漢詩初学者講座 伊藤竹外
吟詠家に漢詩のすすめ―(三十九)
伊藤竹外
伊藤竹外先生プロフィール
愛媛漢詩連盟会長
(16吟社、会員200名、毎月指導、添削)
六六庵吟詠会総本部会長(吟歴60年)
財団公認愛媛県吟剣詩舞道総連盟理事長
財団法人日本吟剣詩舞振興会理事
平成5年 文部大臣地域文化功労賞
平成8年 財団吟剣詩舞大賞功労賞
著書 豫州漢詩集(編著)
南海風雅集(編著)(2版)
漢詩入門の手引き(10版)他。
一、明日への夢をひらく
去る五月五日、財団本部主催の全国名流吟剣詩舞道大会が愛娘県松山市において開催されましたが、本誌六月号に寫真と共に詳細が紹介されましたとおり、全国から選抜せられた各流各派の少壮吟士、宗家、会長などの名流吟剣詩舞家のご出演を得て、二千六百名の参会者がフィナーレまで誰一人立つ者もなく満堂感動の裡に終了することが出来ましたことは、地元役員の一人として偏に感謝するところであります。
特に本大会が財団主催に拘らず少年及び企画番組台本の原稿の依頼を受け、多少の変更はあったものの、その大半の原案が認められたことは、現代感覚を素材とした「少年番組、秀眉夢を秘めて輝く」一般企画番組「虹よりも彼方に」(その一、南海道に割據した英雄篇、その二、草莽の民の軌跡)などに現代漢詩家の絶句が数多く採用せられ、従来の古い吟題一辺倒から脱して新しい視野を拓いて画期的な演出が万人に認められたことは明日への夢を育むものとして高く評価したいと思います。
本欄の募集課題も常に全国各地の名勝、先哲篇など従来の学習的な旧套から脱して、更に吟界の将来の企画番組の一助たらんことを願って各位の投稿を期待している所であります。
二、課題 夏日「○○舟行」について
○○は各地名勝地の河川又は海を舟遊する興趣を詠むものです。一般的な課題の「夏日舟行」ではなくあえて○○の固有名詞を入れたことはそれぞれの名勝地を背景にすることによって観賞の場を拡げ且つ前記の構成番組などに利用されることを期待し将来性を見込んでいるところにあります。唯漠然とした舟遊は採用するところではありません。
三、よくない句作り
一行の句作りがしっかりしていなければ到底首尾一貫しません。「視覚と聴覚」を一行に詠むことが不自然であることを知るほか、一行の脈絡をよくよく勘案して誰にも理解されるよう努力することが肝要です。例えば
(尚この作者は相当な実力者ですが、平仄がうっかり間違っています)
この「よくない句作り」は服部承風先主著「初学詩偈法」(大本山永平寺祖山傘松会刊行)によるもので初学者に解り易い作詩の手引き書です。
四、意と文と脈絡しないもの
一体何を言わんとするのか全く分りません。
これも理解できません。、尚返り点で「ハ」や「ノ」で上に返れません。唯「ノ」は上の語が「如」か「為」の時は返れます。
五、結句は割り切れる語を使わない
いつも例に挙げていますが、結句こそ絶句の生命で安易な詩語や逃げ口上では折角苦辛の詩も台なしになってしまいます。
これらの結句をどのように添削したらよいかと言いますとこれはとてもむつかしいことです。結句だけの添削では到底収まりませんので次の添削例の如く全体に度っての改作になってしまいます。
六、添削実例