吟剣詩舞の若人に聞く 第三十五回
村上 佳くん(十一歳)
●大阪府枚方市在住
(平成十二年度全国吟詠コンクール決勝大会幼年の部第三位)
母・・村上 敏恵さん
祖母・・川本 愛子(始泉)さん
宗師・・増田 鵬泉さん
(社団法人哲泉流日本吟詠協会鵬泉会会長)
人間として、吟士として、限りなき成長を見る
初めて出場した全国吟詠コンクール幼年の部で三位を取りながら、悔しいという村上佳くん。持ち前の負けず嫌いで、さらなる上を目差してがんばる彼に、ご家族、宗師を含めて、いまのお気持をうかがいました。
村上佳くん
インタビューに答える左より増田鵬泉会長、村上佳くん、母の村上敏恵さん、祖母の川本愛子さん |
いくつから吟詠をしているの?
佳 「小学校二年生ぐらいからです」
なぜ吟詠を始めたの?
佳 「おばあちゃんがやっていたので、それで習いました」
おばあ様が詩吟をしていたのですね?
川本 「はい、昔から宗師のところにお世話になっており、詩吟をしております」
お孫さんにやらせようという理由は?
川本 「特に勧めるつもりはありませんでしたが、私がうたっていたら、何をうたっているのと聞きますもので、詩吟だよといったら、チギンなのといいまして(笑)、興味を示しました。それから私が府連(大阪府吟剣詩舞道総連盟)の大会があった時、応援に来てくれまして、それから詩吟を始めるようになりました」
何で興味を持ったの?
佳 「詩吟の詩が僕にも覚えられそうだったから」(笑)
それでやろうと思ったの?
佳 「はい、半年ほどおばあちゃんに習って、それから先生に習うようになりました」
増田 「覚えは早いですよ。二回ほどやれば、後は本を見ないで吟じますからね」
敏恵 「学校の勉強も、詩吟ぐらい覚えてくれたらと思います」(笑)
お母様は詩吟をしていますか?
敏恵 「私は送り迎えだけです」(笑)
息子さんがするといったときはどうでしたか?
敏恵 「変わったことをするなと思いました。母がしていても、私は興味がありませんでしたから」(笑)
宗師が佳くんを初めて見た印象はいかがでしたか?
増田 「なかなか筋のある子だなと思いました。音もしっかりしていますし、本人自身の詩吟に対する打ち込み方がよく、興味も高く、各種の大会や講習会には必ず参加しています。また、少壮吟士の舞台も必ず観に来ますね」
そんなに吟詠が好き?
佳 「学校の勉強より、詩吟のほうが好きです。詩吟はすぐに覚えられるから」(笑)
勉強は覚えないの?
佳 「・・・・」(大笑)
練習は厳しい?
佳 「そうでもないけど(笑)、来週までに直しておきなさいとか言われると大変です」
人前でうたうのは恥ずかしくないの?
佳 「小さい時は人の前に出ると「石の地蔵さん」みたいだといわれました」(笑)
敏恵 「詩吟を始めてからは、人前でしゃべれるようになりましたね。国語の時間、朗読がうまくなったといわれことは嬉しかったですね」
学校の友達は詩吟のことを知っているの?
佳 「みんな知っています。大会が終わったあとは、成績はどうだった、と聞いてきます」
宗師は、佳くんの指導をどのように考えていますか?
増田 「詩吟を通じて、人間として正しい道を歩むように指導していきたいと思っています。コンクールも大事ですが、この子自身の人間性を大きく伸ばしてやりたいというのが重要なテーマで、そして、それに追従してコンクールだとか吟詠活動があると考えています。人間指導が一番ではないでしょうか」
◎ ◎
全国大会は何回目ですか?
川本 「財団の全国大会は初めてです」
増田 「一昨年は近畿で三位、去年は一位でした。それで全国大会へ行って三位です。でも、この子は三位になって悔しいといいましたよ」
やはり一位がよかった?
佳 「はい」(笑)
敏恵 「東京から泣いて帰りましたから」(笑)
増田 「初出場で三位ですからよいと思うのですが、たまたまうちの弟子で一位になった子がいて、余計に悔しかったのでしょうね」
どうして三位だったと思う?
佳 「声が小さかったことと、帰る場所を間違えたことなのかな」(笑)
増田 「私が聞いた限りでは、しっかりした吟をしていたので、もしかしたらと思いましたがね」(笑)
この次は年齢的に少年の部になるから悔しいね?
佳 「はい」
増田 「まあ、これからだよ(笑)。あと、声変わりになるので、その問題も大変ですね」
敏恵 「変声期になる前に、先生と行きたいところがあるのでしょ」
それはどこなの?
佳 「武道館に先生と一緒に行きたいです」
じゃあ、優勝しなければ?
佳 「・・・・・・」(笑)
コンクールで「富獄」を選ばれた理由は何ですか?
増田 「別にたいした理由はありません」(笑)
佳 「選んだのは僕ですが、先生も僕にあうだろうということでやりました」
あうというのはなに?
佳 「うたいやすいかなと思ったからです」
「富嶽」の内容は理解できた?
佳 「う・・・・・・」(笑)
今度は少年の部になりますが、その指導方法は?
増田 「いままでは声を出すのが先決でしたが、いまは音のとり方とか安定感、ちょっとした色づけなどを始めています。おかげさまで、音に対する基礎が出来上がったので音の変調もなく、後は言葉のもっていき方、詩心表現、間などを、子供ながらにも教えていかなければと思っています」
だんだん内容が難しくなってきたね?
佳 「はい、がんばります」(笑)
詩吟をしていて、得手不得手はある?
佳 「苦手なところは節で、「ゆり」が入りません」
いま何本で吟じているの?
佳 「九本です」
増田 「いまは九本でも大丈夫ですが、変声期に入ったら、この子の声の使い方というのがひとつの課題になると思います。高いのがよいとばかりは思っていませんので、その人に合った声をどう出していくか、それが重要でしょう」
詩吟を辞めようと思ったことはないの?
佳 「ありません」
敏恵 「コンクールの前に練習をしなかったりするもので、何度も辞めさせられそうになったことはあります」(笑)
将来はどうするの?
佳 「なれるものなら、先生みたいになりたいです」(笑)
敏恵 「この子は先生が大好きだから、なんでも先生みたいにって言いますね」
増田 「私は鵬泉ですが、それなら僕は小鵬泉だなんて言ってくれますよ」(笑)
吟に対する今後の課題などはありますか?
増田 「いまの段階うんぬんではなく、声変わりして落ち着いて、それからが基礎を含めて始まりだと思っていますし、そういう指導をしていきたいです。そして、人間的にも、吟詠的にも、立派な吟士になってもらいたいと願っています」
佳くんに対する要望などはありますか?
川本 「自分から入った道ですから、極めてもらいたいと思います。先生にもご恩返しができるよう、成長して欲しいと思います」
敏恵 「いろいろな年代の人と接しながら、子供ながらにも成長しているのを感じます。それぞれの人に見守ってもらい、人として大きくなって欲しいし、そのための吟であって欲しいです」
最後に佳くん、何かありますか?
佳 「がんばって少年の部で優勝します」(笑)
本日はお忙しい中、ありがとうございました。ぜひ、優勝するようがんばってください。期待しています。
村上 佳くんは皆んなの人気者。一緒に詩吟を習っている教場の皆さんと(村上 佳くんの右後は増田鵬泉会長、左後は母の村上敏恵さん) |