3.作業所運営の課題
(1)事業の公開性・透明性がなぜ必要か
・補助金(公金)を主たる財源とした公益的事業であることからの必然性
・事業の本来的な主体は利用者であり、十分な情報提供が必要とされるということ
・福祉サービスの特質(利用者は相対的に弱い立場にあるということ)により、意図せぬ権利侵害の恐れをはらんでいること
(2)運営主体に求められるもの〜事業の社会的責務と求められる役割〜
〔作業所の公的性格の認識〕
・作業所は、設立者等の私的所有物ではなく、広く社会的な財産であること
・補助金は、作業所を運営している団体や個人の「がんばり」に対して支払われているのではなく、事業の公的性格に根ざしてその運営の一部を財政的に担うものであること
・ひとつひとつの作業所は、単独で存在しているのではなく、他障害の作業所も含め、多くの人々の運動と実践の蓄積の歴史の上にあり、自分たちの実践もその歴史の一翼を担っていること
(3)家族会活動と作業所運営の課題
・精神障害者作業所は、他障害の作業所から派生し、その後、多くは家族会により設立・運営されてきた
〔家族会立作業所のパターン〕
a)家族会活動の中から自発的に生まれてきた作業所
b)保健所等の行政機関によって、家族会の名の下に(あるいは作業所運営のために家族会が結成されて)設立された作業所
貧困な精神保健福祉施策
・行政の家族会への依存(行政の責任転嫁)が、家族会による作業所づくりを
推し進めてきたという側面を見逃してはならない
…長い間、家族会運営でなければ作業所への補助金を出さないという自
治体が存在してきたが、これは、家族会活動の実績への評価・信頼ということの反面、家族会の持つ強い使命感や責任感を利用した「安上がり福祉」施策のあらわれという側面も持っている。
「よりよい支援サービスを求める」という立場からの、作業所づくりへの参加を |
家族は、障害者本人とまたちがった意味で、精神障害者問題を抱える当事者。「もっとよい支援サービスを」と求めていく立場である。
作業所づくりは、そのことを自分たち自身で実現する過程であったし、今後も、そのような支援活動に直接的に参画することはとても意義深いことである。しかし、家族(会)だけで作業所を抱え込むと、日々の活動の維持や資金づくり等の事業運営に翻弄され、本来求めていた「よりよい暮らしを」という切実な願いが埋没されていく危険をはらんでしまう。
事業を背負わされるのではなく、家族としての体験や家族会活動の成果を、よりよい作業所づくりに反映させていくという視点、関わり方が大切。
4.今後の地域活動の課題
(1)小規模通所授産施設に対する国の補助基準のさらなる充実と、自治体補助の拡充
・国の基準額は、日本中どこにいても最低限のサービスが受けられる体制をつくるという意味で、十分な額の確保が極めて重要
【平成13年度の国の補助基準額】
運営費 1100万円(年額)※国1/2、都道府県1/4、市町村1/4
施設整備費 2400万円(上限)※国1/2、都道府県1/4、設置者1/4
設備整備費 800万円(上限)※国1/2、都道府県1/4、設置者1/4
・国基準は全国の最低基準であり、各自治体は、その地域特性に見合った基準を設定することが必要
(例えば)
自治体の運営費基準額を国基準以上のものとすること(特に、現行の作業所補助基準額が既に小規模授産施設への国の補助基準額を上回っている自治体では、「(作業所から小規模通所授産施設への)移行」を魅力あるものとするだけの基準額設定が不可欠)
資産確保における自治体からの支援(現金資産、不動産等の提供)
家賃補助等、施設確保のための経費の助成、公的施設の無償提供
利用者の通所交通費の助成
イブニングケアや夜間休日相談等、授産施設としての日常活動に付随されて実施される事業への経費助成
その他、地域の実情に照らして必要とされる経費の助成
(2)「無認可」として残る作業所にとっての今後の課題
・「小規模通所授産施設」の創設は、すべての作業所にとっての法定化とはいえない
…理念が違う、活動内容が「授産」と合わない、資産をつくれない、事業実績(年数)が足りない、人数規模要件が足りない、自治体において予算化されない、等
→移行したいができないところと移行したくないところが残る。そしてさらに今後も作業所自体が増え続ける(新設)ことも予想される。
〔当面の課題〕…小規模通所授産施設、作業所、双方の拡充が必要
[1]小規模通所授産施設の拡充の視点から
・補助基準額のさらなる充実が図られること
・作業所が狭義の「作業」にとらわれない幅広い活動を展開してきたように、「授産」にとらわれない活動が大幅に認められることにより、移行の促進が図られること
・利用者10人未満の作業所に対し、小規模授産施設を本体とした分場方式の適用等、何らかの救済策が講じられること
・小規模通所授産施設における活動の充実を図るとともに、そこからさらに新たな課題を見出し、今後の施策づくりへの取組みを行っていくこと
[2]作業所の拡充の視点から
小規模通所授産施設に期待を集めるあまり、作業所の補助金の低さ、公的支援の弱さが放置されることが懸念される。作業所そのものが担ってきた活動を積極的に評価し、さらなる拡充が図られる必要がある。
・福祉的デイサービス機能に着目した、作業所活動への再評価と公的支援の拡充。さらに今後の新たな国レベルでの施策の整備
・現在の作業所活動総体についての概念整理と、施策の抜本的改正
・「施設内処遇」を軸とした従来の施設観からは見えてこなかった、「地域に支えられて存在する」「地域での暮らしを前提とする」という作業所の持つ特質に、今後の社会福祉のあり方を考える基盤があることを認識し、その支援施策の充実と、実践内容・方法についての理論化を図ること
(3)居宅生活支援事業、地域生活支援センター等、関連事業と作業所の課題
・地域生活支援センターは、1999年の精神保健福祉法改正により社会復帰施設のひとつとなり、それまでの「社会復帰施設への附置事業」から独立した施設に位置づけられることになった。従来より、運営主体は市町村または非営利法人とされているが、市町村の事業とした上で「都道府県知事の認める団体」に委託できることから、作業所等の任意団体が実施している例も増加している。
「大きな施設の中の1室」という形から脱却し、地域の中につくっていくことがより求められてきている。
…作業所のように、地域の中から生まれた活動体が、積極的にこの事業に参画していくことが大切。
・また、小規模通所授産施設による社会福祉法人については、地域生活支援センターの運営ができることになる。それまで市町村からの委託事業としていたところは、社会福祉法人となることで直接的な実施主体となることができる。
・グループホームに関しても、小規模通所授産施設による社会福祉法人で運営できることになった。精神障害者の生活支援において、地域を基盤とした活動を総合的に推進していくという観点から、作業所を基盤としたグループホームづくりに加え、社会福祉法人運営によるグループホームの増設の意義は大きい。
・ホームヘルプ事業(平成14年度〜)や地域福祉権利擁護事業(平成12年度〜)等、精神障害者の地域生活に関わる様々な事業が格段に拡充されていくことが期待されている。作業所はこれまでの実績を生かしながら、それらに積極的に参画していくことが必要である。
第3分科会「病院と家族会」
<9月5日(水)13時〜14時40分>
会場:チロル(7階)
病院と家族会との関係をSSTの手法を応用し、参加者全員が主役となって、事例をとおして、いろいろの角度から討論し、適切な方法をさぐります。
司会者 |
藤倉弘正 |
(群馬県立精神医療センター) |
講師 |
浅見隆康 |
(群馬県立精神医療センター) |
病気のところと病気でないところ
群馬県立精神医療センター浅 見 隆 康
@どうして良いところを探す!?
どのような時でも具合の悪くない部分がある
どういうところが具合が悪くて、どういうところが具合が悪くないのか
自分だけではなかなか子どもの良いところは見極めにくい
皆で良いところを探す
@部屋に閉じこもりたがる
具合のいい時?あるいは悪い時?
具合の悪い時は一体どのように神経が働いているんだろう
神経の働きが過敏になりすぎている
だから外に出たくない
閉じこもるのは苦肉の策
@夕方具合が悪くなる
一日中具合が悪いのではない
一日のうちで具合の悪い時と悪くない時がある
何でそうなんだろうか
神経の疲れ?活動期から休息期への変化のせい?
対処法を考えることができる
頓服薬、16時のクスリ、など
@全か無かという考え方
患者は少し良くなっただけでは、良くなっていると認めない
どうしてなんだろうか
ささやかな事に喜びを見出だすのが苦手
そういう育ち方をしているのかもしれない
家族も全か無かというような考え方をしている場合がある
家族の影響でこのような考え方になるのかもしれない
恙ないことがなにより
@予測がつかない行動をとる
患者は時々予測のつかない行動をとったりする時がある
何で相談できないのだろうか
我慢という対処法に問題がある
繰り返ししゃべることによって、言葉で自分の気持ちを適切に表現できるようになる
しゃべることによって、自分の考えが整理できる
いろいろな人から助言が得られる
@クスリを飲んでいても病気がなおらない
きちんとクスリを服用していても症状が改善しない場合がある
意欲が出る、自分の気持ちが話せるようになる、自分の気持ちが伝えられるようになる、などの面については、現在市販されているクスリは効果が少ない
クスリだけの治療では改善は不十分
クスリは主作用もあるが、副作用もある
服用の意義を患者も家族もよく知っておく
@回復に時間がかかる
これが病気の特徴で、時間がかかるのは当然。
はじまりは生活面の異変なので、どうしても治療の開始が遅れる
病気がはじまって、治療の開始が早ければ早い程、回復も早い
@どういうところが病気なのだろうか
幻覚や妄想は症状であって、病気の結果生じてくるもの
幻覚や妄想 = 病気と捉えてはいけない
この病気の本態は、
精神的ストレスに対して、バランスよく配分することができない
(ストレス配分不均衡仮説―浅見)
というところにあるのではないか
幻覚や妄想がある程度収まった時から本当の治療がはじまる
@病気がみとめられない
これも病気の特徴の一つ
自分の内のなかから徐々にはじまってくる病気
病気をみとめさせる必要があるだろうか
第4分科会「症状が悪化したときの対応」
<9月5日(水)13時〜14時40分>
会場:春日(3階)
機を逃さず、迅速に、かつ的確な医療を施さなければ・・・こんな危機的な状況が生まれた時、家族にできることは?。また緊急時に適切な医療、あるいは保護の機会を確保するための精神科救急医療の体制は・・・
司会者 |
川原伸夫 |
(群馬県精神保健福祉センター) |
助言者 |
武井 満 |
(群馬県立精神医療センター) |
発言者 |
浅沼守男 |
(神奈川家族会連合会) |
発言者 |
野内恭雄 |
(千葉県家族会連合会) |
「これからの家族会のあり方」
全家連相談室 良田 かおり
1,精神保健福祉・制度の変化と家族<歴史を振り返る>
[1]明治時代(33年)に制定された「精神病者監護法」下、家族は「監護義務者」として座敷牢で監護する役割を期待された。
[2]昭和25年、「精神衛生法」、「保護者制度」ができ、家族による入院を期待された。
[3]昭和40年、訪問指導、通院医療公費負担制度など精神衛生法に盛り込まれた。 ◇昭和40年には全家連が結成された。
[4]昭和62年、「精神保健法」となり、「入院医療から地域ケア」へ。 ◇家族による共同作業所づくりが、全国に展開された。
[5]平成7年「精神保健福祉法」となる。「自立と社会参加」をテーマとして「手帳」制度、在宅福祉サービスが盛り込まれた。 ◇家族は監護、保護する役割から、治療の協力者としての役割に変化しつつある。
2,最近の動き、大きな変化と家族会
[1]精神科医療の面で
・相次いで新薬が認可され、発売された。
・精神分裂病という病名を変更する動きが本格化している。
・病気や治療に関する情報が届きやすくなった。家族教室や講演会の開催。
[2]市町村を窓口として、精神保健福祉サービスが行われることになった。
・精神保健福祉手帳、外来通院費公費負担制度、在宅福祉サービス、社会復帰施設利用などに関することが、市町村の窓口となる。特にホームヘルプサービスの実施。
[3]財産管理や福祉制度の利用援助、金銭管理等のサービス
・成年後見制度、地域福祉権利擁護事業等が開始された。
[4]家族の負担の軽減化に向かう方向。
・保護者の義務の軽減、移送制度の創設、在宅福祉サービスの提供など。
[5]小規模授産の法定化
・共同作業所の実践が公的に評価されたといえる。法内施設化への道が開かれた。
◇上記の最近における一連の変化は、これまでの家族会の働きかけ、当事者の声があったからこそ実現できたもの。
3,変わらぬ家族の状況、思い。<相談室から見えるもの>
[1]病気、障害がよくなってほしい。
・医学的解明と治療の向上への願いが強いのは、今も変わらず当然のこと。
・相談できる場、人を得られず、特に対応のあり方に、常に不安を抱いている。
[2]自立して生活できるようにしたい。
・親が亡くても、不安のない生活をしてほしいという願いは不変。
・制度を知らない。制度を上手に利用するための援助者を得られていない。
[3]世の中の偏見がなくなってほしい。
・自分の中の偏見を克服したいという思いも合わせて。孤立に追い込まれている
◇「隠れた家族」「情報と支えを求めている若い家族」が、家族会を知らない、結びつかない。どのように家族会に結びつけるかが課題であり、活動の要でもある。
4,これからの家族会
A.家族会のあり方について
[1]「家族会のよさ」を見直してみる。<「学習」と「相互支援」から始まった家族会>
1.同じ立場の仲間に出会えるところである。
2.心おきなく話せる、受け入れられる、気持ちが楽になるところである。
3.必要な情報、身近に役に立つ情報があるところ。
4.「隠さない生き方」を学び、実践する場である。
5.生活の中から課題を見つけ、みんなで発言する。
[2]ちょっと点検してみよう
1.毎回の例会で、忌憚なく自由に悩みを語ったり、相談したりできる時間がとれているかどうか。…特に若い家族、新入会の家族には必要。
2.人間関係が、長い間に上下関係や役割の固定で、息苦しくなっていないか。
3.お互いのことが分かりあえ、助け合いができているかどうか。
4.学習活動が会員の満足できる内容になっているかどうか。
5.社会的な活動に偏ってしまっていないか。
[3]こうしてみよう
1.例会の中で、語り合いの時間をとれるように工夫する。(特に新人が参加したとき)
2.会員が自由に意見を言い、反映されるような運営を心がけよう。
3.助け合いは家族会の大事な機能。困ったときには助力を頼み、手をさしのべよう。
4.一方的な講演より、専門家に一緒に悩み考えてもらうような学習会も必要。
5.連携してマンパワーを育てることも大切。家族だけが背負わないように。
・ネットワークを大切に、一員として見守る姿勢で。
B.市町村サービスの時代になって
[1]共に学び合う、共に成長する関係を作る。
・向かい合い、話し合い、共に活動することで理解を育てる。
・相談窓口の設置、専門職員の配置、ホームヘルプサービスの提供を確実に、そこから学べるものは多い。
・偏見の除去や秘密の保持の課題。
[2]障害者が住みやすい地域を作るために
・障害を持った人や高齢者などが、気持ちよく住める地域にするための連携。
[3]地域の中に、家族や本人が自由に集える場所を。
・話し合いや相談、各種の活動の拠点、事務所となるような場がほしい。
「そこへ行けば仲間に会える」、いつでも必要な仕事に取りかかれる場が必要。
◇家族会は知識を高め、偏見を越えつつ、必要で大切な課題を、地域に発信する役割実践しよう。