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平成十三年度 全国剣詩舞群舞コンクール決勝大会
 時: 平成十四年二月三日(日) 場所: 笹川記念会館国際ホール 主催: 財団法人日本吟剣詩舞振興会
舞うことの本質を問われた決勝大会
 二年毎に開催される全国剣詩舞群舞コンクール決勝大会が、平成十四年二月三日(日)、笹川記念会館国際ホールにおいて開催されました。それぞれの団体が栄誉ある優勝を目指して、日頃の精進を舞台上で遺憾なく発揮。観る者を大いに楽しませてくれました。
 
 当日は朝からあいにくの雨でしたが、会場となった笹川記念会館国際ホールには、足元の悪い中にも関わらず、多くの人が詰めかけました。群舞は独舞と違った味わい、芸術性を堪能させてくれる剣詩舞の形として、剣詩舞愛好家ならずとも大いに興味のあるところでしょう。その期待感が始まる前から十分に感じられる会場の雰囲気でした。
 平成十三年度の全国剣詩舞群舞コンクール決勝大会は、鈴木吟亮専務理事の開会の挨拶で始まりました。国歌斉唱、財団会詩合吟とつづき、河田神泉副会長が挨拶に立ち、開催のためにご苦労なさった関係各位や出演者にお礼とエールを送ったあと、笹川鎮江会長のお言葉を引用。「剣舞詩舞は吟詠の調べに合わせて、うたの心を体と技をもって表現する芸道であって、我が国伝統芸道の中でも民族精神の形成に大きな役割を果たしてきたばかりではなく、これからの精神文化の高揚においても大きな期待をかけられている芸道である」と剣詩舞の役割と意義を強調され、これからの剣詩舞のさらなる重要性、発展を語られました。
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審査結果を発表する入倉昭星常任理事
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開会の辞を述べる鈴木吟亮専務理事
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財団を代表して挨拶する河田神泉副会長
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コンクール終了後、講評する石川健次郎総合審査委員
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剣舞の部で優勝した大岡史帆チーム
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詩舞の部優勝・長澤仁美チームに大トロフィーが贈られる
 
 午前十時、コンクールの幕が切って落とされました。決勝大会は剣舞二十四組が午前、詩舞二十六組(内、一組欠場)が午後に行なわれ、それぞれに熱い戦いが繰り広げられ、一瞬たりとも観る者の心を舞台から離すことがありませんでした。
 当然のことでしょうが、この日のために練習を重ねてきた成果が大いに発揮され、どの組も統制が取れた美しい演舞を見せてくれました。先にも触れましたが、群舞は独舞と違い、一人が上手くても全体のバランス、調和が大切になってきます。皆の呼吸が合わなければ美しい群舞を演じることはできません。その意味でも、今回はレベルの高い戦いになったと思われます(協調性については、講評で問題点として取りあげられました)。そして、その厳しい戦いの中で見事に晴れの栄冠を勝ち得たのは、剣舞では愛知の大岡史帆さん、長坂紗織さん、荒谷早智子さんによる「楠河州の墳に謁して作あり」で、詩舞でも愛知の長澤仁美さん、松本幸子さん、神藤沙紀さん、松本典子さん、阿部沙織さんによる「天草洋に泊す」でした。剣詩舞に強い愛知を印象付ける形となりました。
 
 演舞が終了すると、審査結果の発表の前に、講評に石川健次郎先生が登壇し、次のようなことを話されました。
 ●演技とは関係ないが、剣舞では親子、兄弟、姉妹の親族そろっての出演が多く、これはいい傾向なので大いに奨励して、その輪を広げて、より多くの人に出てもらうようにしたい。
 ●剣舞の技術に関しては、独舞では一人でやっているため指の先まで神経が行くのに、群舞だと個性を抑えて調和を大切にし、細やかな演技がおろそかになっている。
 ●群舞において重要なのは人の個性なのか、全体の調和なのか、難しい問題だが、それをコントロールできるのは指導者であり、ここはそろえましょうとか、ここはもっと思いを入れましょうとか、注意して欲しいと思う。
 ●詩舞では「花月吟」「長安春望」は扇子が活躍するが、踊りを忘れて扇子を美しく並べることが主になっている。踊りが二次的な考え方になっている。踊りがあって扇子があるはずだ。
 ●剣舞でも詩舞でも、機械的に動いているのは踊りではない。人間の交流、心、作品の本質を表現することが目標であり、表現の大切さをもう一度考えて欲しい。
と、表現者たる剣詩舞家には手きびしいお話をされていました。しかし、次なるステップを目指すためには耳を傾ける内容であると痛感されました。
 講評が終わると入倉昭星常任理事から審査結果が発表され、入賞した組が呼ばれると、入賞した組は大きな、次々と舞台へ上がっていきました。その姿はりりしくも誇りに満ちた姿でした。そして、入賞者表彰では河田神泉副会長が各組に賞状を、鈴木吟亮専務理事が記念メダルを渡しました。
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役員、審査員が並び、閉会の辞を述べる?群華要常任理事
 
 ?群華要常任理事が閉会の挨拶をし、すべてが終了すると、これまで熱気に包まれていた会場にも静けさが訪れました。入賞した組も、そうでなかった組も、二年後、笹川記念会館国際ホールで開催される群舞コンクールに向け、明日からまた精進が始まることでしょう。それにつけても、芸道とは終わりなき道なのだと感じさせられた一日でした。
 
◎決勝大会優勝者、その喜びの声
 【剣舞の部(愛知)】
 大岡史帆さん、長坂紗織さん、荒谷早智子さん
 「嬉しいです、念願の剣舞での優勝ですから。今日は最高のできで、これ以上はできないと思うくらいにできました。これから帰って打ち上げをしたいです。皆さんに、いろいろ応援していただき、本当にありがとうございました。これからも私たち、がんばっていきますので、心から見守ってもらいたいと思います」
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喜びの剣舞優勝・大岡チーム
 
 【詩舞の部(愛知)】
 長澤仁美さん、松本幸子さん、神藤沙紀さん、松本典子さん、阿部沙織さん
 「胸が一杯で言葉になりません。今日は自分たちが思っていたよりも、演技に対してあまり元気がないなと終わったあと感じていましたので、こんな大きな賞をいただくとは思っていませんでした。私たちはお扇子が苦手で苦労しましたが、皆で一生懸命練習しました。その甲斐があって嬉しいです」
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喜びの詩舞優勝・長澤チーム
 
平成十三年度全国剣詩舞群舞コンクール決勝大会入賞者氏名(敬称略)
〔剣舞の部〕
優勝=大岡史帆、長坂紗織、荒谷早智子(愛知県・北辰神明流分家剣詩舞)
第二位=藤野代志乃、藤野舞、藤野綾(福岡県・日本壮心流)
第三位=大野晶子、鈴木宏実、長坂理絵(愛知県・北辰神明流分家剣詩舞)
第四位=坂上晃、荒木美津、前田大輝(兵庫県・大日本敬天社道場総本部)
第五位=永吉龍一、津久井翔、若目田有紀(栃木県・神刀無念凱山流)
第六位=今泉信行、永井聡多、妹尾勇一(愛知県・日本壮心流昭武館総本部)
〔詩舞の部〕
優勝=長澤仁美、松本幸子、神藤沙紀、松本典子、阿部沙織(愛知県・日本壮心流昭武館総本部)
第二位=入倉仁美、山本薫、山本直子、河野佳代、石川公江(愛知県・日本壮心流昭武館総本部)
第三位=今脇真弓、浅利健代、内藤栄子、根木迪子、奥田悦代(岡山県・菊水流剣詩舞道本部)
第四位=宇高由貴、原歩、梶原いずみ、三宅由里子、中平次美(岡山県・菊水流剣詩舞道本部)
第五位=近藤聡司、山内雄太郎、太田康夫、尾嶋美紀、中川真生((愛知県・北辰神明流分家剣詩舞)
第六位=押尾あや子、斉木明子、星野久美子、日南田きみ子、山田幸代(東京都・静山流静慧会)
第七位=南城日出氏、友井川泰子、安田倫子、大石知頭子、友井川真佐美(兵庫県・青柳流剣詩舞道神武館道場)








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