ぜんかれんニュース
第22号
平成13年8月17日発行
(財)全国精神障害者家族会連合会
〒110-0004 東京都台東区下谷1-4-5
TEL: (03)3845-5084/FAX(03)3845-5974
E-MAIL: zenkaren@zenkaren.or.jp
大阪小学校児童殺傷事件報道について
この事件に関するマスコミ報道については、ぜんかれん7月号の緊急特集で、詳しく検証しています。全家連には、事件当初よりマスコミの取材が殺到し、事件報道のあり方に関する見解を発表しております。現在でも、マスコミからの取材申込みは続いており、今後も家族の立場から精神障害者に関わる制度等について意見を発表していく方針です。
政府等への意見提出
7月上旬に、「触法精神障害者の処遇」についての検討を行っていた与党(自民党・公明党・保守党)による「心身喪失者の触法問題及び精神科医療に関するプロジェクトチーム」への意見聴取の依頼がありました。この意見聴取会には、日本精神病院協会、日本弁護士会等も参加し、いわゆる「触法精神障害者」についての法案に大きな影響を与えることが予想されます。
また、7月30日には、全家連を含む障害者関係16団体が、小泉首相と懇談会を持ちました。この際に、精神障害者施策に関する要望書を提出いたしました。
6月以来、全家連から発表した声明文、意見書等をお送りします。
| 番号 |
日付 |
件名 |
提出先 |
頁 |
| 資料1 |
6月8日 |
大教大池田小児童殺傷事件の報道について |
TV・新聞社等報道機関 約30か所 |
1 |
| 資料2 |
6月18日 |
小学校児童殺傷事件報道について |
報道機関、関係機関、行政機関等 約100か所 |
2 |
| 資料3 |
6月29日 |
児童多数殺傷事件の報道における精神科医の関わりについての要望 |
日本精神神経学会 |
4 |
| 資料4 |
7月9日 |
心身喪失者の触法問題及び精神科医療についての意見 |
与党心身喪失者の触法問題及び精神科医療に関するプロジェクトチーム |
6 |
| 資料5 |
7月30日 |
精神障害者施策に関する要望書 |
内閣総理大臣 |
8 |
| 資料6 |
8月2日 |
心身喪失者の触法問題及び精神医療の充実について |
与党心身喪失者の触法問題及び精神科医療に関するプロジェクトチーム |
6 |
ぜんかれんニュースについて
今回のぜんかれんニュースは、各都導府県連事務局・都道府県連会長、全家連評議員に送付しております。(本誌は随時発行しております)
この資料はコピー・転載等自由です。貴連合会および傘下の家族会等の、会報、例会等でもご活用ください。
企画部(担当:桶谷・川崎)
資料1 大教大池田小児童殺傷事件の報道について
2001(H13)年6月8日
(財)全国精神障害者家族会連合会
〒110 東京都台東区下谷1-4-5
tel 03-3845-5084/fax 03-3845-5974
担当: 事務局長 桶谷 肇
日頃、貴社におかれましては社会正義のため迅速で正確な報道のためご尽力されていることに対し深甚なる敬意を表します。
本会は217万人いるといわれる精神障害者(厚生省による)を身内に抱える家族の会であり、1965(昭40)年に創設され、現在、全国に約1600の家族会および47都道府県の連合会によって構成されています。本会は精神障害者の医療・福祉向上のため、精神保健福祉に関するさまざまな知識や情報の普及、精神疾患に対する偏見をなくすための啓発活動、行政に対する働きかけなどを行っています。また、精神保健福祉法の規定(精神保健福祉法51条の2)により、「精神障害者社会復帰促進センター」に指定されております。
このたび大阪府池田市で起きた事件で、被害にあわれた方の一日も早い回復を願うとともに、亡くなられた方々に対し深く哀悼の意を表します。またご家族の皆さまの驚きや悲しみをお察し申し上げます。
さて、この事件で逮捕された男には、精神病院の通院歴があったと報じられていますが、その記述については、私たち身内に精神科治療を受ける者を持つ立場から見て重大な疑義を感じざるをえません。記事(番組)の中で報道されている「男は…精神病院に通院中で…」という部分は、その表現(以下、病歴報道)によって、読者(視聴者)には「精神疾患」が事件の原因であり、動機であると理解されてしまいます。その結果、「精神病者(精神障害者)はみな危険」という画一的なイメージ(=偏見)を助長してしまうと考えるからです。
報道機関には、「容疑者が精神障害者である場合に、その本人の人権保護の目的で匿名にする」という原則があるようですが、精神科の病歴報道はそうした意図に反して精神障害者一般を危険視するような報道になってしまっているのではないでしようか。
妄想や幻聴などの症状は薬物療法でコントロールしやすいといわれています。通院中だったとだけ報道するのではなく、通院中にもかかわらず、なぜこんな事件が起きたのか、服薬はきちんとしていたのかなど、事件の背景をきちんと取材し、今後の教訓となるような報道をしてください。
どの病気でも「早期発見・早期治療」が大切なのは言うまでもありません。しかし、「精神障害者は危険」という偏見の存在が、精神科医療につながることをためらうような風潮を助長しているとしたら、二重に不幸なことだと考えます。
現在、入院患者だけで約33万人、通院医療費補助受給者だけでも約34万人が精神科に受診しており、約200万人近くの患者が精神科に入院・通院しています。こうした人たちの立場や気持ちにも配慮した記事(番組)づくりをお願いいたします。
資料2 小学校児童殺傷事件報道について
2001年6月18日
(財)全国精神障害者家族会連合会
〒110-0004 東京都台東区下谷1-4-5
TEL 03-3845-5084/FAX 03-3845-5974
今回の事件はあまりにも痛ましく、亡くなられた方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。あわせて、被害に遭われた方々の一日も早いご回復を願っておりますとともに、被害者・ご家族が負われた「心の傷」の深さはいかばかりかと、お察し申し上げております。
今回の事件は、事態があまりにも悲惨かつ衝撃的であるために、マスコミもできるだけ多くの情報を国民に提供しようと、さまざまな角度からの報道がされています。そうしたなかで、犯人の入・通院歴や病名が重要な要因であるかのように報じられ、「精神障害者の犯罪」という図式が形成されてしまいました。しかし、事件と病気・障害の関係性が明らかになっていない段階でこうした報道をすることに、私たちは強い懸念を表明します。
犯人については、当初「精神安定剤依存症」、「精神分裂病」あるいは「妄想性人格障害」と報じられ、その後、「犯人は精神障害を装っていた」とも報じられています。こうした安易な報道によって、「精神障害者は危険だ」という社会の偏見がより強くなりました。そのため全国に200万人以上いる精神障害をもつ本人、そしてその家族は本当に身の縮む思いをしています。本会には毎日、本人・家族から「近所の人から危険な人と思われているかと思うと、暗い気持ちになり、外に出られない」「落ち込んで、どうしてよいのかわからない」「子供の具合が悪くなるので、テレビも新聞も見せられない」という電話、手紙が次々に寄せられています。今回の報道によって、精神障害をもつ本人・家族たちも困惑し、大きな「心の傷」を負っています。これは「報道被害」であるといっても過言ではありません。
私たちはこれまでにも繰り返し主張していますが、改めて以下のことを要望します。
[1] 事件の報道をする場合、警察発表であったとしても、事件の背景、病気の状態などが明らかになっていない段階で特定の病名や通院歴・入院歴を報道するべきではないこと。
病名や通院歴・入院歴を報道するのは、匿名にするためのマスコミ側のルールに基づくものであると聞いています。しかし、そのルールが精神障害をもつ本人やその家族など多くの人を傷つける結果となることが明らかな以上、配慮のある報道をするべきです。
[2] 法的責任能力の問題を精神障害に置き換えて報道しないこと。
こうした事件がおきるたびに、精神障害者であれば、一律に法的責任能力がないかのように報道されています。しかし、約200万人の精神障害者の大半は、生涯にわたって社会的に法的責任を果たすことができる人たちです。
精神障害の問題と責任能力の問題は同一に論議するべきではありません。まして、今回の事件のように、精神障害を装う場合もあり得るので、この種の報道は慎重にすべきです。
[3] この事件と触法精神障害者の処遇問題を安易に結びつけないこと。
この一連の事件報道のなかで、マスコミは“触法精神障害者の問題”を短絡的にとりあげています。しかし、この事件の被疑者(犯人)については起訴されるかもしれないことを念頭に置く必要がありますし、それ以前の事件についても、従来論じられてきた“触法精神障害者の問題”に当てはまらないかもしれないことを考慮して正確に報道するべきです。
資料3
全家連発第74号
平成13年6月29日
社団法人日本精神神経学会
理事長 佐藤 光源 様
財団法人全国精神障害者家族会連合会
理事長 古屋 治男
児童多数殺傷事件の報道における精神科医の関わりについての要望
貴学会におかれては、日頃、本会に対してご懇篤なご支援をいただき、深く感謝しております。
さて多忙中まことに恐れ入りますが、このたび頭書のことについて、本会として要望を申し上げたく、以下に要点を記させていただきました。報道に関与する精神科医の倫理規程制定などに向けて、格別のご配慮いただければ誠に光栄に存じます。
記
去る平成13年6月8日の大阪府池田市の小学校で起きた児童殺傷事件は、まれにみる痛ましい事件でありました。本会も深い悲しみをもって報道に接しており、会員一同、被害に遭われた方々に深い哀悼を捧げるものであります。
さて、貴学会もご承知のように今回の事件は、早々にただただ「精神障害によって引き起こされた事件」として報道されました。そのために、本会会員とその家族である患者はもちろん、精神科にかかっている多数の「精神障害」をもつ人たちに、大きな心理的な痛手をもたらしました。そしてその後も、被害があまりに大きいところから、被害に遭われた方々の報道が連日のように続き、やむを得ざるとはいえ「精神障害」をもつ人とその家族の負担感を倍加させつつあります。
本会としては、さきに平成13年6月18日付けで、新聞社などマスコミ関係者に対して、以下のとおり、偏った報道をしないよう声明と要望書をお送りいたしました(同封別紙をご参照ください)。その中では、[1]事件の背景、病気の状態などが明らかになっていない段階で、特定の病名や通院歴・入院歴を報道すべきではないこと、[2]「精神障害」をもつことをもって社会的な責任を果たせないとみてはならないこと、[3]今回の事件の容疑者を直ちに「いわゆる触法精神障害者」として断定するような書き方をしないことを要請し、このような事件報道には、精神障害者に対する一般社会の誤った認識を拡大しないためにも、慎重な報道を求めました。
今回の事件を振り返ると、事件後数日のマスコミ各社の報道は、「精神障害」による入通院の繰り返しがあったこと、「精神障害」のために起訴されず措置入院になったことがあったことなど、容疑者の個人情報は病名・入通院歴に偏って報道されました。
この経過のなかで、報道機関は当然のように精神科医に解説を求めました。これに対して、多くの精神科医たちは、容疑者を直接診察することもなく、また事件に関わる容疑者の個人的事情や社会的背景などが開示されていない段階で、病名を断定したり、容疑者の犯行との関連をコメントしていました。たとえば、事件当夜のテレビ番組の1つで、ある精神科医は「事件は、精神分裂病の幻覚や妄想のために起きた」と断言していました。本会としては、このような精神科医の解説は、いたずらに一般社会の偏見を増幅させ、「精神障害をもつ人たち」への不安をかき立てたと言わざるを得ません。
今回の事件の報道は、きわめて偏った素材をもとに、事件当初より「精神障害者=責任無能力者」の問題として報道の基調が形成されました。そして、前述の精神科医はこれらの報道に結果的に共鳴し、その流れを促進する役割を果たしました。これまでも「精神障害者」が関与する事件に対する精神科医の同様の関与は繰り返し行われてきました。しかし今回のような社会的影響力が特別に大きな事件に際して、本会はこの事態を極めて深刻に受け止めざるを得ません。今後、このようなことが再び繰り返されることのないよう、精神科医療関係者が対応策を真剣に検討していただくことを心より希望いたします。
もちろん、本会は、新聞やテレビに精神科医が登場してはならないと考えるわけではありません。事実関係が明らかになった後に、おそらくは多くの人が求めるであろう情報の一端を解説することも精神科医の役割と考えます。しかし、社会的信用のある専門家の立場で、事実に基づかずに、病気・障害と犯罪、そして精神障害と責任無能力を安易に結びつけることのないよう、心よりお願いいたします。このことによって、精神障害をもつ人たちの心はさらに傷つき、家族は深刻な困惑に陥るからです。精神科医療関係者には、最低限の倫理意識を持っていただきたいと願っています。
要すれば、貴学会におかれましては、報道における精神科医の関わりについて改善策を探っていただくことを要望いたします。具体的には、報道における精神科医の倫理規程を作成していただくことを、本会として強く希望いたします。この問題は精神科に特有の問題でもありますから、一般的な医の倫理規程には重ならないようにも思いますので、ぜひとも貴学会において、独自にご検討いただければと存じます。
なお、本会は今回の病名・入通院歴に関する情報の提供方法に看過できないものを感じております。容疑者に対する対応に一応の決着をみたところで、厚生労働省、法務省、警察庁等行政当局に何らかの働きかけ、要請をする予定であることを申し添えさせていただきます。
資料4 心身喪失者の触法問題及び精神医療についての意見
平成13年7月9日
財団法人全国精神障害者家族会連合会
意見を述べるにあたって本会はまず以下の点に留意しました。
ア. 多くの「精神障害者」は社会的に責任をとれる人たちであるので、その人たちに不必要な脅威を及ぼさないような配慮が必要であること。
イ. 混乱の一端は、「いわゆる人格障害」が強制医療の対象であるかどうかについて専門家の意見に一致がない点にあると考えられるので、責任能力の判定のための新しい仕組みが考慮される必要があること。
以下3点について本会の意見を述べさせていただきます。
I 重大犯罪で心神喪失が疑われる場合の精神鑑定のあり方について
要点: 精神障害者であっても責任能力がないのは例外的な場合であるので、責任能力の判定は十分に慎重に行い、安易に責任無能力として不起訴にすべきではないと考えます。
[1] 責任能力の判定を慎重に行うことができるようにするために、責任能力判定の前提になる犯行時の精神状態を評価するためのアセスメントを行う機関を設置し、重大犯罪については起訴前の鑑定留置あるいは起訴後の鑑定をこの機関に行わせ、その判定を受けて、審判所が人権侵害がないかどうかを判断した後に”期間を定めた”治療命令を出すようにするのはいかがでしようか。
[2] 上記、アセスメント機関は厳正に中立性・公平性が保たれなければならないので、独立機関としてその組織のあり方や位置づけについて慎重に検討する必要があるかと思います。
II 将来に向けた精神医療の方向性について
要点: 長期的な視野で精神医療の抜本改革に取り組む必要があると思います。
[1] 触法精神障害者についての特別な処遇を打ち出すからには、一般の精神医療から社会防衛的要素は払拭しなければならないと考えます。
ただし、本問題についての詳細な検討は本会としても今後の課題です。
[2] 触法精神障害者を検討することが、精神障害者を危険視し、その人権を必要以上に制約しようとするものではないことを十分に理解してもらうために、精神医療全般における人権上の配慮を長期にわたって行っていく必要があると考えます。
III 精神医療関連問題についての当面の具体的要望
[1] 精神医療全般の医師、看護者の数を一般医療なみに増員することやその他の医療環境を充実させることなしに、触法問題のみを検討するのでは、本当の改革にはなりません。触法精神障害者の問題の検討に並行して、精神医療全体についての水準をあげるよう検討してください。
[2] 池田小学校事件等による報道被害の結果、精神障害者は危険であるという偏見が助長されています。精神障害者に対する偏見の除去と、社会参加の促進のための具体的施策をぜひ取り上げてください。当面、政府が主導して精神障害者に対する偏見撲滅キャンペーンや精神分裂病の病名変更プロジェクトを強力に推進すること、及び障害者間差別解消のための施策を推進することなどを希望します。
参考図
「責任能力を欠く疑いのある者」が引き起こした重大な事件への対応の流れ
資料5 精神障害者施策に関する要望書
財団法人全国精神障害者家族会連合会
触法精神障害者対策の見直しに際しては、不幸な事件をあらかじめ防ぐためにも、精神科医療と福祉施策の充実を同時に実現してください
1. 偏見是正の対策を実施してください
[1] 精神保健福祉に関する学校教育の実施
10代から精神疾患を発病します。早期治療のためにも必要です
[2] 政府広報等による脱偏見キャンペーンの実施
マスコミ報道により精神障害者は危険といった偏見が強化されました
2. 精神科医療を一般医療並に引き上げてください
[1] 社会的入院患者の解消とベッド数の削減
7万人以上が社会的入院といわれています。世界的にも異例のベッド数の多さと長期入院が日本の精神科医療の悪しき特徴です
[2] 他科に比べて少なくてよいとする人員配置の改善
48人の患者に医師1人(一般科の3分の1)では、充分な医療は確保できません
[3] 精神科救急体制の抜本的改善
多くの家族が病院や保健所に相談しても対応して貰えなかったという経験があります。24時間安心して受診できる体制を設けてください
3. 他の障害者に比べて格差のある福祉施策の是正
[1] 社会復帰施設の設置促進のための対策
施設が増えず、障害者プランの目標数値の達成が危ぶまれています
[2] 精神保健福祉手帳のサービス拡大
サービスが少なく、取得者数が伸び悩んでいます
[3] 障害者雇用率の適用およびその他の雇用施策の推進
精神障害者だけが雇用率の対象になっていません
4. 「親なき後」の心配をなくす手だて
[1] 保護者規定の撤廃
過重な義務を課すのではなく、家族を支援してください
[2] ホームヘルプなど地域生活支援体制の完全実施
来年度から始まる事業が確実に市町村で行われるようにしてください
資料6 心神喪失者等の触法及び精神医療に関するプロジェクトチーム所属議員 各位
全家連発第95号
平成13年8月2日
財団法人全国精神障害者家族会連合会
理事長 古屋 治男
心神喪失者の触法問題及び精神科医療の充実について
I. 総括的な意見
ア. 多くの「精神障害者」は社会的に責任をとれる人たちですので、その人たちに不必要な脅威を及ぼさない最大限の配慮を行ってください。精神科医療自体にいま必要なことは、社会防衛的なものを減らし、ノーマライゼーションの理念に大きく近づける点にこそあると考えます。
イ. 改革の一端として、新聞報道には、措置入院における入・退院に際して司法の関与を必要とする意見を散見しますが、本会は強く反対します。これは問題の拡散であり、取り締まりの幅を精神障害全体に広げることにほかなりません。
ウ. 触法精神障害者に限って特別な対応策を考える場合であっても、医療に司法を持ち込むかたちをとってはならないと考えます。医療の中に司法が加わることは、患者の人権を守ること以外にはあり得ないはずです。
エ. 池田小学校事件を契機とした論議における混乱は、「いわゆる人格障害(一部に薬物中毒等を含む)」の対応について関係者の認識に一致がない点にあると考えます。さらに、過去に入院や通院の経歴があることをもって現在の精神状態を即断しがちな点も指摘しなければなりません。これらを解決するために、本会は、重大犯罪に関連した責任能力の判定について新しい仕組みを導入することが必要と考えます。
II. 触法精神障害者の問題について
1. 精神障害者であっても責任能力がないのは例外的な場合であるので、責任能力の判定は慎重に行うことが必要です。責任能力の判定を慎重に行うことができるようにするためには、責任能力判定の前提になる犯行時の精神状態を評価するためのアセスメントを行う機関を設置し、重大犯罪については起訴前の鑑定留置あるいは起訴後の鑑定をこの機関に行わせるようにすることを提案します。
2. また、責任能力を欠くと判定された精神障害者であっても、一律に常に裁判を受ける義務・権利がないとされてよいかどうか検討することを希望します。
3. さらに司法施設における精神科医療の体制の強化を望みます。
III.将来に向けた精神医療の方向性について
1. 一般の精神医療から社会防衛的要素を可能な限り払拭できるよう、施策の方向づけをしてください。
1) 従来の措置入院の他害要件を見直し、医療保護入院あるいは移送における保護者の同意要件は廃止すべきです
強制入院を患者本人のための医療目的に一本化して、判断能力を失って自ら入院治療の必要性を理解できない状態にある者について、入院によらなければ有効な治療が行えないような場合に限定して、公的責任に基づいて強制入院を行わせることを定めることが望まれます。
2) 精神医療全般において人権に対する配慮を従前以上に示す必要があります
触法精神障害者を検討することが、精神障害者を危険視したりその人権を必要以上に制約しようとするものではないことを十分に理解できるようにする必要があります。
3) そのために、精神障害者の人権に配慮し治療上の権利を明確にすべきです
[1] 精神保健福祉法第4章「医療及び保護」の規定を、精神障害者を権利の主体とした規定方法に変更すること
(例「精神病院の管理者は・・・同意に基づいて入院が行われるように努めなければならない。」とあるのを「精神障害者は、第33条の場合を除いては、その意に反して入院させられない」と改正)
[2] インフォームドコンセントなどの患者の基本的な権利を定めること
[3] 精神医療審査会の構成について、医師の人員に対し法律、福祉の委員数を増員すること
2. 精神医療全般について医師・看護数を他科の医療と同一の水準にすることが必要です。
3. 精神科救急体制に抜本的な改善をしてください。
4. 一般病院における精神科の設置を推進してください。
IV. 社会参加、福祉施策の充実について
1. 自治体における社会復帰施設等の設置促進のための対策を講じてください。
2. 自治体におけるホームヘルプ等地域生活支援体制の整備の後押しをすすめてください。
V. 総合的な社会復帰施策の推進
1. いわゆる社会的入院の退院について、精神病院等の将来像、障害者プランとの関連性を考慮しながら実体のある計画をつくってください。
2. やむを得ず長期入院を継続せざるを得ない精神障害者については、少なくとも他の福祉施設における家族負担と同等程度にきょうだい等の負担を軽減してください。
3. 保護者制度を撤廃してください。
VI. 障害者雇用就労体制の整備充実
1. 精神障害者にも障害者雇用率の適用をはかってください。
2. その他精神障害雇用・就労について医療・保健・福祉・労働それぞれの責任分担を明確化し、併せてそれらにまたがる施策の推進をはかってください。
VII. その他
1. 精神保健福祉に関する学校教育の充実をはかってください。
2. 政府広報等による脱偏見キャンペーンを実施してください。
3. 精神保健福祉手帳のサービスを拡大してください。