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月刊「吟剣詩舞」2002年3月号

 事業名 通信衛星による吟剣詩舞の普及振興
 団体名 日本吟剣詩舞振興会 注目度注目度5
吟詠家・詩舞道家のための漢詩史12
文学博士 榊原 静山
唐の国勢、詩壇ともに精気を欠く
晩唐―(1)
 文宗の大和年間西紀八二七年から昭宗の天祐年間約九〇五年まで晩唐にあたるが、この時代になるとさしもの繁栄を誇った唐の国勢も衰え、宦官がはびこり、君主の廃立がはげしくなる。民心は政府からはなれ、国の不安動揺がつづいて亡国の衰音がひびくような時代になってしまい、詩壇も精気がない。その中にあって独り数多くの名作を残したのは杜甫に対して小杜と呼ばれる杜牧である。
 
杜牧
 (七九六〜八五三)字は牧之、号は樊州、京兆(陜西省)の人で二十五歳で進士に合格し、以来役人になって五十七歳で没しているが、名門であるので小さいことにこだわらず、国家の前途を論じ、詩風も豪邁である。史実を詠じ時事を諷詠する傑作が沢山あり絶句が殊に得意で、“江南の春”だの“山行”は日本吟詠界になくてはならない作で、どこの会でも吟じられている。杜樊川集二十巻がある。“秦淮に泊す”もまた妙味がある。
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杜牧
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(語釈) 秦淮…南京の近くにある運河。秦の始皇帝が開いたもので、この河岸には酒屋や料亭が沢山ある風流なところになっている。商女…芸者。後庭花…陳の後主という人が作った曲で、後宮の宴遊に美女に歌わせた軽薄な曲とされている。
(通釈) さむざむと夕もやが立ちこめ、月が河岸の砂一面を白く照らしている。そんな夜、秦淮に泊ったが近くに料亭が立ち並んでいる。芸者たちは国が亡んだ恨みがこめられているとも知らずに、川を隔てて盛んに後庭花という曲を歌っている―。
 杜牧につぐ詩人は、李商隠と温庭である。
 
李商隠
 (八一三〜八五六)河南の人で字は義山、号は玉渓子。若くして官に仕えたが、政府自体が派閥の争いに明けてくれている時代のことで、彼もその中に巻き込まれて職についたり左遷されたり、不遇のまま旅先で病没した。李商隠は杜甫の詩に学んで、特に修辞の研究をなし、晩唐で一派を開いている。詩集六巻、文集五巻を残している。
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李商隠
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(語釈) 寄北…北の方にいる妻に書き送ること。
巴山…陜西省から四川省にまたがる山脈
(通釈) 君(妻)は私にいつ帰ってくるかと聞くが、まだその日はわからないのだ。私は巴山のふもとで、夜の雨が降りそそぐ池のところにいるのだが、いつになったらお前と二人であの西向きの窓際で、灯の芯を切りながら、私が巴山で雨の音を聞き、君を恋うているいまの胸のうちをお話ししてあげることができるだろうか―。
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「夜雨寄北」
 
温庭
 (八一二〜八七二)字は飛郷で若い時分から琴や笛が上手であった。役についたが専心せず、笛や琴にたわむれ酒を好み放縦な生活をしていた。作詩に優れ、実に艶麗な美しい詩を、しかも迅速に作るので有名である。八度手を組み合わせる間に八韻の詩ができ上ったというほどで、当時人から“温八叉”とたたえられ、“春江花月の夜詞”が有名であるが、長い詩であるので、瑶瑟怨という詩をあげておく。
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(語釈) 瑶瑟怨…瑶瑟は美しい琴のことで、美しい琴の音を聞いて、憂いに沈む女の心をうたったもの。氷簟…氷のように冷たい竹のむしろ。銀牀…銀で飾ったベッド。瀟湘…洞庭湖の南にある湖水。この付近は風景の良いところ。十二楼…仙女が住んでいたといわれる楼の名。
(通釈) ひややかな竹のむしろを敷き、銀で飾った寝台に身を横たえても、なかなか夢を結ぶことはできない。ただ水のような青空に夜の雲が軽く流れているのを見るばかりである。折から雁が鳴いて遠く瀟湘の地に向かって去り、あとには明月が皎々と、仙女の棲むといわれる十二楼を照らしているばかりである―。
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「瑶瑟恨」
 そのほかに高駢、許渾、陸亀蒙、鄭谷、段咸式、催魯、韋荘、李Uの名を挙げることができる。
 
高駢
 (八二一〜八八七)字は千里、幽州(河北省)の人で幼い時から文学を好み、初め朱淑明に仕えて司馬となり、出世して安南の都護から諸道行営招討使になり、渤海国王にまでなったが、部下に殺されてしまう。
 
許渾
 (七九一〜八五四)字は用晦、潤州丹陽(江蘇省)の人で、宣宗のとき監察御史に抜擢され、のちに睦州や郢州の刺史を歴任し、晩年、丁卯橋に隠棲し、丁卯体という独自の格調高い声律を創り出している。丁卯集二巻、五百三十一首が残っている。わが国の吟界でもうたっている“咸陽城東楼”はこの人の作である。また秦の始皇帝の墓で読んだ、つぎの詩もおもしろい。
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許渾
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(語釈) 竜盤虎踞…竜虎がわだかまりうずくまること。層層…重なりのびた形容。漢文…漢の文帝。
(通釈) 秦の始皇帝の墓は大きく竜が蟠かまり虎が踞くまっているようである。樹木は幾層にも重なり、その勢いは雲に入っているようであるが、これも崩れる時がある。これに反して青山秋草のうちにある漢の文帝の墓陵は、今も道行く人が徳をしたって拝んで過ぎていく。いくら外見をいかめしくほこっても、暴君の始皇帝の墓には誰も拝さないが、文帝の人徳には、墓は粗末でも、みんなが拝むのである、と立功は立徳におよばないことを詠じているのである。
 
陸亀蒙
 (〜八八一)字は魯望・蘇州(江蘇省)の人で、少年の頃から六経に通じたが進士には及第できず、正規の官吏にはなれなかった。のちに松江の甫里に隠棲して文才で名をあげたので、朝廷から左拾遺にとのお召しの声がかかったが、出仕前に没してしまった。唐甫里先生文集二十巻、松陵集十巻がある。
 
鄭谷
 (八四二〜九一〇)字は守愚、袁州宜春(江西省)の人で、伝説によると七歳のとき、すでに立派な詩を作ったといわれる。官は右拾遺から都官郎中にまで登った。晩年は隠棲して詩作に没頭し“芳林十哲”の一人としてあがめられている。鄭守愚文集三巻がある。この人の“鷓鴣”という詩が有名で“鄭鷓鴣”と呼ばれるほどであったが“曲江春草”という絶句もすぐれている。
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(語釈) 曲江…河の名。香輪…美人や公達の乗る美しい車。
(通釈) 花の落ちた曲江の堤の上には暖煙がむらがり、雨あがりの草の色が遠くあいつらなっている。この青々とした毛氈を敷きつめたような静かな草の世界を、美しい車の輪の輾む音を出して破らないで、遊人に心して酔うてここちよく眠るのをさまたげないでほしい。
 
段成式
 (〜八六三)字は柯古、臨(山東省)の人で父が宰相であったので、校書郎から九江の長官をつとめ、大常少郷という位にのぼり、のち襄陽に隠居している。読書好きの博識多才で、詩のほうも李商隠、温庭とともに晩唐の三羽がらすと呼ばれ、“酉陽雑爼”という仏教、道教から仙仏人鬼三十巻を書き、五十六首の詩が残っている。








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