3 全家連・中央施策動向報告
財団法人 全国精神障害者家族会連合会
田所 裕二
I.大阪・池田小学校児童殺傷事件への対応
1.匿名一病歴報道の問題と是正を要望
1)事件当日にテレビ・新聞各社(30数か所)に要望書を送付(6月8日)
2)精神障害との関係が明らかでない段階で、病歴を報道すべきではない
3)マスコミ各社からの取材に対応
2.池田小学校の事件による報道被害
1)報道により偏見を助長し、当事者・家族が動揺しているとの声明文(6月18日)
2)毎日新聞社の調査に協力(東京・大阪の家族会を通じて500票配布)
3)全家連として報道被害全国調査を実施・集計中 (家族会のある病院約300か所、医師900人、当事者・家族各3000人)
4)日本精神神経学会に対し、精神科医の倫理規定制定を求める要望(6月30日)
5)ぜんかれん誌7月号で、当初予定のテーマを急きょ差し替え、報道の問題を特集
3.触法精神障害者の処遇問題
1)7月9日与党プロジェクトで意見聴取(責任能力の厳密な判定を)
2)8月2日与党プロジェクト他関係議員に要望書を提出 (医療・福祉施策の改善、偏見是正キャンペーンの必要、医療に司法を持ち込むことには反対、司法施策として触法対策を、責任能力を判定する機関の整備を)
3)10月5日自民党プロジェクトでヒアリング(トータルな施策の構築を)
II.諸制度の改革・改善への取り組み
1.精神保健福祉手帳のサービス拡大をめざす国会請願200万人署名運動
1)第2弾の54万人分の請願提出(5月30日)
2)衆議院厚生労働委員会、衆議院国土交通委員会、参議院厚生労働委員会で採択 前回は、衆議院運輸委員会(現・国土交通委員会)で審議未了(=否決)となっており、今回は一歩前進
3)行政や地方レベルの交通機関等でのサービス拡大の要望活動強化が課題に
2.小規模授産施設への移行促進
1)小規模授産施設設置運営研修会を、東京(2月1・2日)・大阪(2月8・9日)で開催
2)今年は、札幌、大阪、岡山で開催予定(全国精神障害者地域生活支援協議会と共催)
3)従来事業(小規模作業所運営助成)の継続推進を強力に運動
3.ホームヘルプサービスの普及に向けた取り組み
1)ホームヘルパー研修会を朝日新聞厚生文化事業団と共催
→大阪(7月20・21日)、東京(7月28・29日)、名古屋(8月4・5日)、
2)ホームヘルパー研修試行事業(厚生労働省委託事業)の実施
→ヘルパーを対象に全国4か所で予定(東京2回、石川、兵庫)
3)2002年度実施に向けた課題
→窓口は保健部門か福祉部門か
→相談事業に係る生活支援センターとの役割区分
→「家事援助」「身体介護」が他障害並となり、「相談支援」が脱落の危機
→費用負担に係る減免基準と同居家族総所得カウント制
→国(厚生労働省)からの具体的な指針の提示が遅れている
4.欠格条項の見直し作業および法改正の促進
1)2002年までに欠格条項の見直しを実施(内閣府障害者施策推進本部)
2)6月、医師法等厚生省関係の31制度の欠格条項が改正
→撤廃/絶対的を相対的欠格事由へ/障害名列挙でなく「心身の障害」云々に
3)6月、道路交通法の改正により運転免許の欠格条項が改正
→絶対的欠格事由から相対的欠格事由に
→「幻覚を伴う精神病」という記述が残り問題
→実際の手続きがどうなるのか、警察庁と協議
4)8月、船舶職員法施行規則及び水先法施行規則一部改正への意見募集
→「精神障害」という概念や特定の疾患名で資格制限をしない
5)9月、運転免許の処分基準等見直し素案へのパブリックコメント募集
→「精神分裂病」他、特定な疾患を実質的に規制強化するのは問題
5.障害者雇用率への摘用
1)厚生労働省で、精神障害者の雇用率適用を検討中
→8月24日精神障害者雇用研究会報告書を発表
2)障害者プランでも14年度までに検討を行うとあり、山場を迎えている
3)雇用者側の消極姿勢により、適用されるかどうかはかなり厳しい状況
4)状況によっては、各都道府県連や家族会に呼びかけ、要望行動を展開する場合も
6.全家連での政策委員会を設置
1)所得保障委員会の設置
→安心できる所得保障のあり方を検討するため委員会を設置
→障害年金や生活保護等の実態を明らかにし、要望書をまとめる
2)雇用就労委員会
→雇用率の適用へ向けた司令塔
→雇用・就労支援の啓発事業等の推進
7.新年度税制改正へ要望
1)精神障害者社会復帰促進センター事業の非課税化
2)精神障害者居宅生活支援事業の非課税化
→印紙税 登録免許税、都道府県税、市町村民税、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、特別土地保有税、事業所税
8.新年度予算へ緊急要望
1)小規模作業所運営助成事業の前年度実績を維持
2)ホームヘルプサービス事業費の満額確保
3)精神障害者社会復帰サービスニーズ調査実施費用の満額確保
4)精神障害者を障害者雇用率の対象に
9.課題
1)2002年終了の障害者プランに変わる「新」プランを提起
2)2003年の支援費制度本格導入や介護保険制度見直しに向けた検討
→措置から利用・契約へ、自己選択・決定・責任、苦情解決・第三者評価、利用者負担
3)保健、医療、福祉、司法を含めた、地域でのトータル構想の提起
4)国際障害分類改訂版(ICF)の精神保健分野に関する広報・解説
→医学的・訓練中心から生活モデル(地域生活)重視へ
5)精神科救急・移送制度、通院医療費、医療法・医師法(特例廃止・診療報酬制度)、新薬開発・薬価基準、所得保障、住まい、などへの取り組み