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次代に羽ばたけ、吟剣詩舞の心
 五月五日、子供の日。今年で三十回目を迎える春の一大イベント、平成十三年度全国名流吟剣詩舞道大会が愛媛県は松山にある愛媛県県民文化会館で、華やかに開かれました。当代一流の舞台が見られるとあって、早朝から会場は多くの人で賑わっていました。
優しい雰囲気に包まれた、子供の日特別企画
 当代一流の吟剣詩舞道家が出演し、素晴らしい舞台を見せてくれる全国名流吟剣詩舞道大会も、今年で三十回目を迎えました。広く周知されたこの大会をひと目観ようと、早朝から多くの愛吟家、剣詩舞愛好家が詰め掛け、会場は大盛況となりました。
 定刻通り午前十時に幕が上がり、舞台上に勢ぞろいした出演者、財団役員へ惜しみない拍手が起こる中、河田神泉副会長が開会のことばを高らかに述べられました。
 今大会は全四部から構成され、第一部は全国少壮吟詠家審査コンクール決選大会入選者の吟詠、第二部は一般の部で、各流宗家・会長・師範が日頃精進した吟詠を披露しました。第三部は子供の日にちなんだ少年少女の吟詠と剣詩舞で、第四部は財団法人吟剣詩舞振興会による企画構成番組が行われました。
 第一部は名流吟詠家の登竜門といわれ、厳しい審査で知られる少壮吟詠家コンクールに入選した人たちの吟詠で、さすがに厳しい審査に受かった吟詠家たちだけに、吟に気品と格調があり、心技ともに伸び盛りの素晴らしい吟詠を心行くまで堪能することができました。
 第二部は、愛媛県吟剣詩舞道総連盟・男子の合吟から始まり、四十五番手の大熊秀岳、明神春風さんの最終吟まで、各流宗家・会長・師範、少壮吟士の皆さんの円熟した吟詠と剣詩舞でした。またこの二部は、各流が持ち味を活かし、それぞれの節調を味わうことができる、とても楽しい舞台でした。
 第三部は子供の日にちなんだ企画構成番組で、「秀眉夢を秘めて輝く」が披露されました。この番組は、子供の心が廃れ、学級崩壊や家庭崩壊など、思いもよらぬことが起こっている現在、笹川良一創始会長が語られた「吟詠、剣舞、詩舞を学ぶ第一の長所は、魂を養うことだ」という言葉を中心に、澄み切った瞳の子供たちの吟舞を鑑賞しながら、日本の明日を祈り願うことが、番組の根底に流れていました。オープニングの「こいのぼり」から子供たちの可愛い演技が続き、会場は優しい雰囲気に包まれ、いつまでも笑いと大きな拍手が鳴り止みませんでした。
笹川鎮江会長を気遣われた三笠宮妃殿下のお言葉
 二時から財団による式典が行われました。厳かな雰囲気の中、国歌が斉唱され、河田神泉副会長が笹川鎮江会長のお言葉を代読されました。つづいて三笠宮妃殿下のお言葉を、恩賜財団母子愛育会の上村一会長が代読され、その中で妃殿下が笹川鎮江会長の体調を気遣われていることが伝えられました。来賓祝辞では加戸守行愛媛県知事のあいさつを宮内薫出納長が、また中村時広松山市長の言葉を松崎茂助役がそれぞれ代読され、ともに「吟剣詩舞は日本の心、これからもその発展にご努力ください」という趣旨の内容で、吟剣詩舞道に対する期待の大きさを感じました。さらに、小泉純一郎内閣総理大臣をはじめ、遠山敦子文部科学大臣、佐々木正峰文化庁長官の祝電が披露されました。恩賜財団母子愛育会への奉賛目録贈呈では、河田神泉副会長から上村一会長へ目録が贈呈されました。最後に吟剣詩舞奨励賞が三部に出演した少年少女に贈られ、松下舞さんと大野柳省くんが代表で賞状を受けていました。すべての式が滞りなく終了すると、舞台はいよいよ期待の財団による企画構成番組「虹よりも彼方に」が始まりました。
日本の明日を祈り、吟剣詩舞の誠を次世代へ
 今回の企画構成番組は二部に分かれ、その一では「南海道を割拠した英雄編」と題し、四国四県に残る城や当時の英雄たちが志を述べ、あるいはその英雄自身が称えられた詩歌を中心に吟舞で表現したものでした。その二は「草莽の民の軌跡」と題し、野にあって活躍した先人をたどり、幾多の辛苦を乗り越えながらも虹を架け、夢を託した詩歌の中から、更なる彼方の真実を求め、吟じ舞い、吟道の誠を次の世代に継承すべく構成された、見ごたえ充分の内容でした。
 出演者は財団役員をはじめ、少壮吟士の面々、当代一流の剣詩舞道家が持てる力を遺憾なく発揮し、さすが名流の名に恥じない感銘的で立派な舞台でした。笹川鎮江会長もVTRでご出演し、その美しい吟詠を披露し、会場を感動で包み込んでいました。どこからともなく「さすがに凄い」「立派な舞だ」「来て良かった」などという声が聞こえ、その声がこの大会の素晴らしさをよく表現していると思いました。
 そして、すべての舞台が終わり、感動的なフィナーレの中で、愛媛県から次回開催地となる滋賀県へ大会旗が移管され、成功の内に平成十三年度全国名流吟剣詩舞道大会の幕が下りました。終了後も多くの人が舞台の余韻を楽しむかのように、いつまでも拍手を送る姿が印象的でした。次回は、はたしてどんな感動を私たちに与えてくれるのでしょうか、大いに期待したいものです。
 
平成十三年度全国名流吟剣詩舞道大会
三笠宮妃総裁・恩賜財団母子愛育会奉賛
【日本人の心をうたう吟詠芸術の祭典】
 
日時‥平成十三年五月五日(土・子供の日)
場所‥愛媛県県民文化会館メインホール
主催‥財団法人日本吟剣詩舞振興会
後援‥文化庁・愛媛県・松山市・NHK・南海放送・伊予テレビ・愛媛朝日テレビ・朝日新聞社松山支局・読売新聞社大阪本社・毎日新聞松山支局・産経新聞松山支局・愛媛新聞社
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式典に出席された来賓諸氏 
 
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式典で、笹川鎮江会長のあいさつを代読する河田神泉副会長 
 
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愛媛県・加戸守行知事のあいさつを代読する宮内薫県出納長 
 
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松山市・中村時広市長のあいさつを代読する松崎茂助役 
 
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三笠宮妃殿下のお言葉を代読する恩賜財団母子愛育会会長、村上一氏
 
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(第四部で)「三坂より松山城を望む」(正岡子規作)を吟じる河田神泉副会長
 
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「松山城」(小原六六庵作)を吟じる鈴木吟亮専務理事 
 
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「加藤嘉明」(田丸竹富作)を吟じる?群華要常任理事 
 
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「足立重信」(小原六六庵作)を吟じる工藤龍堂常任理事
 
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第二部、愛媛県吟剣詩舞道総連盟女子の合吟「春日家に還る」(正岡子規作)。先導は松本紫鳳氏
 
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少壮決選で3回入選した八代光晃子氏の吟詠「桜祠に遊ぶ」(広瀬旭荘作)
 
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同・久保草風氏の吟詠「京都東山」(徳富蘇峰作)
 
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第二部で「志を言う」(藤田東湖作)を吟じる二神清竜氏
 
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同・「余生」(良寛作)を吟じる黒木厚城氏
 








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