってみますと、前回は、市内小学校の子供会を対象に実施したので、参加者の募集や連絡がスムーズにできました。しかし、海水浴場で実施する計画を立てたため、海水浴場の混雑を避けて、夏休み後に実施せざるを得なくなりました。シーズンオフの九月中旬の海水浴場は静かで、計画どおりのプログラムでロープワーク、釣り、体験航海など楽しい一日が何事もなく終わりました。ところが、帰りの船の中で子供たちに感想を聞いたところ、多くの子供たちが「楽しかったけど、泳ぎたかった」と答えたのに「ハッ」とさせられました。大人の考えた計画で行事は難なく終わりましたが、子供たちの「大好きな海を目の前にして泳げなかった空しさ」を思うと、あらためて企画の大切さを痛感し、反省させられました。
計画
今度こそは……と計画を始めました。日時、場所、参加者、内容などについて、それぞれ二〜三案を作り、組み合わせを変えながら検討することにしました。まず、参加者選びについては、会議や検討会などの機会をとらえて、参加できそうなグループに打診していく方法をとり「海洋少年団」と「海洋こどもエコくらぶ」の協力が得られることになりました。
子供たちが参加するので、時期は夏休み、場所は無人の絵の島と大筋が決まり、後は海上保安庁からの指導・支援が受けられる日時と体制などを参考に検討を進めました。
六月二十日と七月九日に関係者数名の参加をいただいて打ち合わせを行い、七月二十五日に本決まりの運びとなりました
計画の概要は「海洋こどもエコくらぶ」会員約六十名が参加し、八月十九日(日曜日、予備日なし)午前八時半宇品に集合広島港で「孤立者救助訓練」を見学した後、絵の島海水浴場に移動して「安全教室」「環境教室」「海浜清掃」などを行い、午後五時宇品で解散の予定でした。
台風接近
八月に入り、本格的に関係者との交渉を始め、依頼、契約など細部にわたる準備を一つ一つ進めて行きました。なかでも、無人島のため、テント、トイレの運搬・仮設などの交渉は大変でしたが、関係者のご協力により何とか設置するまでたどり着くことができました。
ところが、行事の前日になって「台風十一号接近中」とのニュース!!検討の結果残念ながら行事は中止することになりました。
早速、第二案の計画に取りかかり、「海洋少年団」のご協力をいただいて、九月十六日(日曜日、予備日なし)に実施することになりました。前回と同じように、細部にわたる準備を進めて行きましたが、実施場所など色々の都合により、行事内容の一部を手直しして、海洋少年団との合同訓練の形式をとることとしました。
本番
九月十六日は天候にも恵まれ、宇品波止場公園付近に子供三十人を含む八十五人と海上安全パトロール艇など五隻が参加して「海洋教室」を始めました。
「開会式」では、主催者を代表して私が挨拶をさせていただき、来賓として出席された(社)広島海洋少年団の字野忠義団長から挨拶をいただきました。
安全教室 救命用具装着実習
午前中は小安協が主体の訓練として「安全教室」や「救難訓練」などを行いました。先ず、全員が「応急手当の知識」についてのビデオを視聴した後、海上安全指導員の指導によりダミーを使用して、人工呼吸法、心臓マッサージなど入門体験学習をしました。引き続き、海上保安官の指導により、本結び、もやい結びなどの結索法、救命用具の取扱・装着方法などについて実習をしました。次に、参加者全員が海上保安部専用桟橋に移動し、海上保安官の「近距離もやい銃発射訓練」を見学しました。もやい銃は沖合漂流中の安全パトロール艇めがけて発射され、見事に的中、もやい索を繰り出し、訓練は大成功し、見学者から拍手が沸きおこりました。
ロープワークの実習
もやい銃発射訓練見学
昼食前のひととき、海洋少年団関係者は二班に分かれて、安全パトロール艇四隻に分乗し、沖合の金輪島一周の「体験航海」を楽しみました。子供たちは訓練のたびにカッターを漕ぎながら、快走するモーターボートを恨めしそうに眺めるだけでしたが、今回は主役、憧れのモーターボートに乗って走った経験は、いつまでもいい思い出として残ることでしょう。
昼食をはさんで午後は、海洋少年団が主体の訓練として「基本動作」や「手旗信号」などを行いました。子供たちは大勢の観衆を前にいくらか緊張気味でしたが、元気いっぱい日頃の訓練の成果を披露してくれました。
一連の訓練が終わったところで、訓練会場付近の清掃(ゴミ拾い)を行いました。波止場公園の植込みには、多くの空き缶や空きビンが投げ捨てられており、アッという間に用意したゴミ袋は一杯になりました。集められた大量のゴミを種類ごとに分別し、それぞれの袋に詰めて終わりました。
子供の日常生活が取り沙汰され、タバコ、空き缶の投げ捨てなど公徳心の低下が問題となっている昨今、制服姿で凛々しく訓練する態度やゴミ拾いに黙々と精出す子供たちを見て、何か救われるような思いがしました。
綺麗になった波止場公園で「閉会式」を行い、行事は無事に終了しました。
清掃
これぞ広島地区“小安協”の真髄
おわりに
今年の海洋教室は、当初の計画が台風接近に伴い中止になるハプニングがありましたが、参加者・関係者の皆さんのご協力により、無事に行事を終わることができましたことを深く感謝しております。
「行事の成否は、天候次第」とよく言われます。運動会、遠足、旅行などなど、何事も天気次第で天気がよければ八割方成功だそうです。行事の計画には予備日が必要です。しかし、参加者が多くなる場合は、それぞれ皆さんの事情がありますので、調整が難しくなり予備日の設定ができないのが実情です。そこで、状況の変化に柔軟に対応できるように二〜三案を準備しておくことが必要ではないかと思います。
今回は、天候にも恵まれ、海を愛し、海に親しむ大人と子供が一緒になって楽しい一日を過ごすことができました。皆さんどうもありがとうございました。