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吟剣詩舞の若人に聞く   第三十六回
上羽 麻一子さん(九歳)
●京都市伏見区在住
(平成十二年度全国剣詩舞コンクール決勝大会剣舞幼年の部第三位)
母・・上羽 由子(標風)さん
祖父・師・・上羽 正美(美風)さん
祖母・・上羽 汀寿子(踊風)さん
家元・・安倍 秀風さん
(神心流尚道館)
何よりも、誰よりも、剣舞が好きな、小さな逸材
 一歳五ヶ月から剣舞をはじめ、日々着実に力をつけ、平成十二年度全国剣詩舞コンクール決勝大会剣舞幼年の部第三位に輝いた上羽麻一子さん。彼女とご家族、家元を交え、剣舞にまつわるお話をうかがいました。
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上羽麻一子さんを中心に写真(左)より上羽由子さん(母)、家元の安倍秀風さん、上羽正美さん(祖父)、上羽汀寿子さん(祖母)
 
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上羽麻一子さん
今の歳はいくつ?
麻一子 「九歳です」
いくつから剣舞をしているの?
麻一子 「いくつからかな・・・・・・」(笑)
安倍 「よちよち歩きのときからです。私どもに子供だけの青少年の会がありまして、それに出てくれたのが最初で、一歳五ヶ月のときです」
覚えてないのも無理ないね?
麻一子 「はい」(笑)
はじめる切っ掛けは何ですか?
正美 「家族全員が剣詩舞をしていますし、そういう機会が多いものですから、自然にはじめたような感じです」
やらせようとは思わなかったのですか?
正美 「そんなつもりはありませんでしたが、妻が日本舞踊をしているものですから、二人で麻一子の取り合いはしましたね」(大笑)
由子 「でも絶対、舞踊は嫌で、剣舞をすると本人が申しまして」(笑)
なぜ剣舞が良かったの?
麻一子 「わからないけど、舞踊は内股ができないから。剣舞は刀が振れるからです」(笑)
刀が好きだなんて、男の子みたいだね?
麻一子 「みんなに言われます」(笑)
由子 「おもちゃも男の子が好きな物が、好きですね」
今ご指導されているのはどなたですか?
正美 「私が指導しております」
お孫さんを教えるのはいかがですか?
正美 「甘くなるところもありますが、おばあちゃんが厳しくみてくれていますから」(笑)
練習は厳しい?
麻一子 「三人(母・祖父・祖母)に怒られるので、練習は厳しいです」(笑)
褒めてくれないの?
麻一子 「直さなくてはいけない個所が直ったときは、褒めてくれます」
お家元の麻一子さんに対する印象は?
安倍 「すごく活発で、勢いがあります。いわゆる子供らしい剣舞をしてくれるので、このまま素直に伸びてくれたらいいなと思っています」
おばあ様のほうから見た麻一子さんは?
汀寿子 「熱心で、テレビを観ていても、お稽古しようかというとやってくれますし、それがこの人の一番いいところだと思います」
麻一子さんの性格というのは?
由子 「明るい子で、怒られてもすぐに忘れ、お稽古も嫌がらず、私が小さい時なら辞めてしまっただろう厳しいお稽古も(笑)嫌がりません」
現在の指導方法はどのようにしていますか?
正美 「良い姿勢を保つことと、財団からいただくテープの流れをうまく踏めるように気をつけています」
麻一子さんの覚えはいかがですか?
正美 「絶句ものなら、二回ほどすれば覚えてしまいますね」
練習はどこでしているのですか?
正美 「私がお家元に習い、家に帰って麻一子に教えています。家に稽古場がありますので、そこで教えています」
家に稽古場があると、いつもお稽古で嫌にならない?
麻一子 「誰もいないときは、遊んでいますから」(大笑)
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インタビューに明るく答える上羽麻一子さんを見守る、左よろ宗家の安倍秀風さん、祖母の上羽汀寿子さん、母の上羽由子さん、上羽麻一子さん、祖父の上羽正美さん
 
全国大会出場は何回目になりますか?
麻一子 「初めてです。全国大会挑戦は二回しましたが、一回目は近畿で二位でしたから行けなくて、二回目は優勝したので全国大会へ行けました」
全国大会は緊張した?
麻一子 「・・・・・・・・」(笑)
由子 「私から見ると緊張しないタイプで、前の人が上手に踊っていても動じないようですね」
正美 「全国大会は母親も詩舞で何回か行き、この子もずっとついて行っていましたから、雰囲気はわかっていたのではないでしょうか」
お母様の成績はどうでしたか?
由子 「恥ずかしくて言えません。麻一子の方が上ですから」(笑)
名前を呼ばれたときはどうでしたか?
麻一子 「嬉しかったです」
由子 「はじめて東京に行ったので、メダルがもらえるとは思ってもいませんでしたから、呼ばれた時は信じられませんでした」
吟題に「木村重成」を選ばれた理由は何ですか?
正美 「お家元に教えていただいた中から、この子に教えるのに一番いいのではと思い選びました」
一番いいとはどういうことですか?
正美 「全国コンクールには二回出ており、最初は「八幡公」でしたので、同じ流れの中で「木村重成」を演じさせました」
コンクールのための練習というのはあるのですか?
正美 「それは特にありません」
汀寿子 「この子は自分で練習するタイプです。ある時、自分で馬の首をダンボールで作って、馬に乗りながら刀を振る練習をしていましたが、何度やっても馬の首を切ってしまい、最後はあきらめましたがね」(笑)
由子 「そういうことを自分で考え、やってみる子ですね」
どうして、そういうことを思いついたの?
麻一子 「遊ぶ人がいなかったから」(大笑)
由子 「その日は遊ぶはずのお友達が、みんな出かけていたようで・・・・」
麻一子 「だから作ろうと思ったの」(笑)
剣舞で得手不得手はありますか?
麻一子 「気持ちを入れるのがうまいといわれます」(笑)
正美 「詩吟の意味は言うようにしていますから」
詩の意味がわかるの?
麻一子 「・・・・・・・・・・」(笑)
今年も挑戦するの?
麻一子 「いま桶狭間をお稽古しています」
出る自信はある?
麻一子 「ない」(笑)
出られたら優勝したい?
麻一子 「はい」
麻一子さんの良いところとは?
安倍 「小さいお子さんだと切るときに勢いが出ませんが、麻一子ちゃんは力強く切ります。このまま伸びていって、あとは静かな吟も表現できるようになってくれたらと思います。いまは良いところをどんどん伸ばして欲しいです」
おばあ様はどんなことを教えていますか?
汀寿子 「刀のことはわかりませんが、気持ちの入れ方を言います」
詩舞以外になにかしていますか?
由子 「小さい時からピアノをしています」
正美 「お家元からいただいた譜面も、自分でコンダクターをたたいて覚えますね」
詩吟もしているようだけど?
麻一子 「はい、しています」
剣舞と詩吟はどちらが面白い?
麻一子 「えー・・・・」(笑)
今後、麻一子さんに望むことはありますか?
安倍 「今はうまく教えてもらっているので、このまま素直に伸びて、あまり意識して形を作らないようにしてもらったらよいと思います」
正美 「私なども二十歳のときは、人がいい格好をすると真似をする、嫌らしさといいますか、品位のない踊りはやめておけと怒られたことを思い出します。上手に見せるためのこびた踊りとかがないように、品位を重んじることはやっていこうと思います」
汀寿子 「皆さんの言ったとおりだと思います」
由子 「私がお稽古しなさいという前に、私も一緒に動いて、お稽古していきたいと思います」(笑)
最後に、麻一子さんの決意や抱負をお願いします?
麻一子 「これからも続けて、おじいちゃんの跡を継ぎます」(笑)
本日はインタビューにお答えいただきありがとうございます。これからの活躍を期待しています。








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