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第二十五回全国高等学校総合文化祭 吟詠剣詩舞部門
「金印の地に文化の花開き 今 21世紀始まる」
 日時●平成十三年八月七日(火) 場所●福岡県飯塚市嘉穂劇場
古き舞台に響き舞う、若き日本の伝統
 文科系高校生の夏の甲子園とも言われる「全国高等学校総合文化祭」が、福岡県で華やかに開催されました。財団が協賛する注目の吟詠剣詩舞部門は八月七日(火)、飯塚市の重要文化財に指定されている嘉穂劇場で開かれ、その若さあふれる舞台に、会場は惜しみない拍手に包まれていました。
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開会式で「偶成」(朱熹作)を合吟
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会場となった重要文化財 嘉穂劇場
 
*嘉穂劇場…大正十一年「中座」として開業。その後、二度の再建を経て、現在の劇場は昭和六年に開かれた。筑豊炭鉱全盛期、遠賀川流域に約四十件あまり存在した劇場の中で、現存する唯一の建物です。
 
生徒、先生が一丸となって開催
 現存する芝居小屋の中でも、日本で唯一、個人所有で歌舞伎形式の珍しい嘉穂劇場が、今回の吟詠剣詩舞部門の舞台となりました。古い物と高校生の新しい感性の出会いは、どんな舞台を見せてくれるのか、大いに期待が持てました。
 九時三十分、吟詠剣詩舞部門は司会者の元気な挨拶で始まり、まず岩手県立久慈高等学校の沢田金吾校長が挨拶に立ちました。「高校生である若い諸君が、先賢、古哲の名詩に親しみ、伝統芸術である詩吟や剣詩舞を通して日本人の礼節と深い精神に触れると共に、吟題に登場するさまざまな風土や歴史と、そこに生きた心情を体感することは、二十一世紀の国際社会を生きるものとして、大きな意味をもつものと考えます」と語られ、吟詠剣詩舞が将来の良き日本を形成する精神的支柱であると、高く評価されました。つづいて、福岡県生徒代表として福岡県立嘉穂高等学校三年の一坊寺希美さんが挨拶し、「吟剣詩舞を通し、私は多くのことを学びました。特に礼儀の面です。挨拶はあたりまえのことですが、これがなかなか難しいのです。また、多くの人と出会うこともできました。韓国、中国、イギリスなどの他国の人々、そして全国の同じ高校生です。今回この大会にたどり着くことができたのも、吟詠剣詩舞の経験を経てきたからだと思います」と、吟詠剣詩舞が自身に果たした役割の大きさを話しました。また、福岡県立嘉穂東高等学校の松岡教知校長は「「温故知新」の言葉にあるように、吟詠剣詩舞を発表する生徒の皆さん、それを支える生徒の皆さん、また観客の皆さんが、この嘉穂劇場というひとつの空間で一体となり、過去から未来へつながる新しい何かを発見し、素晴らしい時を共有されることを願っています」と、吟詠剣詩舞部門が一人ひとりの成長のきっかけになって欲しいことを願った挨拶をされました。挨拶の最後は江頭貞元飯塚市長が登壇され、飯塚市の素晴らしさ、吟詠剣詩舞の有意義さなどを語られ、会場から大きな拍手を受けていました。
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県立嘉穂東高校生による「名槍日本号」
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沢田金吾・久慈高校校長のあいさつ
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あいさつする福岡県生徒代表、一坊寺希美さん
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開催地県立嘉穂東高校・松岡教知校長のあいさつ
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祝辞を述べる江頭貞元飯塚市長
 
若さみなぎる、楽しい舞台の連続
 今回、吟詠剣詩舞部門に参加した高等学校は百十九校におよび、若い人の中にも吟剣詩舞を嗜む層が増えていることを実感しましたし、吟詠剣詩舞の将来を考えると喜ばしいことではないでしょうか。大会の一番手を飾った栃木県は六校二十一名からなり、詠史に残る海にまつわる物語を集めた「海から轟く歌声」を発表しました。二番手は愛媛県で五校十名によって「頼山陽を舞う」を披露。次に、千葉県は三校から成り、千葉の武道の歴史と伝統をつづった「房総の剣」を、奈良県は二校の構成で「日本の英雄を詠ず」を、福井県は福井の物語を紹介する「越のくにより」を、鳥取県はふるさとをテーマに「望郷−心のふるさとを詠ず−」を元気に発表していました。つづいて、愛知県は十九校の大編成で「大原御幸」を堂々と披露し、岐阜県は一校の参加ながら詩舞「桜・春を舞う」を立派に演じきりました。山形県は二校合同で「上杉鷹山公と米沢藩」を、岡山県は十二校十三名のチームで「もののふ挽歌」を、大分県は八校十二名で「広瀬淡窓の世界」を、富山県は五校による「楠公を讃う」を、岩手県は六校二十名で「みちのく岩手」を披露。若さあふれるハツラツとした舞台が印象的でした。さらに、一校一名で参加した長崎県は独吟「城山」を熱吟、つづく石川県は十校十五名の編成で「加賀能登山河抄」を、徳島県は五校のチーム構成で「阿波の詩」を、山梨県は四校で「頼山陽」を、神奈川県は十校の精鋭が「鉢の木・吾妻山純情」を、そして最後に開催地である福岡県が選抜された七校三十名によって「〜まほろばの国・2000年・輝き続ける金印の光〜」を発表しました。どの学校も、普段の練習の成果が出た素晴らしい舞台で、すべての演技が終了したあとも、会場は拍手が鳴り止みませんでした。
 閉会式では、財団公認福岡県吟剣詩舞道総連盟の豊島栄陽理事長が講評にあたり、高校生への頑張りに感動を受け、吟剣詩舞の将来を担う若人への期待感を熱く語られていました。最後に、次回開催の神奈川県を代表して三浦光廣氏が開催の意欲と抱負、成功に向けての決意を語り、第二十五回全国高等学校総合文化祭・吟詠剣詩舞部門も無事、終了しました。吟剣詩舞と真摯に取り組む若人がいる限り、間違いなく日本の心は未来に向けて継承されていくと感じました。
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豊島栄陽理事長
 
吟詠剣詩舞部門に寄せて
財団公認福岡県吟剣詩舞道総連盟
豊島栄陽理事長
 「感動しました。若い人たちが一生懸命にやる姿は美しいものです。この若い力を吟剣詩舞の将来につなげていきたいし、つなげていくことが私たちの責務であると痛感しました。そのためにはどうするか。大人である私たちが真剣に考えなければいけません。」








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