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吟剣詩舞の若人に聞く   第四十回
藤野 舞さん(十七歳)
●福岡県飯塚市在住
(平成十三年度全国剣詩舞コンクール決勝大会剣舞少年の部優勝)
妹・・藤野 綾さん
母・・藤野 代志乃さん
父(師)・・藤野 昭錬さん
(日本壮心流剣詩舞道九州昭武館館長)
晴れの栄冠を手に、さらなる飛躍を目指す
 平成十三年度全国剣詩舞コンクール決勝大会剣舞少年の部優勝までの険しい道のりも、持ち前の明るさとひたむきさで乗り切った藤野舞さん。ご家族全員が剣詩舞をたしなむ環境の中で、剣詩舞のこと優勝のことなどをお聞きしました。
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藤野 舞さん
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インタビューでにこやかに答える写真左より師で父の藤野昭錬九州昭武館館長、藤野舞さん、妹の藤野綾さん、母の藤野代志乃さん
 

いつ頃から剣舞をしているの?
舞 「三歳頃からです」
指導者は父の昭錬さんですか?
舞 「はい、そうです」
館長は小さな時からさせようと思っていたのですか?
昭錬 「そうですね。この子が三歳といいましたが、本格的に始めたのがそれくらいで、舞台に立ったのは二歳くらいからです」
お母様もなさっているのですね?
代志乃 「しております」
お子さんにさせようというのは館長と同じでしたか?
代志乃 「はい、同じです」
生まれた時からする運命なんだ?
舞 「はい(笑)、そうですね。気づいた時はしていましたから、剣詩舞には違和感がありませんでした」(笑)
父が指導者でやりづらくないの?
舞 「時々あります。普段の姿を見られているので、感情を入れて踊る場合など、目の前にいるとやりづらいことがあります」(笑)
娘さんを教えるというのはいかがですか?
昭錬 「自分では他の生徒さんと変わらないように心がけていますが、どうしても厳しくなることがあると思います。例えば、何人かで稽古をしていて、他の生徒さんを叱ることができないとき、この子を叱って他の生徒さんを諭すということがありますから」
それは辛いよね?
舞 「はい、そうですね」(笑)
妹さんの綾さんはいつからしているの?
綾 「初舞台は一歳半からです」
兄弟でしているというのはどんなもの?
綾 「やはりライバル心が生まれます」(笑)
舞さんの得手不得手というのは何ですか?
舞 「父と母からは、踊りが大きいと言われます。細かさがないので刀などが雑になり、切れ味が良くないようで、その点は直したいと思っています。得手というか、最近は芝居みたいな感じで演じられるようになってきたことでしょうか」
指導者として舞さんを見ていかがですか?
昭錬 「本人も言っていましたが、動きについて良く言えば大らかに大きく動けているのですが、もう少し細かなところが繊細に動けたら、もっともっと伸びると思います。願わくは、たおやかさが欲しいですね」
舞さんは性格的に大雑把なほうなの?
舞 「はい、そうです」(大笑)
お母様から見られていかがですか?
代志乃 「私も館長と同じことを感じます」
妹さんから見てどうですか?
綾 「自分に持っていないものを姉は持っていますが、姉が持っていないものを、自分にはあると感じます」
自分に持っていないものとは大雑把さで、姉になくて自分にあるのは繊細さ?(笑)
昭錬 「そういうところはありますね。下の子はもう少し大きく動けたらと思います(笑)。最近はお互い同士で稽古を見ているようですね」
これまでに辞めようと思ったことはありますか?
舞 「小さい時は遊ぶ時間がないので、嫌だなと思ったことはありますが、今は好きですからありません」
本当ですか?
舞 「はい」(笑)
   ◎   ◎
コンクールについて聞きます。
舞 「はい」
なかなか苦労しているみたいですね?
舞 「はい、六回かかりました」(笑)
優勝の瞬間はいかがでしたか?
舞 「信じられませんでした」
優勝できた原因は何だと思いますか?
舞 「先ほども言いましたが、剣舞が本当に好きになったことだと思います」
好きになった、その理由は何ですか?
舞 「いろんな人と知り合い、互いに刺激しあって、しだいに剣舞が面白くなったと言いますか、好きになってきたのだと思います」
館長から客観的に見て優勝の原因は何ですか?
昭錬 「剣舞について、私の説明を頭ではわかっていたのでしょうが、心の中から頷けるところまで行っていなかったのでしょう。それが人の舞台などを見て、自分の中でスッキリ整理できてきたのではないかと思います」
それ以外に理由はありますか?
舞 「今回は気迫が上手く出せ、悔いのない踊りができたと思います。とにかく無心でした」
綾 「今までになく、肩の力が抜け、整った綺麗な踊りだなと、私は感じました」
ところで綾さんはどこまで行きましたか?
綾 「剣舞幼年の部で二位になりました」
次は優勝だね?
綾 「・・・」(笑)
お母さん、笑っていられませんね?
代志乃 「いつ振られるかと思っていました(笑)」
私自身は今年は剣舞一般一部で三位でしたから、次はがんばります」
演題はどのようにして選ばれましたか?
昭錬 「これは日本壮心流三代目宗家の入倉昭山先生が、舞にはぜひこれでと薦めてくださいましたので、やらせていただきました。振り付けも三代目が自信を持って付けてくださり、大変ありがたく思っております」
舞さんはコンクールというのをどう思いますか?
舞 「自分の力を試す場所だと思います」
コンクールなどの舞台はあがるほうですか?
舞 「あがりますね。最近とくに感じます。親が言うには欲が出てきたからだそうです」
家族全員で剣詩舞をするのはどんな感じですか?
舞 「とくに息苦しさとかは感じませんし、剣詩舞を離れれば普通の家族ですから」
今後どんな剣舞をしていきたいと考えていますか?
舞 「もっと練習して、踊りを上手くし、いろんな舞台に立ち、いろんなお客さんに見てもらい、その人たちが感動するような踊りを目指したいです」
綾さんの今後の目標はありますか?
綾 「まず優勝して、姉と同じレベルになり、もっと競い合って上手くなっていきたいです」
姉が優勝したのを見て、正直な感想は?
綾 「やはり悔しかったです」(笑)
昭錬 「この二人はお互いに認め合っているようですね。良いところ悪いところを、自覚しあいながら認めあっていますし、それでいてライバル心があり、いい関係だと思います」
大学へ進学希望だそうですが、それでも剣詩舞は続けますか?
舞 「はい、続けます」
すてきな男性が現れて、違う世界の方が楽しいよと言っても続ける?
舞 「こちらに、その人を引き込みます」(大笑)
館長からアドバイスなどはありますか?
昭錬 「先ほども言いましたが、長所である大らかさをどんどん伸ばし、それにプラスして感情表現を上手にし、人に伝えられる技術を身に付けてもらえれば、これ以上言うことはありません」
お母様からは何かありますか?
代志乃 「私のほうがアドバイスされていますから(笑)」
妹さんは?
綾 「今のところはありません」(笑)
最後に舞さんから、何かありますか?
舞 「いろいろ言われるとプレッシャーを感じますね(笑)。とにかく若い人に剣詩舞をしてもらいたいです。同じ世代の人が少ないので、若い人に剣詩舞の魅力をもっと知ってもらいたいです」
今日はお忙しい中をインタビューにお答えくださり、ありがとうございました。これからのご活躍を期待しております。
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九州昭武館の道場で演技指導する右より師(父)の藤野昭錬館長、藤野舞さん、妹の藤野綾さん








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