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吟剣詩舞の若人に聞く   第四十三回
原 歩さん(十九歳)
●岡山県倉敷市在住
(平成十三年度全国剣詩舞コンクール決勝大会詩舞青年の部優勝)
師・・田中 恵山さん
宗家・・藤上 南山さん
(菊水流剣詩舞道本部)
詩舞は私の一部、好きだから今日まで続けてきた
 持ち前の明るさで、成長をつづける原歩さん。栄冠を手にし、さらなる飛躍が期待される彼女に、ご宗家を交え、詩舞のこと、コンクールのことなど、いろいろなお話をお聞きしました。
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原歩さん
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インタビューに笑顔で答える右より藤上南山宗家と原歩さん
 
全国大会には小さな頃から出ていますね?
原 「小学校五年生のときが初めてですから、そんなに小さなときからではありません」
始めたのはいつ頃から?
原 「小学校一年生からです。いとこが詩舞をしていまして、憧れから私も始めました」
いとこさんと、ずっと一緒に練習してきたのですか?
原 「はい、そうです」
宗家から見た原さんの印象はいかがですか?
藤上 「純朴で素朴で、良いのか悪いのかわかりませんが、大人びない子供のような感じですね」(笑)
幼年の部から出ているそうですが、そのときの成績は?
原 「三位でした。その次の年から少年の部に上がって、四年間コンクールに通いました」(笑)
上位になれない時の気持ちはどんなものですか?
原 「焦りとかはありませんでしたし、入賞することの方がビックリしたくらいです」
その頃の原さんの踊りはいかがでしたか?
藤上 「今もあまり変わりませんが、下手にはなっていないけど、急に上手くもなっていません(大笑)。いとことライバルで、いつもその子の方がひとつ上を行っていまして、少年の部で優勝することができたのは、それを励みにがんばってきた証でしょう」
いとこさんから吸収したものがありますか?
原 「タイミングや決め方が上手いので、学ぶものがありました」
少年の部で初めて優勝したときの感想は?
原 「ただ嬉しかったです」
コンクールと言うものをどのように思いますか?
原 「コンクールそのものではなく、コンクールに出るようになると必然的に練習量も多くなりますし、練習が多くなれば先生から吸収することも多くなります。そういうことが、とても楽しく感じます」
練習は好きですか?
原 「あまり好きではありませんが(笑)、練習がなければ上手く踊れませんから」(笑)
練習ではどのようなことを習いますか?
原 「週によって違いますが、最近は表情のつけ方をよく言われます」
表情が乏しいの?
原 「そうです」(笑)
藤上 「うちの子はみんな表情が乏しいです」(笑)
先生は田中恵山先生ですね、厳しいですか?
原 「はい、そうです。厳しいときもあれば、優しいときもあります」(笑)
青年の部で優勝しましたが、少年の時との違いは?
原 「青年では大人の踊りをしなければと言われていましたが、大人の踊り自体がよくわからず、それをつかむのに一生懸命でした。いままで子供っぽいと言われてきましたが、いまだにつかめていないと思います」(笑)
藤上 「大人の踊りとは内容表現がどこまでできるかですけど、大人でもなかなかできませんから、言うほうが無理かもしれません。でも、言わなければ始まりませんしね。あと、内面から美しさを出すことができるか。それは踊りだけではできませんが、この子はお茶もお花もしていますから、そういう面がにじみ出てくると良いですね。今のところにじみ出いてはいませんが」(笑)
優勝したとき恵山先生は誉めてくれましたか?
原 「宗家の振りのおかげよ、と言われました」(笑)
藤上 「厳しいです、めったに誉めませんから。優勝して誉められた人を聞いたことがありませんね。でも、内心は嬉しいと思いますよ」(大笑)
踊りで失敗したことはありますか?
原 「何度もあります。舞台の上で扇子を落としたり、転んだりしたこともあります」(笑)
自分の踊りの短所長所は何ですか?
原 「欠点は多々ありますから言い尽くせませんが、最近は目線が下がったり、表情が乏しかったり、メリハリがないとよく言われます。良いとこは・・・・」
藤上 「明るいところ。この上なく明るいですから、誰にでも好かれるタイプですね」(笑)
現在の原さんの踊りにアドバイスなどはありますか?
藤上 「誰にでも言えますが、下半身の鍛え方が本当に鍛えていませんね。昔、お稽古は鍛えることを目的としていましたが、今はお稽古事になってしまっているように思います。でも今の時代、それは言えないことだとも思いますが」
お稽古は鍛えることより、習う感じですか?
原 「・・・・・・・」
藤上 「さいわい、田中恵山は厳しいですから、強いものを要求したりしますね。その面では、他のグループよりは鍛えられているかもしれません」(笑)
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藤上南山宗家の指導を受ける原歩さん
 
青年の部の「越中覧古」は誰が選ばれましたか?
原 「宗家がうちの流派でと言うことで、皆さん同じ物をやられました」
何か意図があって選ばれたのですか?
藤上 「この作品は中国風なものでありながら、きつい所と柔らかな所の両面を持ち、ドラマとして観てわかりやすいと思い、また演じる方もやりやすいのではと考えて選びました。剣詩舞と言うものは抽象的なものがほとんどでして、一般の人が観てわかりやすい作品ならこれになりますね」
同じ物を皆さんが演じると言いましたが、人によって違いが出ますか?
藤上 「違いますね」
原 「表現の仕方も違いますよ」
藤上 「間のひねりも人によって違いますし、ひねり方によって面白みが出たり出なかったりします」
ひねり方などを要求されるの?
原 「はい」
藤上 「かなり要求されているらしいです」(笑)
自分の中で、それなりに成長していると思いますか?
原 「成長しているのでしょうか(笑)。小さな時は青年の部は大人だと思っていましたが、いざ自分がなってみると、思ったほど大人じゃないなと言う感じがしています。それに青年の部になって、もっと詩文の意味などを掘り下げないといけないと思っているのですが、目に見えるほどできてはいませんね」
藤上 「できていないと言うことがわかるのは、成長していることでしょうね」(笑)
原 「ありがとうございます」
青年の部で優勝した最大のポイントは?
原 「なんと言っても振り付けです」(笑)
藤上 「青年になると踊りだけではなく、ゴマのすり方も覚えるんでしょうか」(大笑)
題材としてご本人はいかがでしたか?
原 「とても好きな題材です。恵山先生が最初に踊っているのを観て、この踊りは良いなと感じました。第一印象が良かったので、今回はやりやすかったです」
今後目指す方向などはありますか?
原 「やはり、上手くなりたいですし、できることならお弟子さんを教えてみたいと思います。ずっと続けていきたいとも思っています」
続けていくと言いましたが、辞めようと思ったことはないですか?
原 「ありますけど、辞めようと思ってもリサイタルがあるとか、それが終われば次に何があるとかで、やらなければならない目標ができて、辞められませんでした。でも、それ以上に踊りが好きだと、自分で思います」(笑)
原さんにとって詩舞とは何でしょう?
原 「生活に染み付いたものです。踊りがあると言ったら、他の用事は入れませんし、遊ぶ予定があってもキャンセルします」
ご宗家のほうから原さんへ何かお言葉がありますか?
藤上 「道を極めるというのは、まだ早いですが、あまり余計なことを考えず、一生懸命がんばってもらえれば、それに越したことはありません」
最後に原さんから何かありますか?
原 「これからも、こんな私ですがよろしくお願いいたします」
本日はインタビューにお答えいただき、ありがとうございました。これからのご活躍を期待しております。
(尚、師の田中恵山先生はインタビュー当日、避けられない行事があり、出席できませんでした)








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