提言書の要旨
はじめに
現在市内には50か所の地域作業所、グループホーム26か所の精神障害地域施設が存在しており、これら施設を市精連は会員に擁しています。作業所では1000人近い利用者が推計されグループホームでは140人程の入居者がいます。
市精通は作業所運営の中から精神障害者の生活ニーズを掘り起こし、一人一人の必要に応じて利用できるサービスとして、或いは仕事の場、また集い憩う場としての活動を行ってきました。更に場の提供から住む場所の確保へと施策を展開し、横浜市の全面的な支援協力を受けてその設置を図ってきました。ニーズの掘り起こしから施策実現の根底には、精神障害の特性を理解する事や、有効な援助とは何かという私たちの強い問題意識がありました。身体・知的・精神の障害に見合ったよりよいサービスを提供する為には、障害と援助の全体像を明らかにする事が必要です。この間、市精連としては市の作業所補助要綱の改正を巡って福祉局の知的、身体作業所と同じ扱いを求める旨の要望が市当局に提出されるという混乱が見られました。しかし市精連内部での議論を経て自らの原点に立ち返り「精神障害者の生活支援」について、その障害特性を実践現場から明確にして、必要な援助内容及び援助提供に至る経過について検討し、横浜市の精神保健福祉施策の一助とすべく提言を行うことで意見の一致をみました。
私たちは作業所に関しては、より通いやすく利用しやすい地域施設を目指して、通所交通費、借地借家費、開設費及び移転費補助の創設増額を市に働きかけ、制度化に漕ぎ着けてきました。また、グループホームについては箇所数の増加、移転費の制度化などを要望、実現して住む場の確保に努めてきました。
作業所、グループホームを運営する中から夕食会や休日のレク活動、家庭及び病院訪問等、地域生活支援の様々な活動を私たちは試行してきました。しかし地域生活とは、作業所、グループホームのみで支援できるものではないことも、この試行経過の中で同時に明らかになってきました。この様な活動を通して、入院医療から社会復帰施設へ、そして更に地域ケア、地域生活の支援へという精神医療及び精神保健福祉の質的転換の中で、市精連は一定の役割を果たしてきました。
先般の精神保健福祉法の改正により平成14年度より居宅支援事業が開始されます。ケアマネージメントの手法によるホームヘルプサービス、ショートステイを精神障害者も利用できる様になります。折しも生活支援センターが神奈川区に開館し、今後3館の建設予定があり、寄せる期待は甚だ大きいものがあります。居宅支援事業の実施に当たっては、今後、保健所、生活支援センター、福祉サービス協会等のホームヘルプ実施団体との連携が欠かせません。私たちはこの施策を地域生活支援の重要な要素と考え、精神障害の特性に見合う、より良いサービスの実現を求めて、この提言を提出致します。
1. 健康概念の変更
「健康とは完全な肉体的、精神的及び社会的福祉の状態であり、単に疾病又は病弱の存在しない事ではない」
上記はよく知られたWHO(世界保健機関)の健康の定義です。
1999年にWHOは見直しを行い、健康の定義を,「完全な肉体的(physica1)、精神的(mental)Spiritual、及び社会的(social)、、福祉のDynamicな状態であり、単に疾病または病弱の存在しない事ではない。」と改めました(下線部追加)。
「健康」の確保において、生きる意味、生き甲斐などの追求が重要との立場から提起されたものと理解されます。検討の過程で、Spiritualityは人間の尊厳(Quality of Sanctity)の確保やQuality of Lifeを考える為に必要な本質的なものであるという意見が出され、Dynamicについては、「健康と疾病は別個のものではなく連続したものである」との見解が表明されました。
以上の様に健康が個々人の生活の質に密接に関わるものであるのみならず、尊厳の確保にまで関係する深い概念であり、且つ「健康と疾病は別個のものではなく連続したものである」ことが示されました。
2. WHO国際障害分類(ICIDH)の改正
1980年のICIDHにおいて,Impairment,Disability,Handicapという3つの側面ないし次元から障害を考察している事は周知の通りです。WHOは改正作業に着手し改正案として提起されたのがベータ1草案(1997)です。更にはベータ2草案(1999)の検討が各国で進んでいます。
3つの次元で障害を把握しようという点は同じですが、各々の次元の名称が否定的なものから中立的或いは肯定的な表現に変更されました。能力障害が活動に、社会的不利が参加に変わっています。それらが阻害されている状態は、「活動の制約」(limitation of acticity)「参加の制限」(restriction of participation)と表現します。またサブタイトルから「病気」という言葉が消え、妊娠や老化などを含めて心身の状態に関連して生じる問題を幅広く取りあげています。人種や皮膚の色などに伴う問題まではカバーしていません。
(1980年版の障害概念図)
ベータ1 草案の障害概念図
ベータ2 草案の障害概念図
ベータ2草案の中では、機能障害とは身体の構造又は生理的・心理的機能の喪失又は異常の事です。活動とは下記の分類項目に見られる様に、日常生活の全般を範囲としたあらゆる場面をカバーしています。同様に参加は機能障害、活動、健康状態、及び背景因子との関係の下での、個人の生活状況への関与の種類と程度です。これらを包含してdisability(障害)という概念が与えられています。
また背景因子は人々が生存し活動する物理的・社会的及び態度面の環境に存在する物・構築物・人工的組織・サービス提供・機関の特徴・側面・属性のことであると定義されています。背景因子は環境因子と個人因子の両方を含み、環境因子は身近な生活用具から人々の意識、社会のルール、気候などの自然環境までカバーしています。
ベータ1 草案の各レベルの大分類(一部)
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| 活動の分類 |
| 第1章 |
見る事、聞く事、そして認識する事 |
| 第2章 |
学習、知識の応用、課題の遂行 |
| 第3章 |
コミュニケーション活動 |
| 第4章 |
運動活動 |
| 第5章 |
移動 |
| 第6章 |
日常生活行動 |
| 第7章 |
必要事項に対する配慮と家事 |
| 第8章 |
対人行動 |
| 第9章 |
特定の状況への対応 |
| 第10章 |
自助具、テクニカルエイドの使用、その他の活動 |
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| 参加の分類 |
| 第1章 |
身辺維持への参加 |
| 第2章 |
移動への参加 |
| 第3章 |
情報交換への参加 |
| 第4章 |
社会関係への参加 |
| 第5章 |
教育、仕事、余暇、及び精神活動への参加 |
| 第6章 |
経済生活への参加 |
| 第7章 |
市民生活・共同体的生活への生活 |
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| 環境因子のリスト |
| 第1章 |
製品、用具、消耗品 |
| 第2章 |
対人支援・援助 |
| 第3章 |
社会的・経済的・政治的活動 |
| 第4章 |
社会的文化的構造、規範と規則 |
| 第5章 |
人口の物理的環境 |
| 第6章 |
自然的環境 |
参加の制限について考える時、障害を持たない入々が普通に想定する参加について、障害をもつ人が質、特徴、程度の面で制限を経験するのはどの生活分野であるかを考える視点に基づく事即ち適切な社会的、文化的規範や基準に基づくことが必要です。
3. 健康、障害概念の拡張と社会的不利
以上のような健康の定義変更や障害分類の改正作業に見られるように、健康と疾病は別個のものではなく連続したものであり、その時々の本人の状態、生活環境の変化等によって、双方向的に推移するものであることが明確にされました。障害概念は生活全般に拡大され、特殊な人々の特別な状態ではなく、妊娠や老化などを含めて心身の状態に関連して生じる問題を幅広く取りあげる、即ち一般の人々の生活途上の或る時期の或る状態を示すものとなった言えましょう。
従来の障害モデルの考え方は単方向であり、病気が機能障害を生み出し、機能障害が能力障害を引き起こし、その結果社会的不利が生まれると解釈されていました。これは社会的不利は本人の機能障害や能力障害によるものであり、重要なのは病気の予防や治療だという医学モデル、個人還元モデルで解釈するもので、総合的なリハビリテーションを困難にし、環境改善を視野の外に置くという影響をもたらしました。
これに対して、障害を構造として捉えようという問題意識は病気、障害が機能障害、能力障害を結果し、社会的不利を被るという一方向的進行を阻止するにはどうしたら良いか、問題の発生自体を阻止できないとしても、発生に伴う悪影響を阻止する事で問題に対処しようというものです。
私たちが市精連の活動を通して常に感じていた問題は、私たちの社会では病気や障害になる事が何故、即社会的不利を被ることに繋がってしまうのか、ということでした。
「病気・障害」⇒「社会的不利」という一方向的帰結を阻止する為には、何をすれば良いのかを考え、そのための取り組みのひとつが作業所やグループホームであったと言えましょう。作業所、グループホームの役割は将に地域リハビリテーションであり、リハビリテーションの目的は社会的不利の克服であると考えていました。
4. 精神障害の特徴
市精連では、今回のホームヘルプサービスの実施に先だって、加盟事業所の利用者に対して、対面調査によるアンケート調査を実施しました。調査内容及び記録の詳細については別添の資料をご参照下さい。
今回の調査は18事業所265名の利用者及び43人の職員(非常勤職員を含む)を対象に実施されました。
この項では、調査に当たった職員の感じた点から、精神障害の特徴についてまとめてみます。
・同居の家族が多くの生活場面を援助(または代行)しており、利用者本人は、生活そのものの体験が圧倒的に不足しており、親亡き後や独り暮らしについては、心配や希望はあっても、具体的に表現されない。
・圧倒的な体験の不足と共に、情報が不足しており、自分自身の生活をより豊かにしてゆく事をイメージする事が困難。
・病気の維持・管理・コントロールをする事に精一杯で、生活そのものを楽しむ余裕が無い。
・新たなサービスを利用するにあたっては、自分の事を詳細に語らなければならない(申請等)などの説明を受けると、それを感じただけで疲労してしまい、拒否的となるなど、新しい事実になじむ事が困難。また新しい入間関係・コミュニケーションも必要となるが、それになじむまでの経過自体がストレスとなりやすい。
・自分自身の生活を客観視する事が苦手で、周囲の者からみると命に関わる様な状況であっても本入にその自覚が無いという事態が生じる事がある。
・精神障害によって自己評価を低くしており、当たり前に暮らす事をあきらめてしまっている。
等があげられました。実際に調査にあたり、利用者とミーティング形式で話していると、「困っていません」「両親や兄弟がみんなしてくれるから」「親が死んだ後ですか。今は考えられません」といった答が多くの入から返ってきましたが、日ごろ援助に当たっている職員を交えて話してみると、困っている事や不安な事が、職員の援助を受けながら、語られてくるという場面には何度も遭遇しました。特殊な場面設定で本人ひとりでは、サービスを利用する為に必要な申請も、本人に必要なサービスを実現するものにはなりにくいのではないかと感じられました。
また、本人と周囲の援助者では、サービスの必要度に対する認識に相違が生じる事も確かにあり、周囲の者がいくら利用を勧めても本人は「いらない」と応じる様子もありました。新しい事象への対処が億劫であったり、新たに関係が生まれた入とのコミュニケーションを恐れていたり本当に認識が無かったりという事が理由の主なものと考えられます。
しかしながら、「新たなサービス利用の際に、日ごろから自分を理解してくれている援助者がつき添ってくれたらどうか」という質問には、9割の人が手を挙げていました。自分自身で自分を語る事の苦手さと効果的な援助方法を表している事象と考えられます。
精神障害とは一見しただけでは自明ではなく、入院から在宅へ、更に就労や単身生活へという具体的な地域生活への参入場面で現れてくるものです。これらの場面で現れてくる特徴は以下の様に列挙する事ができます。
[1] 統合的判断力、処理能力の低下
[2] 持続力の不足
[3] 被害関係思考・感情
[4] 復元力の低下
[5] 窮状の表現が下手
[6] 偏見からの不利益を受けやすい
また非常に特徴的なこととして、活動の可変性が挙げられます。身体障害などと違う活動の不安定性が、症状・機能障害の可変性や環境の変化の影響を受けやすいということで生み出されていると言えます。
身体障害者の場合、例えば浴室の構造によって入浴行為の自立度が変化します。これは環境による変化という点では同一ですが、その場合でも身障者の有している能力自体が変化するのではなく、有している能力が発揮されるかどうかという点が変化します。ここでは環境の変化によって、能力の変化ではなく実際の活動の変化が生まれます。これに対して精神障害者の場合、環境の変化によって能力自体が(当然実際の活動も)変化する事に特徴があると思われます。
精神障害は環境変化の影響を強く被ります。また本人の周囲の支援システムが乏しい人や、家族の疲弊や近隣との対立・孤立化による社会的偏見の増大など、社会的支援ネットワークの弱体化は再発、再燃の引き金となり得ます。従って地域生活を維持するための支援は個々のサービスが生活環境のどの部分をどう調整して、支援ネットワークを強化するかという総合的な視点が重要であり、これは将にケアマネージメントの機能です。
5. ノーマライゼーションの進展と居宅支援事業の意義
私たち市精連は従来よりノーマライゼーション推進の立場から、「病気」と「障害」の関係を以下の様に捉え、生活支援の方策を考えてきました。精神障害者が望む地域に於いて、普通の暮らしを送る事ができる為には、
・意欲の低下、快感自覚の低下、コミュニケーション機能の不調などの症状を有しながらの日常生活上の困難を「能力低下」{disability/障害(能力発揮不全)}と捉え、
・病気に対する良い医療と、同時に障害に対するリハビリテーションと社会福祉制度での支援が必要であり、そのために可能な限り障害が改善できる多様なリハビリテーションを用意し
・改善しない障害があっても安心して生活できる福祉支援制度を作り、
・障害があっても参加の制限を被らない社会的支援を行う事が必要です。
ノーマライゼーションとはどんな障害をもっていても、望む地域で普通の生活ができるように環境を調整する事に他なりません。そして場所のノーマライゼーションから参加のノーマライゼーションヘと進めて行く事が、今日の潮流です。
障害の捉え方も参加・活動を重視し、その制限、制約を軽減ないし克服する為の方策を考える方向へ変化してきています。私たち市精連は、今回実施される居宅支援事業は参加を一層促進しノーマライゼーションを更に推進する事業であり、またそういうものとして実施されなければならないと考えます。
居宅支援事業の核となるケアマネージメントは、本来調整すべきサービスが地域に複数あってこそ有効性を最も発揮できる援助技法であり、地域資源の貧困な精神障害領域でどれ程効果を発揮できるのか、という懸念もあります。しかしケアマネージメントには満たされないニーズに対するケア資源の開拓機能があり、地域生活に身近な自治体である市町村への権限の移管と併せて期待する所は大きいものがあります。
精神障害者に対するホームヘルプサービスの意義として、以下のような点が挙げられますが、将にこれらは私たちが従来より活動してきた所と重なるものです。
1. 地域生活上のニーズ充足(地域生活の維持)
2. 社会的入院から地域生活への移行の促進
3. 生活の質の向上
4. 家族の負担軽減
5. 援助に関わる多様な人材の育成
6. 新たなリハプログラムの構築
7. 医療を必要とする人々への接近の端緒
8. 障害種別間の福祉サービス格差と市町村施策格差の是正
私たち市精連は「将来的には総ての施設が利用者と職員だけの場所から脱皮すべきであり、利用者が外部から派遣されるホームヘルパーを契約に基づいて利用し、日中は地域社会の様々な場所に集団ではなく個人個人で出かけて行く様になれば施設と地域社会との垣根が無くなり、日本の施設の大きな問題である閉鎖性が払拭される。」(池末亨 全家連理事)ことを期待し、そのために今後更に力を注ぎ活動を充実して参ります。
6. 精神障害者の地域生活において必要な支援
精神障害者の地域生活において必要な支援について考える時に、近年、精神障害者の保健福祉ニーズを明らかにする為に、多くの調査が実施されているので、その報告を参考にしたいと思います。
ケアガイドライン試行調査報告(平成9年6月〜10月)によると機関利用者623人のうち90%強の人が何らかの「生活上の困り事」を抱えており、更に全国精神障害者家族会連合会の作業所等の地域活動に参加する障害者調査によると、調査対象3769人のうち回答を回収した60.8%の人が「日常生活で自信のないもの」の欄に何らかの回答を記入しています。また、市精連として実施した作業所・グループホーム利用者からの聞き取り調査でも、何らかの日常生活支援を希望する声が上がっていました。
またヘルパー派遣や生活支援のための訪問支援に関する必要性を明らかにした調査には、派遣が必要と判断される精神障害者の割合は、いずれも専門職判断・本人判断共に4割に達する部分があるという報告があります。
この事からも、多くの精神障害者は「生活上の困難を抱えており」、また何らかの「生活支援を希望している」事がわかります。
この項では、具体的にどの様な援助を必要としているのかについて、述べたいと思います。
*経済的支援
全国試行調査では「生活費などの経済的な問題」が約半数近くの利用者が困っている事として挙げています。
「生活費などの経済的な問題」は、現在家族と同居、及び施設入居者、病院入院中の精神障害者は単身生活を考える時に、また単身生活をしている精神障害者は、生活の質を考える時に、まず抱える問題です。
経済的支援を考える時、家族支援、障害年金、生活保護の受給、就労の確保等が挙げられます
* 就労支援
全国試行調査では、「仕事の問題」という事で、先の「生活費などの経済的な問題」とほぼ同じく約半数近くの利用者が挙げています。
「仕事の問題」は経済的な観点からだけではなく、日中の活動の場として、また自立した社会人として等、社会生活上の観点からも精神障害者は、仕事に就くという事を強く希望している事は周知の事実です。
就労支援を考える時、一般就労支援、障害者雇用支援、福祉工場等の施設就労支援等が挙げられます。
* 居宅における暮らしへの支援
・住居の支援
全国試行調査では、「住まいの問題」として3割近くの利用者が挙げています。
この「住まいの問題」は将来的な住まいと現在の住まいとに分けて考える必要があります。
全国試行調査の「利用してみたい生活の場」での調査では、「現状のままで良い」が5割、「一人で暮らすアパートや借家」が約3割、「仲間のいる自宅」が1割弱の希望です。
将来的な住まいの利用で調査結果を見た時、「一人で暮らすアパートや借家」が他の生活の場と比べて2倍近い人が希望を出している事に注目して考えると、現在の住まい調査の「現状のままで良い」という5割の人たちへの「住まいの継続保障」という支援が考えられるのではないでしょうか。
この2つの住まいに共通する問題として挙げられるのは、新規契約、または契約更新の際の保証人の問題です。更には、契約手続自体への支援も加えて、市精連の聞き取り調査でも挙げられていました。
「住まいの問題」は、この保証人の問題、契約手続きの問題の支援として挙げられます。また全国試行調査に挙げられている「家族関係の問題」(約3割)「家族以外の人間関係」(約2.5割)も「住まいの問題」と深く関わると考えられ、これらの支援をする事も「住まいの問題」の支援となり得ます。
* 日常生活支援
全国試行調査では今後利用してみたい「日常生活援助サービス」の中で、「専門職員による訪問援助」と「すぐに対応する救急サービス」がいずれも4割強であがっています。続いて、「同病の仲間の集まり」(4割)が多くの人にあげられています。また、「ホームヘルプサービス」「施設等での給食サービス」「管理人・仲間と一緒の共同住居」はいずれも2割強の希望者があります。市精連の聞き取り調査でも同様の意見が挙げられていました。
日常生活の支援では、在宅訪問と緊急時支援を中心に展開する必要があると考えられます。
この機能をなくしては、「ホームヘルプサービス」は充分機能できないし、来所できない利用者の支援には結びつきません。
この「在宅訪問」の実施と「緊急時支援体制」の確立は、早急に実施されるべき支援と考えます。
* 社会参加への支援
就労以外の社会参加への支援を考える時、生活支援センター・地域作業所・デイケア・当事者の会は精神障害者にとって大きな支援となります。
社会参加の窓口が自分の居住地域内に存在する事への希望は、市精連聞き取り調査の中からも多く挙げられていました。
また、当事者の会への参加は、施設利用だけでは得る事のできない大きな支援を、当事者は手にする事になるので、各地域で、発足・育成への支援は必須と考えられます。
これらが充実する事で、「余暇活動への支援」「情報入手への支援」とも重ねて実施する事が可能と思われます。
精神障害者の地域生活において必要な支援を、これまで述べてきましたが、精神障害者本人をひとつひとつのサービスにつなげるためには「相談機能の充実」が不可欠です。
「相談機能の充実」については、後段で詳しく触れますが、基本的には「利用者と話す機会を充分にもつ」、「充分に時間をかけて話を聞く事」、「利用者の身近な立場になって聞くこと」が重要になります。
これについては、全国試行調査でも、「じっくり話ができた」「意見を良く聞いてもらえた」「悩みなどを聞いてくれた」「自分の事を担当者が一生懸命考えてくれたのでうれしかった」等の声があがっています。また、市精連聞き取り調査でも同様にあってほしいとの意見が多数あげられていました。
7. 援助提供はどの様になされるべきか―再びその障害特性に応じて
これまでの様々な援助はどの様に提供されるべきなのでしょうか。
精神障害の特性をふまえたうえでの援助提供とは如何なるものなのでしょうか。「相談機能の充実」をポイントに更に深めて考えたいと思います。
精神障害者は、「窮状の表現が下手」「関心の幅が狭い」「現実検討認識が弱い」等の障害があり、結果として自らのニーズを意識できなかったり、表現できない事が多いためニーズ把握が難しく、ともすれば自己表現が表面的になりやすいという特徴をもっています。その特徴を念頭に利用者の「真のニーズ把握」を行おうとするならば、繰り返し利用者と話をする機会をもつ事が必要となり、その継続自体が支援そのものともなり得、ケアマネージメントのひとつの目標でもあるエンパワメントの向上にもつながるのです。
この事は、「利用者と共に活動する中から、信頼を基盤とした確固たる関係を作り、それにより利用者による自己表現が可能となり、自分自身では気付く事のなかった、自身の力に気付いたり、相談という行為により援助提供に結びつく」という地域作業所の実践の中からも明白な事実です。
また、援助者や仲間とすごす場を持たず、在宅生活のみを送りながら、社会との接点を望んでいる精神障害者に対する援助も重要です。この対象層のニーズ把握を行い、援助提供に結びつけていく事こそが今回導入されるケアマネージメントの真価といえるのではないでしょうか。
在宅の精神障害者が対象となる場合の相談機能は充分に時間をかけて本人や家族の話を聞き、真のニーズ把握が行える様に「訪問」「電話相談」(緊急時含む)の充実した機能を備え、更に「傾聴の姿勢」を持った専門職による援助が提供される事が重要と考えます。「関係の構築と継続」「真のニーズ把握」を可能とする為には「相談機能の充実」が不可欠と考えられます。
精神障害者の地域生活支援には「真のニーズ把握」の上に立った「複数の援助提供」が必要です。ケアマネージメント体制の下では、ケアマネージャーが、複数の援助を計画し、機能させる事になりますが、効果的な機能とする為には、利用者への伴走者的援助が必要です。ケアマネージャー自身がその役割を担う事が理想ですが、それが叶わない場合であっても利用者の傍らに立ち利用者と共に動いたり、場合によっては代理発言をする等のキーワーカーが必要です。
またケアマネージャーは複数の援助提供者間のコーディネイト機能も果たさなければなりません。関係機関による「ケア会議」の充実は、援助計画が効果的に実施される為には何にもまして重要です。
ケアマネージャー、キーワーカーは、共に精神障害者である利用者の「流動的事態を総合判断し対処する事が苦手」「全体把握、見通しをつけ段取りする事が苦手」「一時にたくさんの課題に直面すると混乱しやすい」という障害特性に充分配慮した援助を実施する為に必要な役割であり、その伴走者的援助は、精神障害者である利用者の自己決定能力の向上にも繋がるものです。また援助提供機関と利用者の仲介のみならず、援助機関間の仲介は、ケアマネージャーの重要な機能です。利用者のニーズに対応した援助が実施される様、調整の機能が重要です。ケア会議の充実については、各自治体のモデル事業の報告もありますが、横浜の状況をいち早く把握し効果的なケアマネジメント体制の導入となる様、モデル事業の早期実施が必要です。
8. 横浜市の精神障害者ケアマネジメント導入においては、以下の事項について、提言いたします。
*サービス供給・開発の責任を明確に。
・ゆめはま2010プランは、プラン策定時と昨今では経済状況が大きく変化していますが、横浜市の実施した調査時のニーズを充分理解し、新たな方向性も含めて早期実現を図る事がまずは肝要と考えます。
・援護寮の不足、及び偏った地域配置が、現在の利用を困難にしています。また生活支援センターとの連携についても、援護寮利用後の援助プランを効果的に策定できる様な配置が必要です。
・就労施策としての社会復帰支援センターや、福祉工場についてもプランヘの再掲をお願いします。
・グループホームの設置、住み替え家賃補助制度の他にも多様な住居形態が必要です。
* モデル事業の早期実施
・横浜市におけるケアマネジメント体制・ホームヘルプサービスの実施、啓蒙、普及の為にもモデル事業の早期実施が必要です。
* ケアマネジメント体制について
・ケアマネージャー養成研修に地域作業所職員で精神保健福祉士の有資格者を加える事。
ケアマネージャーに求められる資質は、精神障害者保健福祉分野関連、情報の把握・整理、利用者本人への理解、行政上の手続きなどに精通している事です。またケアマネジメントのモデルは近年、多様化されておりますが、ケアマネジマントが地域生活の制度化への一方的手段とならないように配慮できなければなりません。
・精神障害者のケアマネジメントを進めるにあたっては、利用者と共に動いたり、場合によっては代理発言をする等の援助機能は不可欠です。援助機関と利用者及び援助機関間の仲介の役割との並列が困難である場合は、利用者本人の了承に基付き、ケアマネージャー・キーワーカーによる2人体制を導入して下さい。キーワーカーについては、援助機関を限定せず、精神保健福祉士とすべきと考えます。
* 利用者へのサービス利用講座
・横浜精神保健福祉研究所では、毎年、利用者による体験発表会を実施してきました。
ケアマネジメント体制には、利用者による自己決定は不可欠ですが、これは、充分な情報提供と分析・処理の上に行われる事と考えます。
市精連では、この情報提供の部分へのアプローチとして、利用者を対象としたサービス利用講座を企画・検討しています。是非、横浜市と協力して継続的に実施したいと考えます。
* ホームヘルプサービスについて
・ホームヘルパー養成講習に横浜精神保健福祉研究所から講師を派遣し、精神障害者の日常生活や必要な援助について理解を深めてもらう為の支援を企画・検討しています。
日常、接する機会の多い職員や、また試行事業を実施した他都市でもヘルパーさんに好評を得た「当事者の体験談」など、効果的に精神障害について伝達が可能と考えます。
今日の養成研修は、殆どが高齢者対応のヘルパーと結果的にはなっており、知的・身体障害者と共に、精神障害者対応のできるヘルパーの養成は急務です。
* 生活支援センターについて
・精神保健福祉士の配置など、一定の要件を満たし、その意志ある地域作業所・グループホームを生活支援センターのミニセンターとして、機能させる。
ケアマネジメント体制の導入、地域生活支援には、その地域の住民をはじめとして、様々に地域との関係性を必要とします。横浜市内の地域作業所・グループホームは、その地域性をふんだんに持っています。
また地域点在の形態が、濃密で即応性のある援助の展開を可能にしています。
・ホームヘルパーの登録を可能にする。
精神障害者が効果的にホームヘルプサービスを利用するには、援助提供者であるヘルパーとの良い関係作りが重要です。様々な場面を共有する事が可能なセンターヘの登録制を実現しスムーズなサービス利用に導入できる様なシステムが必要です。
また、利用者のテリトリーでの、個別援助を実施するヘルパー自身への日常的な支援を確保する事も可能となります。
* 地域精神保健福祉サービスについての倫理。
・無危害・仁恵・公正・誠実・自律の原理は生命倫理の基本原則として認められています。ヒューマンサービス提供の倫理についても検討してゆく必要があります。