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月刊「吟剣詩舞」2001年6月号

 事業名 通信衛星による吟剣詩舞の普及振興
 団体名 日本吟剣詩舞振興会 注目度注目度5
'02剣詩舞の研究(二)   幼少年の部
石川健次郎
剣舞
「爾霊山」の研究
乃木希典作
 
 (前奏)
爾霊山は険なれども
豈攀じ難からんや
男子の功名克艱を期す
鉄血山を覆うて山形改まる
万人斉しく仰ぐ爾霊山
 (後奏)
◎詩文解釈
 この詩の作者、乃木希典(一八四九〜一九一二)が日露戦争のさなか、難攻不落を誇った旅順の二〇三高地を占領したときに詠んだもの。表題の「爾霊山」とは二〇三高地のことで、多くの戦死者をだしたこの高地を、汝の霊をまつる山と云う意味で爾霊山の字を当て、言葉合せも一致させた。
 さて詩の内容は「爾霊山はけわしいが、しかし決して征服できないと云う事はなかった。現に今こうして困難を克服し、男子として勝利のてがらをたてたではないか。とはいえ爾霊山の周囲を見わたすと、あたりは武器や屍が山をおおって、山の形が変る程の凄惨な姿になってしまった。しかしこの情景を眺めた多くの人達はみんながこの激しかった爾霊山攻略の軍功をたたえてくれるであろう」と述べている。
 さて参考のために日露戦争における、作者乃木将軍について述べて置こう。彼は明治三十七年五月に第三軍司令官として日本を出発、旅順攻撃の任務をもって塩大澳に上陸。直ちに南山の戦場を巡視したが、ここで詠んだのが有名な「金州城下の作」である。しかし彼の旅順攻撃は遅々として進まず、八月に包囲作戦をとってからは悪戦苦闘の連続で味方の犠牲が続出、十二月になってやっと最大の拠点二〇三高地を落とし、その勢いで翌元旦未明から総攻撃に移り旅順を占領した。とは云えこの五ヶ月での死傷者は五万五千名に達し、乃木将軍の長男は南山で、次男もまた二〇三高地で戦死した。
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山形改まる二〇三高地
 
◎構成振付のポイント
 詩文は前半が勇敢な攻撃を示唆したもので、後半は激戦の生々しさと、戦死した英霊に対する敬弔の心で構成されている。従って剣舞構成も剣技の激しさは、起・承句が見せ場になるが、近代の戦闘では銃砲類の存在も無視できないから、着剣銃を刀で見立てることも許されよう。さらに一対一の戦いではなく広大な戦場で多数の敵、味方が入り乱れて戦うイメージを表わすために剣技に移った場合は、特に前後左右を縦横無尽に攻めたてる手順を考えて置くとよい。転句も前半の影響を受けて満身創痍の状況を組込んで変化をつける。さて結句は乃木さんの心情で爾霊山に向い、自分の次男を始め多くの戦死者に対する慰霊の心を表わすべきだが、幼少年の場合は乃木さんにこだわらず、刀をかざして鎮魂の祈りをささげる様な表現を見せるとよい。
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乃木希典
 
◎衣装・持ち道具
 激戦の表情としては紋付より稽古衣の方が迫力を感じる、紋付なら黒、たすき鉢巻を着用したい。振りの中で刀の下げ緒などが応用できる場合もある、扇はあまり必要としないのではないか。
詩舞
「佳賓好主」の研究
佐藤一斎作
 
(前奏)
月は梅花を訪うて好主と為し
梅は月影を邀えて佳賓と作す
佳賓好主両つながら双絶
管領す黄昏一刻の春
(後奏)
◎詩文解釈
 作者の佐藤一斎(一七七二〜一八五九)は江戸時代の学者で、生まれは江戸浜町。幼少から読書を好む一方、馬術や刀槍の武術を学んだが、十二、三歳の頃から学問を多く学び、二十三歳で林家の塾長に抜擢された。また天保十二年、五十四歳で幕府の儒官に登用され教育に専念し、門下からは佐久間象山、安積艮斎、渡辺華山など多くの逸材を出した。
 ところで、この詩の主題について述べておくと、まず題名の"佳賓"とは敬うべき立派なお客さまを意味し、"好主"とはそうした客をもてなすにふさわしい優れた主人のことである。そしてこの客と主人の関係を、月を客に見立て、梅は月を接待する主人として、この両者が出会う場面に「千金に値する春の宵」を設定した。
 さて詩文の直接的な意味としては「月が美しく咲いた梅を訪ね、もてなし上手の主人(梅)に出会い、梅は気高い月を迎え輝やかしい客に接した。この明るく世間を照らす月と、よい香りを漂わせる梅花は、それぞれに優れた風情を持っているが、この好ましい一対のコンビによって、春の宵のひととき凡てを支配する風情を作りだしている」というもの。
◎構成振付のポイント
 日本人の美感覚には、「雪月花」とか「花鳥風月」と云ったパターンがあり、この作品の場合は月と花の両方にまたがっているので、まさに日本を代表する二つの美が登上した訳である。
 ところでこの作品では、月と梅が客と主人に擬人化することで、詩舞の舞踊構成では効果的な振付が展開出来ることになるだろう。ヒントとしては、月を男性、梅を女性とした情の世界も考えられるが、勿論同性で扱うこともできる。また詩文からは、擬人化を抜き去って純粋な風景描写で舞踊構成を考えてもよい。
 今回は幼少年が対象なので、次に演舞者が女児の場合で一つの構成例を述べてみよう。
 まず前奏で演者は上品に登場し、起句から扇(銀)を取出して月が中天に昇り、大きく軌跡を描きながら梅園を照らす。承句はその光を受けた梅が扇(金または朱系)を使って可愛らしく、眩しそうに、恥じらいを見せながらも、やがて前の月と同じ軌跡を、扇を笛に見立てて笛を吹きながら移動する。転句は煌煌と輝く月の誇らしげな輝きと、それを受けた梅の可憐な仕草や、瞬間的に月が雲間隠れしたのを心配して探し求めると云った偶発的な出来事を振付に盛り込む。結句は別れを述べる月と、役替りして見送る梅が、春の宵を満喫した雰囲気で、再び笛を吹きながら後奏で退場する。
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梅園と月
 
 演者が月を演じる心がまえを貴公子然とすれば変化がつく。
 なお演者が男児の場合は擬人化は避けて風景描写にしたい。
◎衣装・持ち道具
 前項の例に限定すれば、演舞者は梅をイメージした着付として、白地に朱の重ね衿をつけたものに調和した袴を選ぶ、薄い朱系のものでもよい。扇は月の部分は銀、梅の部分を金、または梅を描いたものを使い分けてもよい。








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