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平成十三年度全国吟詠コンクール決勝大会
●平成十三年九月十五日(敬老の日)
●笹川記念会館・国際ホール
 後援: 文化庁、NHK
 主催: 財団法人日本吟剣詩舞振興会
 
歓喜、無念、拍手、沈黙。悲喜交々の決勝大会
 
 吟詠コンクールの頂点、財団主催の平成十三年度全国吟詠コンクール決勝大会が笹川記念会館で行なわれました。全国の厳しい予選を勝ち抜いてきた総勢150名が、この日のために精進に精進を重ね、その結果が問われる緊張の一日。果たして結果はどうなったのでしょうか。
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開会セレモニーで、起立して国歌を斉唱する会場の皆さん
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審査委員が舞台に並び、結果を発表する河田神泉審査委員長
 
高まる緊張に挑む競吟者たち
 
 新世紀初の全国吟詠コンクール決勝大会とあって、始まる前から会場は熱気に包まれていました。鈴木吟亮専務理事の開会の辞で、大会の幕が切って落とされました。国歌斉唱、財団会詩合吟とつづき、河田神泉副会長が「ニューヨークの悲惨な出来事に見られるように、何が起こるかわからない世の中ですが、伝統を受け継ぐ誇りを持って、今日は力の限りがんばってください」と競吟者へ財団を代表してエールを送りました。そのあと競吟実施要綱の説明や審査員が紹介されると、決勝大会へと舞台を移しました。.
 午前中は幼年の部、少年の部、青年の部、一般三部が行なわれ、熾烈な予選を勝ち抜いてきた競吟者が厳しい審査に挑みました。幼年の部は、皆が幼年らしい素直で屈託のない、聴いていて楽しい吟がつづきました。その中で優勝したのは五番の「九月十日」を吟じた大原侑実さんでした。しっかりした音程、練習を重ねたと思わせる立派な吟法などが評価されたのでしょう。少年の部は、十八番の荒崎春奈さんが「春夜」をけれんみのない吟詠で聴かせ、栄冠を勝ち取りました。青年の部は、どの競吟者を聴いても、持てる才能を感じさせる素晴らしい吟詠がつづき、その中で優勝したのは「九月十三夜陣中の作」を吟じた、林綾香さんでした。その安定感のある吟詠は見事でした。一般三部はベテランらしい味わいのある吟詠がつづき、いずれも心に染み渡りました。優勝は馬場圭一郎さんが果たし、吟題は「秋浦の歌」でした。長い経歴と経験、日頃の精進がこの日に結実し、見事に大輪の花を咲かせました。
 
喜びにわく決勝大会のフィナーレ
 
 午後は一般一部と一般二部が行なわれました。心身ともに伸び盛りにある一般一部は、さすが厳しい地区予選を勝ち抜いてきた面々だけに、聴き応え十分の舞台が次から次に繰り広げられました。その中で晴れの栄冠を手にしたのは、「秋思」を吟じた長山祝子さんでした。つづく一般二部は、さすがと思わせる吟詠が多く、訪れた愛吟家の方々を魅了し、感動させていました。そして、喜びの優勝を果たしたのは、「訣別」を立派に吟じた長谷川照子さんでした。すべての審査が終了すると、河田神泉副会長による講評が発表されました。その内容は次のようなものでした。
 
●タイムオーバーが一人もいなかったことは、かつてないことで素晴らしい。伴奏集ができたことも関係していると思われる。ただ、後奏が鳴っているのに、先に終わっている人がいたが、これには注意して欲しい。
●アクセントは、幼少年については鼻濁音ができていない。たとえ子供であっても鼻濁音は大切なので、しっかり指導して欲しい。鼻濁音を覚えることで、言葉が円やかに美しく聞こえるから。
●音程については、青少年は全体的に良かった。良くなかったのは一般の方々で、少しずれても曲が鳴っているので合わせていく人が多いが、初めから終わりまで、はずれたままで吟じた人も何人かいた。伴奏に乗って吟じて欲しい。
●吟で一番大事なのは、言葉をはっきり言うこと。何を言っているのかわかるように、明瞭な言葉で吟じて欲しい。言葉の初めが、はっきりしていない人がかなりいた。その指摘は各先生が言っていた。まず言葉をはっきり、次にいい声で、いい節で吟じるのが、吟詠だ。
 など、なかなか厳しい講評が飛び出し、コンクール審査の質の高さを窺い知ることができました。
 その後、審査結果発表、入賞者表彰が行われ、表彰式では華やかな雰囲気の中、河田神泉副会長などから賞状やトロフィーが入賞者一人ひとりに手渡され、会場から大きな拍手を受けていました。最後に入倉昭星常任理事が閉会を告げると、大成功の内に新世紀初の決勝大会も無事終了しました。来年も吟詠コンクールの頂点を目指して、多くの吟詠家がこの大会に挑戦してくることでしょうが、精進の成果を今から期待したいと思います。
 
平成十三年度全国吟詠コンクール決勝大会入賞者一覧
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競吟風景
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各部で栄冠を勝ち得た皆さん。(左から)長山祝子、林綾香、大原有実、荒崎春奈、長谷川照子、馬場圭一郎の諸氏
優勝者の喜びの言葉
 
■幼年の部大原侑実さん(東京)
 「とっても嬉しいです。お父さん、お母さんがとっても喜んでくれました。こんどは少年の部でもがんばれるように、一生懸命練習します。ほんとうに感激です」
 
■少年の部荒崎春奈さん(神奈川)
 「まだ信じられません。今日は聴いてもらえるだけでいいと思っていましたから。名前が呼ばれて、私より先に先生の方が泣いたくらいです。練習通りにはできたと思います。いま高校三年で来年就職ですが、高校時代のいい思い出になりました」
 
■青年の部林綾香さん(東京)
 「幼年の部から出ていましたが、これまで一度も優勝したことがなかったので感激です。また、指導者でもある父の夢、日本一がかなえられて二重の喜びです。父は吟道大学で訓練を受けて来まして、それを元に私も勉強しました。その成果が出て嬉しいです」
 
■一般一部長山祝子さん(奈良)
 「二回目の出場で優勝できて、まだ信じられません。作者の気持ちになって、詩心を表現できるように気をつけ、悔いのないように吟じたつもりです。これからも初心を忘れずに、今まで通り詩心を大切に、人に感動を与える吟を目指します」
 
■一般二部長谷川照子さん(愛知)
 「いま舞い上がっています。地区予選で落ちて、なかなかここまで来られませんでしたが、初めて来て優勝はできすぎです。今日はとにかく平常心でやらなければ、と言うことに気をつけました。これからも好感の持てる吟をしたいと思っています」
 
■一般三部馬場圭一郎さん(福岡)
 「ホッとしています。多分、十六回目での優勝だと思います。今年から三部での出場となりましたが、今年駄目だったらどうしようかと思っていました。結果が出なかったのはメンタルな面だと思い、普段の吟をしたつもりですが、やはり緊張しました」








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