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漢詩初学者講座   伊藤竹外
吟詠家に漢詩のすすめ―(三十七)
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伊藤竹外
 
伊藤竹外先生プロフィール
愛媛漢詩連盟会長
(16吟社、会員200名、毎月指導、添削)
六六庵吟詠会総本部会長(吟歴60年)
財団公認愛媛県吟剣詩舞道総連盟理事長
財団法人日本吟剣詩舞振興会理事
平成5年 文部大臣地域文化功労賞
平成8年 財団吟剣詩舞大賞功労賞
著書 豫州漢詩集(編著)
   南海風雅集(編著)(2版)
   漢詩入門の手引き(10版)他。
 
一、作詩の規則は簡単
 漢詩を学びたいが、その規則がむつかしいからとて、又、手引きをしてくれるよき師を得ないからとて敬遠する人が多いようです。実は野球の規則よりはるかに簡単です。例えば七言絶句の法則は
(一)押韻(起、承、結句の末字を同韻)
(二)二四不同(二字目と四字目の平仄を異にする)
(三)二六對(二字目と六字目の平仄は同じ)
(四)下三連禁ず(下三字を○○○、●●●としない)
(五)四字目の孤平を禁ず(入門の手引き参照)
 以上たった五つの約束に過ぎません。ただ平仄を覚えることが容易ではありませんが、多くの詩語集には皆○●を付してありますから、これを応用すればよいのです。
 尚右の四行の構成は起句の二字目が平起なれば承句、転句の二字目が仄、結句が平となり、起句の二字目が仄起ならば右と反対になります。例外として次の拗体があります。
 
二、拗体について
 毎月の本誌への投稿詩は北海道から九州に至る百首に上っていますが「初学者講座」と銘打っているにも拘らず、二、三十年の経験を有すると思われる勉学者も多いようですが、それでも独学のせいか(一)平仄の誤用(二)両韻の間違い(三)国訓の応用、(四)起承、転結の脈絡不十分なものなど随所にあって毎月添削に併せてその理解を促しているところです。
 さて前月の課題「詠○○城」に次の如く添削したものを秀作として掲上しましたら作者より次の如き質問がありました。
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 右、起承の妍、偉、悠然など主観を訂正したのと転句の鯱は国字で使えないため添削したものです。(辞書に国字とあり、平仄なし。その他、鯰、鱈、鱚、辻、峠、榊、俤、働など多し)右に対し作者より転結の平仄が合っていないからとて次の如く再添削を求められました。
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 最初に挙げた規則のとおり、仄起式なるが故に転結を平仄とすべきだと思っているようです。
 呂山著「だれにもできる漢詩の作り方」14頁に七言絶句の平起式の起承に仄起式の転結を続け、仄起式の起承に平起式の転結を続けるのを拗体といって許されると次の例を挙げています。
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