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吟剣詩舞の若人に聞く   第三十二回
前田 裕子さん(十一歳)
(平成十二年度全国吟詠コンクール決勝大会幼年の部準優勝)
母…前田 由江さん
師…青木 光茜子さん
会長…八代 輝霊さん
(淡窓伝光霊流宮崎詩道会)
基本を大切にした、正統派の吟が人を魅了する
 先生の教えを素直に聞き入れ、年々、力を伸ばしている若き吟詠家、前田裕子さん。幼年の部では準優勝でしたが、今年の少年の部では優勝を目指し、日々努力しています。そんな彼女に、ご両親、先生、会長を交えてお話をうかがいました。
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前田裕子さん
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写真右から八代輝霊会長、師の青木光茜子さん、前田裕子さん、母の前田由江さん
 
いつ頃から詩吟を習っているの?
裕子 「平成六年に、会の大会を見に行き、そこで詩吟をしてから本格的にはじめました」
それは誰かに誘われたの?
青木 「実は裕子ちゃんは、私の姉にピアノを習っていまして、その関係で大会に来てもらいました。というのも、吟をする子供の人数が足りなかったものですから」(笑)
駆り出されたわけですね?
裕子 「はい、そうです」(大笑)
でも、いきなり吟じてどうでしたか?
裕子 「吟のことはわかりませんが「うまいうまい」と褒められました」(笑)
青木 「褒め殺しですかね」(大笑)
それは詩吟をしてもらいたい下心からですか (笑)?
青木 「はあ、小さい子が少ないものですから、してもらいたいという気持ちはありました」(笑)
由江 「それで、この子がすると言い出しまして、それならお姉さんと二人で習ったほうが良いと思い、二人ともやらせることにしました」
先生から見て、裕子ちゃんの印象はいかがでしたか?
青木 「ピアノを習っていたので音感がよく、教えたらそのまま覚えるので、素直で覚えが早いと思いました」
習い始めて詩吟は難しいと思った?
裕子 「はい、難しいと思いましたが、また楽しいとも感じました」
先生の教え方は厳しいの?
裕子 「いえ、優しいです」(笑)
お姉さんと一緒に習っているけど、競争心とかあるの?
裕子 「今年、少年の部で一緒だから、負けないようにしたいです」(笑)
  ◎   ◎
全国大会に出る前のコンクールの成績はどうでしたか?
八代 「幼年でも少年でも優秀な成績を収めています」
全国大会に出たのはいつからですか?
青木 「一昨年からです」
八代 「一昨年は四位で、昨年が二位の準優勝です」
全国大会の感想はある?
裕子 「大きな大会だなと思い、緊張しました」
初めての全国大会で力は出せた?
裕子 「自分では七十点ぐらいだと思います」
三十点減点の理由は何ですか?
裕子 「声が少し小さかったからです」
二回目で準優勝だけど、その結果については?
裕子 「ビックリしました。信じられない気持ちでした」
青木 「私もまさか二位になるとは思っていませんでしたが、吟を聞いて声も出ていましたし、練習よりよかったので、これならもしかしてという気持ちになりました」
前回の失敗は克服できましたか?
青木 「全国大会に出る前、声が出ないのと息が続かないという問題点が出てきて、行く前日まで悩んでいましたが、当日は驚くほどよくできましたので、こちらが驚いたくらいです」
八代 「それはコンクールに出るまで、かなり緊張しているから、そうなるのではないでしょうか」
青木 「たぶん、そうだと思います」
緊張したり、あがったりするほうなの?
裕子 「そんなことはないけど、けっこうあがります」(笑)
二位という成績だけど、本当は優勝したかった?
裕子 「いや、二位でいいです。入賞するとも思わなかったから」(大笑)
なぜ、そう思うの?
裕子 「周りの人がうまく思えたからです」(笑)
お母さんはコンクールに行かれましたか?
由江 「はい、行きました」
八代 「お父様も熱心で、コンクールには家族全員で必ず行かれています」
裕子ちゃんのよいところは何ですか?
八代 「最近は、子供でも大人のような吟をする子がいますが、それが悪いというのではありませんが、子供には「子供らしさ」が欲しいと思います。その点、この子の吟は素直で、基本に忠実な正統派だと感じます、将来素晴らしい吟詠家になるのではないでしょうか」
青木 「節回しがよいことです。教えた通りにできますし、教えていて楽しい子です」
楽しいという意味は何ですか?
青木 「言ったことを素直に聞いてくれますし、他の人が聴くと、私の吟にそっくりね、といってくれます」(笑)
  ◎   ◎
これからは少年の部になりますが、どうお考えですか?
青木 「今のままの吟だと厳しいので、少年のレベルの吟にもっていきたいと思っています。例えば、言葉の言い方とか、メリハリのある吟にするとかなどです」
八代 「今までのことにプラスして、少年でやらなければならないことをする。それは何かといえば、小さなところまでできるようになること。これまでは声量などに気をつければよかったけれど、今度はさらに味がついてこなくてはいけない、それが先生の今度の仕事ではないでしょうか」
お姉さんと吟の話などはするの?
裕子 「はい、腹から声を出すように、なんて言われたりします」(笑)
青木 「お互いにアドバイスしあっているようですね」
お姉さんのアドバイスは的確?
裕子 「…」(笑)
大会で「弘道館に梅花を賞す」を選ばれた理由は何ですか?
青木 「何曲か吟じてもらい、声が出しやすい吟題を選びました」
出しやすいとか、出しにくいとかがあるのですか?
八代 「母音の出し方で、低音は比較的響きますが、高音は苦手で、出しにくいということがあります。例えば、高い「イ」は嫌だとか、「オ」は苦手だとかです。あとは、発音をうまくやれるか。それに声が加わってくるので、その人に合った曲選びは結構大変です」
昨年の吟題で苦労した点はありますか?
裕子 「声のかすれるところが一部あって、そこができなくて止まってしまったことです」
お姉さんと裕子ちゃんの吟の違いは何ですか?
青木 「お姉さんは真面目で端正な吟、裕子ちゃんは節回しがうまく、お姉さんよりまるい感じの吟、そんな違いがあります」
詩吟をしていて良かったことはありますか?
由江 「お姉さんがしていて良かったと言ったことがあります。それは自分の自信というか、吟をすることで自分の中に誇りをもてたのではないでしょうか」
最後になりますが、裕子ちゃんにメッセージがありましたら、お願いします、
八代 「光霊流の教えに従って素朴に生き、個性を活かし、正しい人の道を歩いてもらいたいです。また、詩吟を通じて人づくりをすることが、我々のひとつの使命でもあるかと思います。そして、幼年の結果に味をつけて吟じれば、おのずから道は開けると思っていますから、お姉さんと良いライバル関係で切磋琢磨して、がんばってください」
青木 「これからもずっと続けてほしいし、練習ももっとがんばってください」
由江 「先生方に任せっきりで申し訳ありませんが、これからもよろしくお願いします」(笑)
裕子ちゃん、最後に何かありますか?
裕子 「先生からいろいろ教えてもらっているので、少年の部に向けて、人一倍がんばりたいと思います」
本日はインタビューにお答えいただきありがとうございました。これからのご活躍に期待しております。
 
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インタビューに答える右から八代輝霊会長、青木光茜子さん(師)、前田裕子さん、前田由江さん(母)








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